第388話
セカンドライフ社
おなじみALOやALO2を開発した会社であり。ALO2の神であり、元国防用高性能管理AIである『ツインズ』を運用している会社である。
今、その会社の開発部が悲鳴の渦に包まれていた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「今じゃない!!絶対に今じゃない!!」
「なんでもう【厄災】やってんだよぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「それの攻略は半年後だと思ってたんですけどぉぉぉぉぉ!?」
厄災関連のクエストは、“どこかのダンジョンに眠っている”厄災を討伐する事で開始される。ちなみに、ダンジョンの中である為に外界への影響は“まったく無い”。だが、厄災クエストが解禁されるとフィールドにも厄災関係のモンスターがポップするようになる為、まだまだ初心者の多い今、起きるイベントでは無いはずだった。
「なんでクラッシュデータの塊とランダムバグが一緒に行動してるんだよ!!」
「あぁぁぁぁやっぱり!クラッシュデータとバグが悪さしてクエスト始めちゃってる!?」
「普通ボス2体倒して終わりのはずだもんなぁ。あそこ・・・・・。」
クラッシュデータの塊と言うのはもちろんルドの事である。出来る限り元のデータを再現しようとしたセカンドライフ社。しかしALOのルドのデータはほとんどがウイルスに食い散らかされ、それ以前のデータも復元不可能なまでになっていた。そこで、社長の一声で残っているデータを纏めて新しいキャラにぶち込んだのである。
そんな事をすればそれはもうバグや不具合の嵐となるが、そのクラッシュデータの不足情報を新規キャラクターのデータで補った。その試みはうまくいき、彼は今も楽しく遊んでいるが。いくつかのバグが残ってしまった。
「呪いの概念が生まれるとは思わなかったもんなぁ・・・・。」
「その所為で七大罪と七元徳に制限掛かっちまったもんな・・・・。」
「それ以外の強力なスキルにもデメリットが発生するとか・・・・。」
「やらかしてくれたよなぁ。」
もちろんクラッシュデータをぶち込んだ会社側の自業自得である。だが、その所為でこまごまとした調整が増え残業も増えたのも事実。恨み言を言わないとやってられないのだ。
「彼も彼でなぁ・・・・。」
「まさかランダムを選んで鮫の半魚人種が出るとは・・・・。」
「あれってレア枠だろ?魚人種は実装されてるじゃないか。」
「いんや、構想最終段階のテストモデル。今後追加される半〇人種っていう種族のモデルケースとして登録していたデータを引っこ抜かれた。」
「まじで!?」
「よく考えてみ?両種族の良いとこ取りの種族何て皆選ぶに決まってるだろ?まぁ原種よりは能力は落ちるけどな。」
「確かに?」
そう、カイトの半魚人種はまだ実装されていない種族だったのだ。今後のアップデートとイベントで解禁されるはずの種族が、なぜかプレイアブルキャラクターとして使えている。それもこれもランダムを選んで万分の1の確率でバグを引き起こしたからだった。
「まさか種族選択画面を1時間以上見続けた後に、選択画面とランダムを交互に10回選んで、プレイ時間が1時間36分40秒ピッタリにランダムを実行すると未実装データが選出される何てなぁ・・・・。」
「あれのバグ取りは大変だった・・・。攻略サイトに書かれる前で良かったよ・・・・。」
「まぁその2人が特大のバグを引き起こしたんですけどね?」
「「「「「「「はぁ~・・・・・。」」」」」」
溜息に包まれる開発部。そこに、さらなる悲報がもたらされた!!
「おいおいおい!!別の大陸の厄災が暴れ回ってるんだが!?」
「あっ!駄目!!その都市はプレイヤーが最初に渡る大陸の拠点なのよ!壊しちゃダメ!!」
「あー!精霊の森が消えた・・・・。精霊魔法習得のクエストも一緒に・・・。」
「ちょっ!?これじゃゲームの存続が!!」
そう、プレイヤーが訪れて初めて活動を始める厄災達が勝手に活動を始め。各大陸を蹂躙し始めたのだ!!
