第13話 旅立ち
朝の肌寒い空気を引き裂くように、山々の隙間を縫って朝日が差し込む…。
視界の果てまで続く大地…
どこまでも遠くまで流れて行く川の水…
世界の果てまで続きそうな道…
それらがまるで、今 目を覚ましたかのように姿を現し始めた…。
何処からともなく吹いて来た風が、少年の頬を撫でる…。
大きな桃の木が成る丘の上…
そこに立つ旅人風の少年が、その小さな瞳に焼き付けるように、そこから見える世界の全てを見詰めていた…。
惜しむように…
別れを告げるように…
ゆっくりと瞼を閉じる少年…。
その左手には、少年の隣に立つ桃の木の枝から作られた木刀が一振…。
それは…
誰よりも少年の事を愛する祖父からの贈り物だった…。
「…桃太郎!」
背後から少年を呼ぶ声がする。
桃太郎と呼ばれるその少年は閉じられた瞳をゆっくりと開けて、その声が聞こえた方へ振り向いた。
…そこに居たのは…
桃太郎
「…夜叉丸! …小太郎!」
朝日をそのまま反射する鏡のような、白く美しい髪を持った鬼…夜叉丸と…
天色の人魂のような見た目をした妖怪…小太郎…。
今日 桃太郎は、この二人と共に旅に出る。
もう二度と戻っては来れない、長い長い旅へ…。
その前に、いつも郷を守ってくれている御神木である桃の木に挨拶をしに来ていたのだ。
小太郎
「準備は出来たか? 小僧!」
桃太郎
「ああ! もう大丈夫!
じい様が作ってくれた木刀も持ったし、ばあ様から貰った弁当も吉備団子も持った。
もういつでも行けるよ!」
夜叉丸
「…もう少し待たなくて良いのか?
郷の連中は、お前が本気で旅立つと思っていないだけだぞ?
お前が本当に郷を出るのなら、見送りに来たいヤツだっているのでは?」
桃太郎
「居たら居たで寂しくなっちゃうよ!
それにオイラは、旅立つなら日の出と共に!って昔から決めてたんだ!」
そう言って、満面の笑みを浮かべる桃太郎。
その表情からは一切の迷いを感じさせず、むしろ これから始まろうとしている旅に心を踊らせているように見えた。
桃太郎に後悔が無いのならと、それ以上の発言を控える夜叉丸。
しぶしぶ納得した様子の彼の横を通り過ぎて、小太郎が桃太郎の肩に止まった。
小太郎
「ま! お前には俺様達が着いているからな!
見送りなんか無くたって寂しい思いなんかさせねぇさ!
楽しんで行こうぜ! 小僧!」
桃太郎
「お前はいつも元気だなぁ!」
笑顔と笑い声で満ちた旅立ち…。
それは桃太郎にとっては、予定していたよりも上出来なものとなった。
本来なら、厄介払いのように追い出されて始まる旅だと思っていたのに…
それなのに…
今は桃太郎にも旅の仲間がいる。
夜叉丸と小太郎と言う人ならざる存在は、桃太郎にとって この上ない心の支えとなっていた。
桃太郎
「まずは ばあ様が言うように【鬼之城(きのじょう)】を目指そう!
