【パロディ】叔父と魔法使い

 竜巻に飛ばされた叔父の家を探して旅をしていた私たち。

 とある泉へ辿り着くと、待ってましたとばかりに水面が光り、女神さまが出現した。

 女神さまが指をパチンと叩くと、湖面が盛り上がり三軒の家が姿を現す。

 どれも叔父の家と同じデザインだが、どうやらそれぞれ金、銀、あと普通の素材でできた家のようだ。


「あなたが落としたのは金の家でも銀の家でもなく、この普通の家ですよね?」


 有無を言わせぬ口調と顔で言ってくる。

 多分、この女神さまは御伽噺の金の斧銀の斧みたいな正直者発見器みたいな仕事をしているのだろう。しかしこんなに大きい物が三つもあったら湖の中も邪魔で仕方がないに違いない。

 私は申し訳ないので素直に「はい」と答えた。

 すると女神さまは嬉しそうに、

「貴方は正直者ですね。褒美にこの金の家と銀の家を差し上げましょう」

 三軒の家を台車で陸地に移動させると、女神さまはクーリングオフ拒否と言わんばかりにそそくさと湖中に戻ってしまった。


 私たちは途方に暮れた。普通の家は普通に叔父の家の跡地に戻せばいいが、他の二軒はどうしようか。

 純粋な金と銀なら溶かして換金なりする手もあったのだが、削ってみた所金銀なのは表面だけのようなのだ。女神さまの世界も不況なのかもしれない。

 家が欲しい人がいないか知り合いに片っ端から連絡してみたところ、知り合いの知り合いに使っていない山を所有しているお爺さんがいるとのことでとりあえず金と銀の家はそちらに置かせてもらうことにした。


 その後、あの金の家と銀の家は現代の金閣寺銀閣寺としてちょっとした観光名所化しているらしい。

 まあよくわからないけどめでたしめでたしと言っておこう。

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