第66話 ニアとの街デート(2)

 街を散歩していた夏希。偶然ニアと出会った。


 夏希とニアは2人並んで街を歩いている。


「ニアは食材買いに来たんだよね?野菜見てたけど後回しにしてごめんな。まだ時間はある?大丈夫ならお茶でも飲もう」


「はいにゃ。大丈夫ですにゃ。」


 夏希はどこかの店に入ろうと辺りを見回しているが、知ってる店は例の定食屋のみだ。適当でもいいけど久々のデート?だ。美味しい店の方が話しも弾みやすい。(ニアに聞いた方が無難だな)


「ニア、俺はこの街に来て間もないんだ。いい店知らない?奢るから値段は気にしなくてもいい。美味しいお店がいいな」


 ニアは「う~ん」と唸りながら考えている。


「それなら少し先に美味しいパンケーキのお店があるにゃ。行った事はないけど人気らしいにゃ」


 ふむ、そこでいいな。(屋号が気になるな…)


「じゃあ、そこのお店にしよう」


 しばらく歩くと可愛らしいお店が増えてくる。この辺りは若者向けの店が多いのだろう。


「このお店にゃ。席は空いてそうだにゃ」


 夏希はニアが指差しているお店を見る。何かを探すように念入りに。特にお店の上の辺りを…


[ フランのパンケーキ屋 ]


 惜しい!「ス」があればフランスになって、フランスのパンケーキで、「の」を抜いてフランスパンになったのに…フランスパンでパンケーキ?固いの?って食べる時に楽しめたのに~、「ス」さえあれば~。


「あ、あの~、夏希さん?大丈夫ですか?」


 おっと、いかんいかん!違う世界に行ってた。


「はははは、ちょっと考えごとを…」


「ニア、中に入ろう。何でも頼んでいいからな!遠慮なんかすんなよ。お土産もアリだからな」


 ニアは可愛いからな。おじちゃん何でも奢っちゃうよ!まぁ、娘みたいなもんだ。だってニアは多分十代だよ?大人っぽく見えるけどね。(俺36才だぞ)


「ふふ、じゃあ遠慮なく食べるにゃ。夏希さんって面白いにゃ」


 うん、いい雰囲気だね。楽しくなくちゃね。


 2人は外の景色が見える窓際の席に座った。店内はパンケーキのいい匂いで満たされている。(これだけで幸せな気分になれるな)


 席は2人用のオシャレな丸テーブルで、真ん中に可愛い花瓶が置いてある。(手書きのメニューも可愛い)


 ニアは苺のパンケーキと紅茶で俺はブルーベリーのパンケーキと紅茶を頼んだ。


「お店の雰囲気がいいね。いい匂いもするし、お腹減るね。3皿は食べれるな」


「ふふ、笑わせないでにゃ。でも、ほんとにゃ。置いてある物みんな可愛いにゃ」


 ニアはテーブルの上の花を見たり周りを見たりと忙しい。その顔はとても笑顔だ。


 暫くすると店員さん来て2人の前にパンケーキと紅茶を置いてくれた。頼んだソースの他にたっぷりのホイップクリームが掛かっていてとても美味しそうだ。


「とても美味しそうにゃ」


 ニアの目もキラキラしてる。早速ナイフとフォークを手にとって食べ始めている。(俺も食べよう)


 ナイフで三角に成るように切る。その上にブルーベリーソースを塗ってついでにホイップクリームも乗せて一口食べてみる。


 うん、旨いな。パンケーキはふわふわで柔らかく、ブルーベリーソースは濃厚で甘さの中に酸味が効いている。ホイップクリームはまろやかだ。(フランスなのに固くなかったな…)


 ニアも満足そうに食べてるな。(ニコニコだ)


「このパンケーキ旨いな。まじで」


「ほんと苺ソースが甘酸っぱくて美味しいです。私、苺大好きなんです!あ、大好きにゃ」


 食べるのに夢中で素に戻ったな…


「ニア、無理に言わなくてもいいぞ。でも可愛いからギルドに居るときだけ頼むな」


「か、可愛いなんて…」


 ニアは少しの間食べるのを止めて恥ずかしそうに俺を見ていた。(俺は笑顔で見返すのだ!)


「ニアは今日野菜を買いに来たの?他にも買うの?」


「今日は野菜を買いに来た……にゃ…」


 何で「にゃ」を小声で言う。まぁ、指摘しないでおくか。(恥ずかしそうな表情可愛いしな)


 野菜か…アイテムボックスに溢れる程あるな。この際だ、アイテムボックスは解禁しよう。


「なあニア、野菜なら俺が持ってるんだ。それあげるよ」


「えっ、でもたくさん要るにゃ。だから無理にゃ」


「そんなに家族多いのか?まぁ、でも大丈夫だぞ。100人分でも問題ない」


 ニアの目が少し細くなる。


「100人って…そんなには要らないけど15人分は要るにゃ。私の家は孤児院やってるにゃ。実は私も孤児にゃ」


 お、突然の定番イベント発生か?最近多いな…


「そうなんだ。大丈夫だぞ、それくらいなら。食べたら孤児院に行こうか。パンケーキお土産にするか?」


「パンケーキはいいにゃ。でもホントの話しだったんだにゃ?夏希さんは宿屋に泊まってるはずにゃ。どこにそんな野菜を置いてるにゃ?私は、多いから配達してもらうつもりだったにゃ」


「ああ、実はアイテムボックス持ちだ。だからこのまますぐに手ぶらで行けるぞ。もう食べたよな?早速行こうか」


 夏希は立ち上がってお店の店員にお金を払い、唖然としているニアの手を取って店の外へで出た。


「ニア、孤児院はどっちだ?」


「あ、ああ、コッチです」


 素の状態のニアは俺の手を引っ張って案内を始めた。


 夏希とニアは端から見ると仲の良いカップルが歩いている姿に見えていた。何故ならニアが恥ずかしげな笑顔で夏希を横目で見ており、その頬はホンノリ赤く染まっていたからであった。

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