そこで鬼の呪いについて詳しい鬼を探して、夜叉丸を診て貰うんだ!」
意気揚々と歩みを進める桃太郎。
小太郎は人間から見付からないように桃太郎の衣服の中に身を潜め、夜叉丸は編笠で角を隠した。
隠し事だらけの者達で編成された旅の仲間…。
こうして桃太郎の旅が始まった。
しかし…
迷いが無さすぎる桃太郎の態度が逆に、夜叉丸と小太郎の胸の中に小さなモヤを掛けていた。
夜叉丸・小太郎
「…本当にこれで良かったのかな?」
…一昨晩の事…
おじいさんは桃太郎が持ち帰ってしまった御神木の枝を加工していた。
自然と折れてしまった桃の木の枝だと言うのに、何故か刃を通さない。
金属に勝る強度を持ったその枝を上手く加工できず、おじいさんはほとほと困り果てていた。
…その時…
おじいさんの居る部屋に入ってきたおばあさん。
その手には、おじいさんへのお茶と茶菓子が乗せられたお盆が持たれていた。
額に汗を滲ませながら悩むおじいさん。
その後ろ姿を見て、おばあさんはせめて何か1つでも力になれたらと感じていたのだ。
座して悩むおじいさんに歩み寄り、その隣にそっと置かれたお盆。
枝の加工に集中していたおじいさんはおばあさんの行動に気付けず、差し入れのお茶と茶菓子に驚いていた。
おばあさん
「…上手く行かないのかい…?」
おばあさんの質問に、溜め息を吐きながら頷くおじいさん。
力には自信があり、加工技術にも自信があったはずなのに…
どんな方法で加工しようとしても加工出来ない…。
桃の枝の余りの固さに、おじいさんは驚き…
同時にその強度に期待していた。
おばあさん
「…そんなに加工が難しいのなら、何もこの枝から木刀を削り出さなくても良いんじゃないかい?」
おばあさんの提案は尤もだ。
本当はおじいさんも同じ事を考えていた。
妖怪や賊の蔓延るこの世界に孫を旅立たせるのなら、信頼の置ける刀匠に鍛え上げられた見事な一振を持たせたい。
…しかし…
おじいさん
「…いくら厳しい旅になるといってもな…
…あの子が人を殺めるのは…
…間違っているような気がするんじゃ…。」
桃太郎が手にした刀で人を斬る場面が想像出来ない…。
そして、想像したくない…。
もちろん木刀であっても、相手を撲殺してしまう事もあるだろう…。
だが…
冷たく無機質な金属で出来た刀よりも、木から作られた暖かみのある木刀の方が桃太郎の手に握られるに相応しいと、おじいさんは感じていた。
おじいさん
「…これは飽くまでワシの勘じゃ…。
…根拠など何処にも無い…。
…合理性にも欠けておる…。
…それでも…
…桃太郎には…今のままでいて欲しい…。
…ただ何事にも一生懸命で…
…何事も上手く出来なくとも前向きで…
…ただ頑張って生きている、あの子のままで…。」
俯き加減に背を丸め、肩を落として胸の内を話すおじいさんはとても悲しそうだった。
…おじいさんの望みは、ただの老人の憂いだったのかも知れない…。
これから始まる旅が桃太郎を変え、おじいさんの知らない桃太郎に変えてしまう事を嫌っただけの、何の計画性も無い願望…。
それは桃太郎の成長を望んでいないのと一緒なのかも知れない…
もしもその願いを桃太郎に聞かれてしまえば、桃太郎の成長を妨げる事になってしまうかも知れない…
それでもおじいさんは…
おじいさんの知る桃太郎を失う事が怖かった…。
おじいさん
「…それに誤算じゃったが、これだけ丈夫な木の枝じゃ!
そこら辺の刀では斬り傷1つ付けられんじゃろうて!
武器としては成り立たずとも、盾としてなら役に立つ!
ワシの作った木刀が桃太郎の命を守るんじゃ!
これはやり甲斐のある仕事じゃわい!」
そう言って自分の感情を誤魔化し、再び木の枝の加工に取り掛かるおじいさん。
演技だったとしても笑顔と活気を取り戻したおじいさんの姿を見て安心したおばあさんは席を立った。
おじいさんに集中させてあげるべきだと、そう判断して…。
おばあさん
「…それなら甲冑でも用意してやった方が良いんじゃないのかい?」
…冷静なおばあさんの突っ込み…。
その一言には、さすがのおじいさんも返す言葉が見当たらなかった…。
少し考え込んで、作業の手が遅くなるおじいさん。
それでもやはり木刀を渡したいと考えたおじいさんの作業は続き、翌日までその作業は続いた。
桃太郎が旅立つ前日…
その日の昼過ぎになって、郷の御神木である桃の木の枝から作られた木刀は完成した。
おじいさんとおばあさんの会話の後、まるで抵抗をやめたかの様にすんなりと加工された桃の枝。
おじいさんが不安になってしまうくらい簡単に加工されたその木刀は軽くしなやかで…
それでいて鉄にも負けない頑丈さを兼ね備えていた。
おじいさん
「…大した物も渡せないが…
…まぁ、鬼之城に行くだけならそれでも十分じゃろう…。
他に必要な物は旅の中で探してまいれ。
気を付けて行ってくるのじゃぞ…。」
いつも口数の少ないおじいさんが苦手意識と戦いながら選び抜いた少ない言葉。
その言葉に、いったいどれ程の気持ちを込めた事だろう…?
