第9話 少女アリス
私の部屋に10歳に満たない、黒い瞳でピンクの髪をツインテールにした少女が入ってきた。
「皇帝陛下、アリスともうします、よろしくお願いします。」
「私が、皇帝、フリージア・アメジスト・フォン・フィリア=ベジリアスよ。よろしくね。あなたの父、兄を処刑するんだけど、恨んでくれても構わないわよ。」
「いえ、私の愚父、愚兄がご迷惑をおかけしました。あれは処刑されても仕方ないですわ。」
「あら、そうなの?」
「ええ、まああの家はまともな者はいないですからね。母も姉たちも問題ありでしたから。」
「それは……なんと言うか、ご愁傷さまです?」
そう私が言うと、彼女は笑う。そして……。
「家庭環境が最悪な場所から助け出していただき、ありがとうございます、皇帝陛下。」
そう言って頭を下げる。
「これより陛下に一層の忠誠を誓います。」
「……よろしくね、アリス。」
まさか、罵られると思ったのだが、礼を言われるとは想像だにしなかったわ。
「とりあえず、あなたは私の侍女見習いとして、そばにいて学ぶように。私の侍女と言うこと以外はあなたの希望があるなら、聞いてもいいわよ。」
「あ、では……希望と言うよりは報告の方が近いかな。実は私、前世の記憶がある転生者なんですよ。」
なるほど、それなら報告になる――――――って、転生者!?
「ええーーーーーーーーーっ。」
私は思わず叫んでしまった。
私はすぐに侍従長と内務卿に就任したフィリップス卿を呼び出した。
「と言うわけで、彼女、転生者だったのよ。」
「そうですか……どうします?」
「これから詳しい話を聞くところなの。」
フィリップス卿の問いに私が答える。そして私を含めた3人の視線は、アリスに向かう。
「あ、そうですね。私は転生者で、転生前の名前は
7歳の少女の口から出る言葉としては違和感がありまくるのは、転生者だからか。それを聞く3人のうち、一番偉い人物も10歳なので、シュールな状況である。
「ふむ、確かに転生者のようですね。私は陛下と最初に会った時、陛下が転生者じゃないかと思いましたが……。」
「私、転生者じゃないですよ。」
「そうですね、雰囲気が全く違います。」
フィリップス卿と私が顔を寄せ会い話す。
「で、あなたは我が帝国に何をもたらすことが出きるのでしょうか?」
「そうですね、時間はかかるかもしれませんが、鉄道を作って……、鉄道っていうの――――――。」
「最近、南の方の国で開業したと聞きましたが。それでしょうか?」
「ええーっ!鉄道ってもうあるんですか!!」
「ええ、ですが、我が帝国で作ることが出きればいいでしょう。」
「いえ、その……、今から作るとなると、製鉄技術を1からやらなくてはならないので、10数年はかかるかと。」
「それまでに、我が帝国周辺まで鉄道がくると思うか?」
「それは、ちょっとわかりませんが、既に導入しているところから購入する方が早いでしょうね。」
そう、がっくり項垂れるアリス。
「あ、じゃあコンロを……。」
「ああ、あの携帯用が発売されたというあれか。」
「その国とわが帝国は交易がありませんので、入手は難しいでしょうが……。」
「一応輸入できるか。」
「……ですね。」
再び、項垂れるアリス。
「……私、ホント運がないですね。地震で死ぬし、転生した先の家庭環境は最悪だし、思い付いたことはすでに別の場所でやってるし――――――。」
なんとも言えない空気になってしまった。彼女の能力は悪くはないんだが、いかんせんタイミングが悪すぎた。
「あ、アリス。わ、私の横にいて、思い付いたことを言ってくれるだけで助かるんだから、ね。それに、あなたの前いた世界のことと照らし合わせて、色々教えれくれるだけで、助かるわ。だから落ち込まないで。」
そう言って、私は彼女を抱きしめ、慰めた。
「とりあえず、アリスは当面は私付きの侍女見習いで、彼女の力が発揮できる状況が生まれたら侍従から侍従長になってもらことで。」
「そうですね、異世界の知識は何事にもかえれないので、現状はそうされるのが妥当かと。」
そう侍従長が答えた。
「すみません、私が現代知識でチートができるかなって思ったんですけど、もうある技術なんて……。」
「いいんですよ。それはともかく、侍従になるなら、家名がドカウツ家じゃ問題でしょうね。」
「確かに、あまりよろしくないでしょう。」
フィリップス卿が答える。皇帝が廃絶させた家を復活させたと思われては問題だからだ。
「じゃあ、あなたの前世の家名……ドジマーだっけ?」
「いえ、堂島です。」
「そのドージマを侍従になった後は家名として名乗ることを許可しましょう。それでどうかしら?」
「いいんじゃないでしょうか。まあ、しばらく先になるでしょうが。」
二人ともうなずく。
「じゃあそう言うことで。これからよろしくね、アリス。」
「はい、陛下。」
こうして異世界転生者のアリスが侍女見習いとして、王宮に入ることになった。
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