第148話 話しちゃ駄目

 強い稲妻の様な光の中から忽然こつぜんと現れた銀髪は、俺の姿を確認すると、宙を舞うように胸に飛び込んできた。


「うぉっ!」


 銀髪を受け止めるため、グッと力を入れて身構える。勢いのせいもあってか全身に重みを感じた。ソファの背もたれがなければ後ろに倒れていたかもしれない。


「集塵……」


 銀髪が耳元で囁く。


「お前……なんで此処にきたんだ……しかもタイツの力まで使いやがって……」


「あの姉妹がドアの前を塞いで、意地でも此処に来させないようにしていたから……強硬手段に出ただけ」


「お前なぁ……」


 五十嵐さんたちの前で、タイツの力を使ったのか……さぞかし驚いただろうな……。


「それより銀髪……そろそろ俺の上から降りてくれないか」


「あ……そ、そうね。ごめんなさいっ!」


 銀髪は少し顔を赤らめてピョンっと飛び跳ねるように俺の膝の上から飛び降りた。瞬間、宙に舞った長い髪が頬をかすめる。


「凄い……そのタイツは大掛かりな装置を使わずに空間移動も出来るんだね……」


 そういや、モウツαは発光体が現れた段階で空間移動の認識をしていたようだけど、あんな感じなんだな……初めて見た。


「出来るんだね……って、知らなかったのか?」


「そのタイツの持っている機能は、まだ未知数なんだよ。しかも、どうやら進化をしている」


「集塵……こいつから何を聞いたの?」


「こいつ? こいつとは随分な言い方じゃないですか……ホリエ姫」


「姫っ!?」


「見る限り、話し方も安定しているし……どうやら今は脳に邪魔は入っていないようですね。僕のこともハッキリと分かっているようで嬉しいですよ」


「あなたが、わたしのことに関して協力してくれたのには感謝しています。でも、そのことを集塵にベラベラと話すのは、やめて頂きたいのです」


 何の話をしている……姫ってなんだ? 銀髪の名前も知っているし、この二人が知り合いだったなんて……なんで今まで知らないふり……いや、ふりじゃないな……脳が、どうのこうの言っていたけど、それと何か関係があるのか?


「集塵くん……どうしようか? なんか話しちゃ駄目って言われてるんだけど」


 銀髪は俺に話を聞かれたくないのか……嫌がるものを無理に聞くっていうのもな……でも、今後の銀髪のことも心配だ。


 どうする……どうしたら……。


 俺は銀髪の方を横目で確認すると悲しそうな表情をしている……今にも泣き出しそうだ。


 ……そうか……そうだよな。


「女の子を泣かせるわけには、いかねーよな……」


「やめとくかい? 僕は別に構わないよ? 出来れば話しておきたいけどね」


「銀髪……モウツαから話を聞くのはやめておくぜ……ただし、条件がある」


 ――銀髪は俺の目をじっと見つめて何かを決意したような表情を見せてきた。フフッ……仕方ねーやつだな……またタイツの力を使ったのか……少しまっていれば口頭で伝えたのに……。











 















 



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