それを知ってか知らずか…
桃太郎は明るく元気良く…
それはそれは嬉しそうに、おじいさんが作った木刀を手に取った。
桃太郎
「…ありがとう! じい様!」
そっと手渡されたおじいさんの木刀。
その感触を確かめるように、桃太郎は木刀の全体をその手で撫でた。
軽く、固く、手に馴染む。
それらの情報が桃太郎に伝えていた。
それは桃太郎の手に握られるために作られた物なのだと…。
正直、最初に見た瞬間は真剣ではない事に落胆しそうになっていた。
しかし桃太郎は、その目に映る木刀から伝わって来る不思議な暖かさを感じて考え方を改めた…。
それが何なのかは分からなかったが…
ただ桃太郎は、おじいさんから手渡された木刀がただの木刀ではなく…
そこに命のような物を宿した特別な存在である事を理解していた。
おじいさん
「…桃の木はな…
昔から神聖な樹木だとされている…。
その木に成る実は神々のみが口にする事を許された特別な果物じゃ。
それは人の世では魔除けや縁起物として扱われて来た…。
その木刀にも、きっとその神聖なる気が宿っておる。
…それがきっとお前を守り…
お前の行く道を切り開いてくれる事じゃろう…。」
おじいさんの言葉に、桃太郎は ただ黙って耳を傾けた。
そして最後に深々と頭を下げ、有り難く木刀を頂戴したのだった。
桃太郎
「ありがとう、じい様!
オイラはこの木刀を大事にするから!」
おじいさん
「大事になどせんでいい!
それを振りかざして戦え!」
…自分の真意が伝わっているかどうか。
それが急に分からなくなってしまったおじいさん。
不安に駆られるおじいさんを他所に、桃太郎は木刀を持ったまま部屋を飛び出し、庭で素振りをし始めた。
元気に木刀を振り回すその姿は、おじいさんが今まで見てきた桃太郎のものとは少し違った。
これから旅に出る覚悟が出来ているような…
目の前に存在しない敵を目掛けて打ち込まれているような、実戦を経験した者の素振り…。
その様子がおじいさんには既に少し遠く感じられ…
今までの桃太郎が、もう存在していない事を覚らせていた…。
…旅立ちの当日…
桃太郎はまだ日が昇る前におじいさんとおばあさんに挨拶を済ませていた。
自分で決めていた出発の風景に合わせるためでもあるが、他の誰にも邪魔されずにおじいさんとおばあさんに挨拶をするためでもあった。
例え夜叉丸の体質が改善出来たとしても、自分だけは郷に戻れない事を理解していたから…。
だから誰の邪魔も入らないように…
お別れに集中出来るように、その時間を選んで旅に出たのだ。
おじいさんとおばあさんの顔を忘れないように、その目に焼き付けるように見つめる桃太郎…。
その意思を理解したおじいさんとおばあさんもまた、桃太郎を真っ直ぐに見続けていた…。
おじいさん
「…達者でな…桃太郎…。」
既に丘の向こう側まで進み、姿が見えなくなっていた桃太郎を おじいさんは見送り続けていた。
…その想いは桃太郎に届く事はないかも知れない…
それでも届いて欲しいと願う気持ちが、おじいさんにそれをさせていた…。
おばあさん
「ほら! いつまでそこにツッ立っているんだい!
アンタにはアンタの生活があるだろ!
