第5話 爵位とお茶会
「で、爵位の件なんだけど、リー姉ちゃんに爵位をあげるのは、私の親族――――――両親をはじめ、兄さん姉さんにおばあさま、叔父さんや従兄弟など14人が眠っているあの場所を荒らされたくないからお願いしたいの。頼める?」
リー姉ちゃんは全く悩まずに。
「当然、守ってみせるわ。あそこには私の家族も眠っているのだもの。」
と、あっさり快諾。葬儀の時のつもりだったけど、その前に公表することになった。
「ところで、アイランド卿はこの後どうする予定かな?」
フィリップス卿がリー姉ちゃんに聞いてきた。正式な辞令前で格下とはいえ同じ貴族の当主になるリー姉ちゃんには貴族としての対応をしている。
「あ、はい。一応帝都に戻ってタウンハウスを探します。元々うちは皇帝領の代官をするために男爵位を持っていただけなので、ほとんど帝都にいなかったんです。なので、私が領地持ち子爵という”貴族”になるのなら、必要になるかなって思いまして……。」
「それは、余から下賜するよ。こちらの都合で陞爵するのだからちゃんとした屋敷を用意するよ。」
「ですが……。」
渋るリー姉ちゃんにフィリップス卿は
「貰っておきなさい。それに、屋敷を買うなら陞爵を発表してからでないと、問題がある物件をつかまされるよ。」
とたしなめる。うん、卿は色々任せられるね。だったら……
「フィリップス卿、使用人は卿が用意してもらえないか?」
「それはもちろんそうさせて貰います。変な使用人が入ると面倒なことになりますからね。」
「お願いね。それはそうと、伯爵、内務卿やんない?」
「はあ?なんだ突然に。」
確かに、普通ならそう突っ込む。
「いや、実は、例の災害で上層部もやられちゃって、残ってるの看病してくれた侍従長と仕事で離宮を離れていた軍務卿と外務卿だけで、他の大臣は宰相を含め誰も残ってないんだよ。で、フィリップス卿に内務卿をしてもらえれば侍従長も楽になるかなぁって思って。」
「まさかそんなことになっているとは……。」
驚いた顔になった。まあ対外的に上がごそっといなくなったことは隠さなきゃならんので箝口令を敷いていたんだが。
「で、私の持論なんだけど、内務卿、財務卿、宰相は皇帝の発言に意見を言える人材じゃないと務まらないと思っているの。だから、最初、私が来たとき、リー姉ちゃんになにかあったら文句を言うつもりだったんでしょうし、そういう意味で信頼できます。」
「なるほど……。」
「受けてくれたら陞爵ね。」
「……陛下、陞爵を乱発するのはあまりよろしくないかと。」
フィリップス卿が渋い顔で諫言をする。それに対し、私は満面の笑顔で返した。
「そう言ってくれるからフィリップス卿に内務卿を勤めてもらいたいんだ。ああ、陞爵なんだが、すでに15の家の降爵が決まってる。中には2階級下げるところもある。理由は不敬罪。前皇帝が亡くなってすぐ、10歳の皇帝に謁見を求め、中には婚約者と言い張る者もいたので、処分対象です。」
フィリップス卿は顔をしかめて呟く。
「そんな馬鹿が15家もあったのか。……ところでうちは皇帝陛下に会って話しているんだが、不敬にならないのか?」
「余から会いにきたのに、不敬になるわけないでしょ。」
「そうか……。」
「と、言うことで内務卿の件よろしく。じゃあ、私たちはお茶会するので。」
そう言うと、私は伯爵に退出を促す。
「ちょ、ちょっと待て。わしはいてはダメなのか?」
「え、女の子3人のお茶会に残れるんですか?」
私と伯爵の視線がぶつかる。
「…………。」
「…………。」
「……うむ、娘に嫌われたくないし、とっとと去ることにしよう。先程の話も検討しなければならないしな。」
そう言って笑顔で去っていく伯爵。その背中に私は声をかける。
「伯爵…………。」
「なにか?」
「私、今日泊まりますんで、夕食をお願いします。」
伯爵は転けた。
「あ、ああ、用意しよう。客室も用意させておく。」
「お願いします。じゃあわたしたちはこっちでゆっくりしてるんで……。」
伯爵が晩餐や部屋の準備を指示している間、お茶会は続いた。
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