第14話 目覚めぬ勇者
向かって来るジェネラルに対し少女勇者は骨ゴブリンを差し向けるも、この大柄な上位種は全く意に介しておらず、巨大な足や手にした金棒で周囲の屍体ごと粉砕してしまった。──ここまで念入りに破壊されては、蘇生することも爆弾としての利用も不可能だ。
その時、ジェネラルの目に1本の矢が飛び込み破裂音を響かせ炸裂した。片眼の視力を失ったジェネラルは傷口を押さえ呻く。
「こっちです!」
"鬼謀"が更に炸裂する矢を放つが、厚い皮膚を持つジェネラルにはさほど効いてはいない。が、苛立ったジェネラルは我が目を奪った下手人を見つけると、そちらを先に始末することにした。
迫り来るジェネラルに対し"鬼謀"は魔法で即席の拘束罠を作り時間を稼ぐ。
そう、これは『時間稼ぎ』なのだ。
あの合理の化身らしくもない、一時の気の迷いとでも言うべき些細な抵抗であった。
そんな"鬼謀"の決死の行動を汲み取り、少女勇者は"暴勇"のもとへと駆けた。可能な限り瓦礫を退け、安否を確認する。息も脈拍も弱々しく、まさに瀕死の状態であった。
「起きてください、"暴勇"さん……!」
少女は手持ちの
その間も"鬼謀"はジェネラルの攻撃を紙一重で躱しながら、物陰から物陰へと移動しつつ矢を放っていた。
「"暴勇"さん! お願いですから起きてください、"暴勇"さん……!」
少女勇者は意を決し、あの回復魔法を"暴勇"にかけた。
……しかし、何も起こらない!
「そん、な……」
確かに少女は魔法を行使した、そのはずである。しかし"暴勇"は目を覚まさない。
少女はもう一度回復魔法を使おうとした……が、今度は何かに弾かれたような感覚があった。もしやこれは──
「魔法が、効かない……? どうして……!?」
思い返せば、ヒントは既に見えていた。
何故、直撃すれば一瞬で火達磨になるようなシャーマンの火球を食らっても大して傷を受けていなかったのか。
何故、優秀な魔法使いの付与魔法の効果を実感できなかったのか。
何故、回復魔法が弾かれるのか。
その答えはただ一つ──
どういう訳か、この"暴勇"という男は魔法に対する耐性を持ち合わせているらしい。
だが、そんな便利な能力も時と場合を考えて欲しいものである。おお女神よ、寝ているのですか?
「起きてください"暴勇"さん……! お願いですから……!」
魔法が弾かれるのも構わず、少女勇者は何度も回復魔法を行使する。耐性があるとはいえ、限界もあるはず。魔力欠乏の症状で酷い頭痛と吐き気がしてきたが、構うものか。少女は必死に魔力を絞り出す。
……しかし、一向に"暴勇"が目覚める気配は無い。
"鬼謀"に助けを請うべく振り向いたその瞬間、少女は運悪く見てしまった。
否、
ジェネラルの振るった金棒が、柱の影から飛び出した影を打ち据える。
グシャッという水っぽい破砕音が響き、上質なマントを中心に真っ赤な血の花が咲いていた。
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