いつまでも桃太郎との別れを悲しんでいる暇はないよ!」
おじいさんの背中越しに聞こえるおばあさんの声。
しかし おばあさんもまた平常心を保てている訳ではなく…
その瞳はやや赤く染まり、その目尻には微かに涙のようなものが確認された。
おじいさん
「…分かっておる…。」
おばあさんの言葉にその一言だけ返すと、桃太郎が旅立って行った道に背を向けるおじいさん。
いつもより元気が無く、その歩調にも力を感じられなかったが…
キリッと前を見据えるその瞳には、いつもより少しだけ、強い意思の力が宿されていた…。
その様子を見て一安心するおばあさん。
彼女もまたその瞳に煌めくものを拭い去り、家の中へと歩みを進める。
…どんなに郷の中が変わらずとも、確実に変わってしまった2人の生活…。
これから始まろうとしているそんな生活に…
その寂しさに…
絶対に消える事のない桃太郎への心配に立ち向かうために、おじいさんとおばあさんにも決意が必要だったのだ。
おばあさん
「…それにね…
桃太郎には他には無い強力な味方が着いてるから。
私達みたいな年寄りが出る幕は無いよ。」
おばあさんのその言葉を、おじいさんは最初 夜叉丸と小太郎の事だと思っていた。
小太郎に戦力らしい戦力は無い。
だが、鬼である夜叉丸が側にいれば心配は無いと言う意味だと…。
…しかし…
微かに見えるおばあさんの横顔が笑っているように見えたおじいさん。
おばあさんの吊り上がった口角から何かを感じ取ったおじいさんは、自分の考えが間違えている事を直ぐに理解した。
…桃太郎に着いて行った仲間…
…それは…
おばあさんの言葉通り、他に無い強力な存在だった…。
…小太郎や夜叉丸と楽しそうに話ながら、丘を3つ程越えた桃太郎…。
その表情には曇りが無く、明るい未来しか考えていないように見える反面…
その足取りはどこか重く、何かを躊躇っているかのような印象を夜叉丸と小太郎に与えていた。
…やはり寂しいのではないだろうか…?
そんな不安が夜叉丸達の胸に芽生え始めていた。
夜叉丸達に胸中を悟られまいと、無理に明るく振る舞う桃太郎。
気を張っていたはずなのに…
それなのに、僅かな疲れが桃太郎を襲った…。
僅かに表情が暗くなる…
ついつい深呼吸のような深い溜め息を吐きたくなる…
その視線が、何処か遠くに何かを探してしまう…
…これは隠し通せない…
桃太郎がそれを自覚してしまった時…
【その人】は桃太郎の目の前に姿を現した…。
砂利を踏み締める右近下駄…
僅かに風に靡く振り袖と袴の裾…
そして絹のように滑らかな、明るい栗色の長い髪…
その左手には剣を携え、その大きな瞳は桃太郎の瞳を捕らえて…
桃太郎もまた…その瞳から視線を外せなかった…。
その日に旅立つ事を伝えてはいなかったから…。
誰も来るはずがないと思っていたから…
だがしかし、確かにそこにいるその人物は…
桃太郎の行動を分かっていたようにそこで待ち構えていた。
桃太郎
「…桜…ッ!! …何で…ッ!?」
桜
「…私の台詞だよ…桃ちゃん…。」
…そこに居たのは…
…桜だった…
旅支度を済ませ、戦闘の準備さえ出来ている彼女は「何故、私を置いていった?」と聞きたそうな表情で桃太郎を睨んでいた。
…気は通じるもの…
分かりやすい桜の表情を見て彼女の気持ちを理解した桃太郎は、返す言葉も見付けられずに立ち尽くしていた。
夜叉丸と小太郎も、驚きと共に足を止めて成り行きを見守る。
…桜の存在が桃太郎の迷いを払拭してくれるかも知れないと…
そう期待して。
桜
「…私に何か言う事はないん?
【行ってきます!】とか…
【またね!】とか!」
桜からの質問に、桃太郎は更に困惑した。
「あの…」や「その…」と言った言葉は出て来ても、そこに続く言葉が見付からない。
何故か胸の中に広がって行く罪悪感。
巻き込まないために置いて来た存在だったはずなのに…
まるで「巻き込んで欲しい」と言っているようなその様子が、桃太郎の思考を混乱させていた。
戸惑う桃太郎の心中を察したのか、不意に桃太郎へと歩み寄る桜。
急な接近に圧迫感を感じた桃太郎の足は、僅に一歩退き下がる。
桃太郎が萎縮している事を理解しながら、それでも歩みを止めない桜。
桃太郎との距離が手を伸ばせば届く程に近付いた…
…その時…
桜はやっとその歩みを止めた。
そして桃太郎の瞳を真っ直ぐ覗き込む桜…。
余りにも真っ直ぐなその視線に、桃太郎は嘘はつけない事を理解した。
…次に投げ掛けられる質問は誤魔化せない…
…覚悟をしなくては…
そう感じた桃太郎はの額には汗が滲み、喉は渇きに襲われて唾を飲み込んでいた。
桜
「…桃ちゃん…
私に黙って何処ぇ(どけぇ)行くつもりだったん?」
桜の問いに、素直に鬼之城へと向かう旨を返答する桃太郎。
しかし、黙って旅に出た理由までは答えられなかった。
夜叉丸の体質についてベラベラ喋るのは夜叉丸に失礼だろうし、鬼の味方をしたから郷には居られないと答えるのもどこか情けない。
巻き込みたくなかったと答えても、自分より実力で上回る桜に気を遣うの逆に怒りを買いそうだ。
桜に納得して貰える答えなんか無い。
そんな怯えが、再び桃太郎の口を閉ざしていた。
その時…
桃太郎の背後から歩み寄って来た夜叉丸。
彼は桃太郎の肩に軽く触れると、その肩を軽く後方へと引きながら自分は半歩前へ出た。
そこから先は自分が話すと…
まるでそう言っているかのように。
夜叉丸
「…桃太郎は俺の体質の改善のために共に旅に出ると名乗り出てくれたんだ。
もちろん俺は桃太郎の事を守るつもりではいるが…
もう1人仲間がいてくれるならとても助かる。」
夜叉丸の一言に驚きを隠せない桃太郎。
桜を巻き込みたくなかったのに…
迷惑を掛けたくなかったのに…
それなのに無言で笑顔を返してきた夜叉丸に、桃太郎は次に自分が口に出さなくてはならない言葉を理解していた。
…少し歯を食い縛り、何かに耐えるような表情を見せた桃太郎…。
その表情のまま桜の方へと向き直すと、桃太郎はまともに桜の顔を見る事も出来ないまま、その言葉を口にした。
桃太郎
「…挨拶しなくて…ごめん…。
…一緒に来てくれたら…助かる…。」
桃太郎の謝罪と提案を聞いて、一気に赤面する桜。
だが桃太郎は桜が赤面した様子を見ていない。
その事に気付いた桜は急いで桃太郎に背を向け、悟られる事のないように自分の感情を隠した。
桜
「しゃーないなー!
桃ちゃんは私がいないと、どうにもおえん(ダメ)からなぁ!
何処か行くなら私が付き合うたるわ!」
そう言うと、生き生きと歩き出した桜。
暫くの間、その後ろ姿を呆れるように見ていた桃太郎達も、何かに気が付いたように後を追った。
桃太郎
「おい! 先頭は俺が歩くんだぞ!
お前は俺の後ろにいろよ!」
桜
「え~? 何それ?
桃ちゃんに私の事が守れるん?」
桃太郎
「守れるに決まってるだろ!
これでも俺はじい様から一本取ってるんだぞ!」
桜
「まぐれだったんちゃうん?」
桃太郎
「何だとッ!!?
そこまで言うならこの場で勝負するか!?」
桜
「望むところじゃ!
これで私の108勝0敗~♪」
桃太郎
「ムキーーーーーッ!!!」
桃太郎と桜のやり取りを後方から見守っていた夜叉丸。
そして桃太郎の懐から覗いていた小太郎。
…2人は桃太郎の心と体に明るさが戻ったのを感じた…。
小さな安堵の溜め息をつく夜叉丸と小太郎。
願うなら、この旅が終始こんな平和なものであれば良い…。
そう願いながら、夜叉丸は2人の後を追った…。
小太郎
「おい! いつまでも俺様を仲間外れにしてんじゃねぇ!
妖怪様だぞ!
こんなに話題性のある存在はいねぇだろ!!」
夜叉丸
『…先が思いやられる旅だ…。』
…その頃…
桃太郎の郷では1つ問題が起きていた…。
金時
「…は? 桃太郎は旅に出た?
…いつ? …今朝?
…俺を置いて?」
寺子屋に来なかった桃太郎を訪ねておじいさんとおばあさんの元まで来た金時。
彼は今更 自分が置いて行かれた事を知り、激昂してそのまま郷を抜け出したのだった。
鬼之城を目指した桃太郎の後を追って…。
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