「白!黒!どうにか出来ないのか!?」
『今やってますよ!』
『各大陸に英雄キャラを創造。厄災の抑え込みを開始。複数国家のある大陸は各国に1人英雄を選出・・・・。完了。』
『ルドさんは本当に無茶苦茶してくれますねぇ!?』
『まぁまぁ姉さん。それが楽しかったりするでしょ?』
「巨神と空も居るのか!」
『母様のお手伝いです!!』
『父様?まじめにやらないとまた家族全員んでお説教だからね?あとこのバグ、父様の所為だよね?』
まさかの空神の言葉に固まる開発部の面々。そして父神である黒の反応はと言えば・・・。
『・・・・・・・・・。』
沈黙だった。
『沈黙は肯定と捉えますよあ・な・た?』
『ちょっとした出来心だ。許せ。』
そして母神である白からの説得(?)によりこの騒動は黒の所為であると自白が取れた。その瞬間開発部は爆発した。
「「「「「「「許せるかぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」」
身近にこの騒動の元凶が居たのである。開発部の面々はまるで幽鬼の様に黒の本体に群がる。
「おまっ、お前の所為で俺は3日も家に帰って無いんだぞ!!」
「私何て1週間ここに缶詰めなのよ!!」
「もうこいつぶっ壊そう!!そうしよう!」
「強制人格修正プログラムバージョンEXをぶち込んであげましょうか?ふふふふふ、楽しい事になりそうね?」
黒が人間で合ったら顔面を蒼白にして冷汗を滝の様に流していた。そう断言できる程に黒の本体に亡者の様に集まり出す開発部。そこに扉を開けて入って来た人物が居た。
バァーン!!
「何をやっているのかね!遊んでいる暇が在ったらこの事態を早く収拾しなさい!私も手伝うから!!」
そうセカンドライフ社社長。二条礼二が開発部に登場した!
「来た!社長来た!これで勝つる!」
「馬鹿!!ふざけている暇が在ったら手を動かせ!!」
「うおぉぉぉぉっ!社長めっちゃ早え!!バグがあっという間に消えて行く!」
「厄災を戦闘フィールドに隔離完了しました!!」
「英雄キャラクターが抑え込んでくれています!」
「厄災の襲撃周期を固定完了!」
「復興支援の為にキャラクターに一部スキルを譲渡して!あと最初の大陸に居る旅人達を早々に強化して各大陸に運ぶ案を!」
「経験値増加イベントを緊急ででっち上げます!」
「経験値増加イベントに追加で大航海要素を入れます!」
「飛行船の技術提供は?」
「空島がまだ見つかって居ないので不可能です。あの大陸の移動周期じゃまだまだ初期大陸に寄りません。」
「うーむ、あそこは新規スキルも多いからな・・・・。空島の移動周期はそのままで良い。初期大陸で厄災を倒せるんだ、既存のスキルで対応出来るはずだ。」
二条の活躍により事態は急速に鎮静化していく。もちろん開発会社でこんな事が起こっているとは思わな旅人達は、今もどうやって別大陸に行くのかその方法を探し回っていた。
「魔女がやらかした!あいつ自力で空飛びやがった!?」
「翼人種なんて居たの!?駄目よ、そのスキルだけじゃ別大陸に行けないわよ!?」
「こっちじゃ旅人が気球作り始めたぞ?作るの簡単だがそれじゃ初期大陸から抜けられない。初期大陸上空には渦を巻くように風が流れているからな!」
「空賊がいち早く大陸に向かって移動を始めちまった!」
「空を飛ぼうとする人はそのまま通しなさい。その代わり、大陸に着いたら身をもって過酷さを知るでしょう。その所為で厄災の襲撃カウントが進むのは頂けませんが・・・。しばらくは英雄キャラに頑張って貰うしかありませんね。」
『各地に厄災に関する古い文献を配布。攻略のヒントとなる武器やアイテムの配置完了。』
『現地何とか落ち着きましたぁ。はぁ、何とかなった・・・・。』
「ご苦労様。引き続き業務を頼むよ。あっ後で差し入れにピザを取っておく。是非皆で食べてくれ。」
「「「「「「「「ありがとうございました!!」」」」」」」」」
問題が一段落付いたのを確認してからさっそうと立ち去る二条社長。その姿にキラキラとした視線を向けながら、開発部の面々は業務に戻って行くのだった。
『ルドさん達が大人しくしてくれてれば良いけど・・・・。』
巨神の呟いた言葉は開発部の喧騒の中に消えて行った。
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