　久々にスイカを食べて数日経ったころ、スイカの蔓が口から飛び出してきた。

　スイカの種を飲み込むと腹の中で芽が出るぞ、と子供のころ脅かされた覚えがあるが、どうやら本当だったらしい。

　ハサミで蔓を切ってみたがすぐに伸びてくるし、抜こうとしても上手くいかない。

　仕方がないので仕事を休んで病院へ出かけると、同じ症状の患者がたくさんいた。

　なんでも、突然変異によって胃袋の中でも種が溶けずに芽を出すほど生命力の強いスイカが生まれてしまい、そこそこの騒ぎになっていたらしい。最近ニュースを見る暇がなかったが連日報道されていたそうだ。

　待合室で数時間待たされたあと、ようやく自分の名前が呼ばれた。

　案内された診察室へ入ると、医者は私の口の蔓を見るなりうんざりした顔で薬を差し出した。

「はい、これを朝昼の食後に服用してね。服用後三時間は何も口にしないこと。いいね？」

　これで診療は終わりらしい。

　私は薬を受け取りながら、

「これはどういった薬なんですか？」

「ただの塩だよ。植物を枯らすにはこれが一番だからね」

　なるほど、と私は思った。

　スイカを食べるときに塩をかけるのにはそういう意味もあったのか。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい