第186話 金と銀
あの日、俺が
でも今は金髪だ……そもそもなんで金色になっているんだ?
「モウツα……なんで銀髪は髪色が金色になってしまったんだ?」
「それなんだけど、僕たちに言わせればむしろ元に戻ったと言っていい」
「え? 元々は金髪だったのか?」
「そうさ。正直驚いたのは僕たちの方だったよ」
そ、そうだったのか……。
「髪色のこと、どう思う? 転送に影響でるかな?」
「分からないね……解体業者の人が戻ってくるかも知れないし、流石に髪を染めている時間もない。とりあえず今はやるだけやってみよう」
「仕方ないか……それじゃあスイッチいれるぜ! フタを閉めたら乾燥機の起動はまかせたからな!」
「いや、途中でフタを開けたからコインの再投入は必要ないね。閉めれば自動で動き出すはずだよ」
「そうか……たしかに。それじゃあいくぞ!」
「まかせたよ」
俺は二度目のスイッチを押しはじめた。右足首、左足首……そして右手首っと……最後は左手首だ。
「よし! 押し終わった! 蓋を閉めるぞ!」
――ガチャン!
勢いよく蓋を閉めると、一度目と同じように宙に浮いた銀髪の身体は青白い光に包まれ、その周りを俺の洗濯物がぐるんぐるんと回っている。
気のせいかさっきより光が強く感じる……頼む! 成功してくれ!
――ゴウン、ゴウン
静かな店内に乾燥機の音が響き渡る。
二分は経過したか……一向に転送が始まる気配はない……まだダメなのか!
……なにが足りない。やはり髪色の問題か?
「どうするモウツ……転送は始まりそうにない。足りない物を増やすという考えが間違えているということは無いのか?」
「間違えてはいないと思うよ……現に光の発光に変化は出ているから」
「それじゃあ、やはりまだ何かが足りないってことか?」
「そうなるかな……」
足りないって言われても……何があるんだ……まったく思いつかない。
衣類は間違い無いはずだ……それは自信がある。そうなると、あとは銀髪ということになるが……やはり髪色に何か関係しているのか?
「集塵くん、ちょっといいかな?」
「あ、ああ。なんだよ?」
「君が彼女をこの乾燥機で発見したとき、髪色は間違いなく銀色だったんだよね?」
「ああ、それは間違いない。そうじゃなきゃ銀髪なんて名前はつけないぜ」
「そうか……でも、僕たちが彼女を転送したときは金髪だったんだよ」
「ああ、地毛が金髪だって話だもんな」
「つまりスタートからゴールまでの間、もしくは直後に何かが起きたということになる」
「なるほどな、その間に何が起きたかを見つけ出さなくては、いけないということか」
「うん」
――モウツは腕を組み回転を続ける乾燥機の中を黙って見続けている。答えを真剣に考えているようだ……。
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