第18話 夏希の死闘(1)

 夏希は必死の覚悟で森の中をひた走る。


 アンナが破傷風に侵された。その薬を手に入れる為にはネットスキルのレベルを上げ、購入単価MAXを50円から100円にする必要がある。


 その方法は確かなものは無く、自身のレベルアップによる派生でのネットスキルレベルアップに賭けたものだ。実際に自身レベルが10になった時にネットのレベルが上がったのだ。


 今のレベルは17だ。あと3つだ。ただ、今狩り場にしている場所では、レベルが上がり難くなっているので森の奥に行くしかない。とにかく時間が無いのだ。


 夏希はショートソードを握り締め、進行に邪魔になる魔物だけ切り裂き、また攻撃が間に合わなければ、そのまま攻撃を受け、または避けてひたすら森の奥へと突き進んだ。その体はもうキズだらけである。


 森に入って約2時間、森の雰囲気が明らかに変化した。目に見えないが重圧が凄い。(近くに居る!)


 夏希は立ち止まり剣を中腰で構える。周りに意識を向けると斜め前から激しい物音が聞こえてくる。


「くそ!プレッシャー半端ないぞ。ネネさんに付いてきて貰えばよかったか?」


 いや、ネネさんの息子も破傷風に侵されてる。息子を放っては置けないだろ!


「来た!あれはオーガか!?」


 目の前に現れたのは筋肉質で身長2メートルは優に超えており、頭に角が2本生えている化け物だ!


「おいおい、人型の魔物はゴブリンしか相手したこと無いぞ。次相手するならオークの番だろ!」


 オーガは1体のみだが手には頑丈そうなデカイ棍棒を持っている。(当たったら一発で重症だな…)


 オーガは棍棒を頭上に掲げたまま走ってくる。夏希も剣を構えて迎え撃つ!


「ドガッ!」


 棍棒と剣を交えたが、鈍い音がしてそのまま弾き飛ばされた。


 剣を落とすことは無かったが、受けた手は痺れている。(次に受け止めるのは無理だ。)


 受け止めるのは無理と判断し、振りかざされた棍棒を躱していく。素早さのステータスが高いので、避けることは何とか出来ている。隙を見て何度か剣で切るが体が固い!


「くそ、時間掛けすぎだ。行くぞ!」


 夏希はオーガに向かって突っ込む。オーガは棍棒の間合いの内側に入られた為に棍棒を捨てて両腕で夏希の腰に抱き付いた。


「ぐはっ!」


 夏希の口端からは血が滴り落ちている。オーガは勝ったとばかり笑いながら腕の力を更に込めていく。


「ぐっ、相討ち上等だ!」


 夏希は右手に持ったショートソードをオーガの首の後ろに回し、剣先を左手が切れるのも構わす支え力の限り前に引き込んだ。


「くたばっちまえ!」


 時間にして数秒か数分。もう判らない状態だ。オーガと夏希の攻防は、オーガの首が落ちたことによって終結した。


「はぁ、はぁ、やってやったぞ!」


 夏希も倒しはしたがボロボロの状態だ。多分あばら骨が何本か逝かれている。剣先に添えた左手も指は残っているが血だらけだった。


「やっと1つだ!あと、どれだけ倒せばいい?」


 ステータスを確認するとレベルが1つ上がっている。これは前回レベルアップから間があるので、幾分か経験値は溜まっていた可能性もある。


「だが、やはり強いだけあって経験値は高い。あとオーガなら10体倒せばいけるだろう」


 アイテムボックスからポーションを取り出して飲む。

 とてつもなく苦いな…

 だが、痛めた脇腹も左手も1分程で完治した。


「すげーな、ポーション」


 ただ、手持ちのポーションはあと3本だ。(使うタイミングはよく考えないとな)


 腕時計を見る。今は午後6時を回った所だ。まだ時間は大丈夫だ。アイテムボックスから水筒とお菓子のチョコレートを出して食べ休憩する。


 10分程座って休憩したら体力も回復した。(この体すげーな、天使に感謝だ)


「よし、次だ!待ってろよ。アンナちゃん!」


 夏希は再び戦いに向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る