【SF】一人遊び

 気が付いたら、人類は僕を残して一人残らず滅んでいた。

 ニュースなんて見ていなかったから、世界で一体何が起きていたのかはわからない。

 はっきりしていたのは、僕が一人ぼっちになったということだった。


 生きていくこと自体は何も心配はなかった。

 今は機械が何でも自動でしてくれる。何もしなくてもご飯が食べれるし、命令すれば可能な願いは叶えてくれる。機械の修理やエネルギーの補充なんかも勝手にやってくれる。

 だから僕自身が何かをしなければならない、ということは特になかった。


 生きることに心配はなかったけれど、することがないので退屈だった。

 だから暇潰しにロボットを作った。時間は沢山あったから自分で調べて作った。

 何体も作った。

 そのうちロボット一人一人に役割を当てて、ちょっとした箱庭を用意して、演劇みたいなことをやらせた。

 原寸大の人形遊びみたいなものだった。

 セリフを考えるのも僕。動きや反応を考えるのも僕。

 淋しくなんかないんだって思いたくて、そんな遊びに熱中していた。


 でもある日、ロボットたちは僕の指示と違う動きを始めた。プログラムが複雑になり過ぎて何かバグってしまったらしい。

 ロボットたちは僕と関係なく動いたり話したりし始めて、これでこの箱庭は新しい世界になった。

 僕は想像主になり、神様になった。

 そして僕は、また一人ぼっちになった。

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