【サスペンス】不吉な知らせ
今から思えば、その日は朝からずっと嫌な予感がしていたのだ。
その予感が確信へと変わったのは、私がいつものように家事を一通り済ませて一休みしていた時だった。
具体的には午後を過ぎてしばらく経ってからの事。
突然何の前触れもなく、壁に掛けていたハタキが落ちたのだ。
私は思わず身構えた。このハタキが落ちた時は、必ずと言っていいほど家族の誰かに悪いことが起きていたからだ。
今日は一人息子の啓太が小学校の行事で遠足に出かけていた。市外にある科学館などをバスで回るらしい。
まさか、事故とか……。恐ろしい想像がほんの一瞬頭をよぎり、私は慌てて首を振った。
と――そんな時、まるで計ったように突然電話が鳴りだした。
着信に目をやると、小学校から。
「……はい、倉沢ですが」
「啓太君のお母さんですか?」
「は、はい」
相手は啓太の担任の先生だった。まさか本当に何かあったのだろうか。私は息を飲んだ。
「今日の遠足ですが、今無事に学校へ戻りましたのでこれから解散します」
「……え?」
「いえ、最近は何かと物騒ですから特別な行事がある時はお子さんの心配をする親御さんが多いんですよ。ですからこうして皆さんに連絡することになってるいんです」
「そ、そうなんですか」
「はい。それでは失礼します」
「わざわざありがとうございました」
電話が終わると、私はほっと胸をなでおろした。ただの思い過ごしだったらしい。
さて。心配事も無くなったし買い物にでも行こうかしら。
………。
買い物?
「あ、しまった」
その時思い出した。啓太の遠足のことにばかり気を取られていたが、今日は近所のスーパーで午後二時半からの三〇分間、月に一度の特別タイムセールをやっていたのだ。
今月は色々と買う物があったので絶対行こうと思っていたのだが、時計を見ると時刻はすっかり過ぎてしまっている。
私は落胆し、溜息をついた。
そう言えば。
ハタキが落ちたのは、午後三時ピッタリだった。
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