第45話 たまには雑談しよっ!?

「いいよ」


 あーでもこれさ、悪口になっちゃうかもなんだけど。


「そう」


 祖母が11日に入院して、経過としてはね、誤嚥肺炎の方はお薬を変えて回復に向かってるんだって。


「ほう」


 だけどね、自分で食事ができるようになるまでがふたつめの山なんだって。


「うんうん」


 それを、行きつけだった病院からの電話で母が答えてたの。


「だから?」


 話せば長くなるかもしれない。


「いいよ」


 ありがとう。


「いいえ」


 行きつけだった病院は、祖母に合わない薬を(肺炎の)処方してくれていたことがわかったわけ。


「そう」


 なのに、祖母が入院した事実を知らないまま「この先生にかかってください」と、介護認定の意見書に対応すべく要求してきたんだ。


「なにそれ」


 不誠実だと思う。


「思う思う」


 でね、12日に来てくれるはずだった調査員は、キャンセル後、祖母が入院している病院まで出向いて意見書を書いてくれるそうだ。


「ほぉん」


 てなことを母が言うのはこれまでの経過をしっかり見てきて対応してきたからだと思ってたの。


「うんうん」


 ところが母、今日の朝、「小さなお葬式」の会員になっておけば、業者の言いなりになって高い金を払わずに済む、もう97歳になって知り合いもいないし、親族の20人ほどだけで済ませたい、って電話してたの。


「それはないよ」


 その上、次に電話したのが弁護士会。


「え」


 相続問題でどのようにするのが適正か、あらかじめ相談に乗ってほしいと。


「えぇえ!?」


 祖母は「姉弟四人で分けなさい」と言っていたんですけど、いざとなったらどうなるかわからないから、と相談してたの。


「それなに? 相続のもめごとを予想してるってこと?」


「ふざけんな。まだ生きてる、祖母」


 うん、だからね、弁護士会の人も、死んでから相談してくださいって言ったらしいよ。


「ほぉー、なんだ……」


 母は、祖母が立てなくなっても病院に入院させる意思がなかったし、父は祖母の面前で「もう、もたないだろう」とかしゃべってた。


「虐待だよね」


 そう思う。


「おまえはそれを見ていてなにもしなかったんだから、虐待」


 うん、でもあの父母を見て育ったから、それが普通なんだなって思ってしまったんだよね。


 母に「あれはもう、入院レベルだよ」とか、「ごはんが食べられないんならアイスを食べさせていい?」とかは言ったんだけど、母は「昨日から食べないんだからしかたない。朝も昼も食べなかったらアイスをあげていい」っていう態度だった。


「互角の戦い!」


 昨日どころか一週間くらいほとんど食べない状態だったのに、「もう寿命でしょ」みたいなことを言って助ける気が全くなかった。


「えぇ」


 デイサービスの人が対処してくれてようやっと、祖母は治療が受けられることになったんだよ。


「へえ」


 それなのに、相続問題で、あたかも自分が介護したんだから多めに遺産をもらおうとしているかのようで気分がよくないの。


「だろう」


 まあ、いい勉強にはなったわ。


「はいはい」


 祖母が入院している間に廃用症候群にならないといいな。


「はいはい」


 てなわけで雑談終わり。


「はい」


 また今度ね。


「うん、また今度」


 いつもスケジューリングをありがとうね。


「なにそれ」


 9月は時計ばっかり気にして読書とかしてたけど、やっぱり助けてもらってて。


「ふん、形にして」


 なにが欲しい?


「金」


 なんのために?


「お菓子買うために」


 それなら母に頼んで好きなお菓子、買ってきてもらおう。


「イイ感じ」


 なにがいい?


「カラムーチョ」


 あいあい。


「よろしくー」


 はーい。

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