第69話 ビッカのリベンジ

 ジャメル卿は汗を飛散させた。

 鬼気迫る様相である。


「ビッカは闇のルートを使って呪術者を集め、祭式の道具を購入しておりました。それで足取りが掴めたのですが、とても危険な状態ですよ!」


 呪術者と祭式の道具か、


「それを使って邪神ゴラスを目覚めさせるつもりなんだな……」


「そうです!! もう、これはあなた1人の問題ではありません!! 両国間、いえ、大陸全土の問題ですよ!!」


 邪神ゴラスといえば強敵だ。1千年前に現れて、大陸に存在する全ての国を滅ぼしたというからな。


ゴゴゴゴゴゴゴゴォオオオオオオオ…………。


 なんだこの地響きは!?


「お、終わったぁあ! アリアスさん、もうダメだぁああ!!」


 ジャメル卿は天を仰いで絶望した。


 そこには、王都を見下ろすほどの巨大な怪物がいたのである。


 それは大きな猿の姿で、体中に無数の目をつけていた。

 目はそれぞれが独立しており、不気味に眼球を動かしていた。


 邪神ゴラスだ!

 もう目覚めたのか!?


 ゴラスの大きな拳は王都の外壁を破壊した。



バゴォオオオオオオンッ!!



 それと同時。

 聞き覚えのある高笑いが、王都中に広まった。



「ダーーーーハッハッハッハッ!! アリアスゥウウウウ!! アリアス・ユーリィイイイイはいるかぁああ!?」



 やれやれ。

 ゴラスの頭部にいるのはビッカか。


 僕は邪神の魔計器を地面に刺した。


「ダマンデウス。奴と話しがしたい。できるか?」


「任せろ」


 と、彼の触手が一人分ほどの台座を作った。

 僕がその上に乗ると、柄の部分がギューーンと伸びて、たちまちゴラスの目線へと到達した。


「ビッカ。とんでもないことをしでかしたな」


「ギャハハハーー!! よぉおお、アリアスゥウウ。元気にしてたかぁああ?」


 ビッカの下半身はゴラスと融合していた。


「お前、自分の体を犠牲にして、邪神を復活させたのか?」


「そういうことよぉ。どうせ、捕まりゃあ死刑だかんなぁあ!! だったら大陸中の人間を道連れにしてやることに決めたんだよぉおお! ギャハハハ!!」


「はぁ〜〜」どうしようもない奴だな。


「これも全部お前のせいだからなアリアスゥウウ!! お前が俺を追い込んだからこうなったんだよぉお!!」


「いや、自業自得だろ。公金の横領、設計費用の水増し請求から始まって、ジルベスタルに病原菌をばら撒き、ハードアントを使って王都を襲わせた。全部、自分でやった悪行じゃないか。その罪を償うのは当たり前のことだぞ」


「うるせぇぇええ!! 全部お前のせいなんだよぉおお!!」


「やれやれ。話しにならん」


「全部お前が悪いんだ! 俺が邪神を蘇らせたのも! それによって大陸が滅ぶのもなぁあ!! 全部、お前の責任だぁ!! アリアスゥウウ!!」


 ああ、これはわかり合えないな。


 ま、わかりたくもないか。


「ビッカ……。お前と話すのは時間の無駄。こういうのを、不毛な時間というのだ」


「グヌヌ!! 無能の癖に!! 死ねぇええ!!」


 邪神ゴラスの大きな拳が僕に目がけて放たれた。喰らえば体は破裂して木っ端微塵。骨も残らないだろう。


 でも、


 当たればなんだよな。



「ストライク ディフェンス!」



 打撃無効の防御壁。


ガンッ!!


 僕の体は無傷だが、その勢いで吹っ飛ばされた。


「おっと……」


 ギューーーーンッ!!


『アリアス!! このまま地面に激突すれば、即死だぞ!?」


 ほぉ。

 

「ダマンデウス。僕を心配してくれるのか」


『何を呑気な!! ああ、衝突するぅう

ッ!!』


「ウインド」


ボワンッ!!


 僕は風魔法をクッションにして衝撃を無効化した。


「よっと……」


 ダマンデウスの一つ目を見つめる。


「心配した?」


『ふ、ふざけんな! 誰が人間の命なんか!』


「随分と心配してくれてたように感じたけど?」


『お、お前がいなくなったら数値化ができなくなるからな! そ、それだけだ!! フン!』


「フフフ」


 可愛い道具だな。


「じゃあ早速、極限まで数値化してもらおうかな」


『よしきた! 例のファイヤーボールだな!?』


「そういうこと」


 あの鉄道襲撃事件を解決した究極のファイヤーボール。

 それを奴に撃つ。


 僕が計算をしていると、王都の魔法兵士たちが様々な魔法攻撃をゴラスに放った。それは全弾命中したが、ゴラスの体に傷一つつけることはできなかった。


 城兵は弓矢を放ち、騎士団は槍を投げた。しかし、そのどの攻撃さえも、ゴラスには効かないようである。


「ギャハハ! 無駄無駄ぁ!! 俺様にそんな攻撃が当たるかってんだぁあ!!」


 さぁて、そうこうしてるうちに計算ができたぞ。


 王都の空は僕が作った火の玉で覆われていた。4000以上は作ったぞ。


 人々は空を差して「あれはなんだ!?」と言う。


「おいアリアス! 貴様の魔法か!? なんだありゃあ!?」


 お前の質問に答える義理はないな。


 この攻撃で終わるのだから!


 

「ファイヤーボール! 流星メテオ!」



 僕が手を振り下ろすと、天空の火玉は流星の如く落ち始めた。


 なおかつ、それをゴラスに向けて集中させた。



ゴォオオオオオオオオッ!!



ドドドドーーーーーーンッ!!



「ギャァァァァァァァアッ!!」


 

 よし。

 全弾命中。


 白い硝煙が一面を覆う。

 それがゆっくりと消えると、ゴラスの姿が現れた。


「ふぃ〜〜。ビックリしたぁ〜〜。死んだかと思ったぜぇ」


 ……やれやれ。

 無傷かよ。


「ギャハハハーーーー!! アリアスゥウウ! 貴様の必殺技は無駄だったみたいだなぁ!? 俺の体には傷一つついてねぇぞぉお!? ギャハハハ!!」


 さぁて、どうしたものか……。


「アリアスゥ。必殺技の見本を見せてやるよ……。必殺技ってのは……」


 そう言うと力を溜める。


『危険だぞアリアス! ゴラスの魔力量が30万を超えた! あんな一撃を喰らったら王都は消滅してしまう!!』


 ゴラスは大きな口を開くと、そこから魔力の波動を放った。


「死ねぇアリアスゥ!! ハァァアーーーーーー!!」



ドォオオオオオオオンッ!!




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