第122話
修業2日目、師匠は1ヵ月守備隊の指導に当たるという事でリアル時間で5日程時間がある。まぁ仕事だったり何だったりでログインするのは夕方からになるけれど、それでもゲーム内で2日は時間が取れる。(睡眠時間は削られるが。)
丁度土日を挟む日程になっているからその時にがっつりと修行つけてあげれば大丈夫だろう。本人も凄いやる気を出してくれてるしな。
「ルドさん今日も森に行きますよね!!早く行きましょう!!」
「そうだな、だがその前にやる事があるんだ。」
「やる事ですか?」
「そっ、俺の仲間に声を掛けてるんだが・・・。おっ来た来た。おーいこっちだ!!」
「ルドさんが見知らぬ少女と一緒に居ますわ。いつか刺されても知りませんわよ?」
「そんな関係じゃねぇよ。わざわざすまないなルゼダ。」
ちょっと考えている事があって暇をしていたルゼダに声を掛けた。なぜならばテッタに(前回の訓練の後に呼び捨てにして欲しいと言われた。)教えて欲しい事があったからだ。
「それで、チャットで言っていた通りですのね?」
「あぁ、どうやらテッタの職業は回復職派生の盾職らしくてな。MGKの数値が重要みたいなんだわ。それならルゼダの十八番だろ?」
「えぇそうですね。それでしたらお力になれると思いますわ。」
「あっテッタです!!よろしくお願いします!!」
「ルゼダと申します。よろしくお願いしますわ。」
森での狩りの前に、パッシブスキルをある程度充実させた方が良いという結論になったんだよな。なぜならテッタはレベルのわりにステータスが低い。(口頭で聞いた。)
それはおそらく前のギルドが盾職のきちんとした育成方法を知らずに連れ回した所為だと思っている。俺なんてパッシブスキルが無かったらゴミ以下の存在なんだからその重要性は解るってもんだ。
今更レベルを下げる何て出来ないし、振ってしまったポイントも元には戻らない。けどこのままのキャラで行きたいというテッタの願いを叶える為には、パッシブ系のスキルを充実させるしか手が無いって訳だ。
「ではこのままここで始めますわ。」
「えっと、何をすればいいんでしょうか?」
「座禅です。」
「座禅・・・ですか?」
広場の端っこに移動してからルゼダはテッタに座禅を組むように促した。
「ついでですわ、ルドさんもやってくださいませ。」
「俺もか?」
「えぇ、ルドさんもこのスキルを覚えた方が良いかもしれませんから。」
「教えてくれるってんならやるか。」
「スキルってSP使わなくても覚えられるんですか!?」
変な所で驚きの声をあげるテッタ。いやいやいや、前回の修行の時にちゃんとスキル覚えただろうが!!覚えてないの?
「いや、あの時はテンションが上がっていて深く考えなかったというかなんというか・・・。」
「職業スキルだから覚えやすかったとは思うが、取ったスキルはSPでも取れるんだぞ?」
「この世界にあるスキルのほとんどは努力すれば取得可能ですわ。そして、努力して取得したスキルの方が効果は高い事が解っていますの。」
「へぇ~。そうだったんですね。」
SPで獲得したスキルと、努力で獲得したスキルを検証した結果。努力して覚えた方が効果の高いスキルになる事が判明したんだよ。ダメージや補正値、倍率なんかも細かく違っていて、同じスキルでも真剣に取り組んだかどうかで強いスキルにも弱いスキルにもなるんだよな。
職業派生の中には自力でキーとなるスキルを取る、なんてものがあるってメガネ達も話していたからな。もしかしたらテッタにもそのうち出る可能性もあるな。
「そして今回取得して頂くのは<MP自動回復>もしくは<瞑想>スキルですわ。」
ルゼダの説明によると、MP自動回復はその名の通りHP自動回復のMP版。スキルレベルが上がればMPの回復量が上がって魔法が打ちやすくなる。
<瞑想>スキルは戦闘前に行う事でMPの最大量を一定時間増やす効果が在るらしい。ゾーンに入るって言いう人も居るとさ。
「テッタさんにはぜひ両方覚えて欲しいですわ。」
「はいっ!!頑張ります!!」
「MGKが上がるスキルじゃなくていいのか?」
「お話を聞いてみた所、先にそちらを取得したほうが良いと思いますわ。その方がMGKの上昇でどのくらい恩恵が出るのか分かりやすいんですの。」
なるほど、修業はつらい物も多いからモチベーションを保てるように、目に見える指標を用意しておくって事か。
「シアちゃんは私が合図を出したら2人を蔓で叩いて下さいまし。」
「わかったー。」
「えっと、足を組んで、体内の魔力を意識しながらぐるぐると回すっと・・・・。」
広場はいろいろな人が降り立ち、常に騒がしい状態になっている。そんな中で集中しないといけないというのは中々難しい。
降り立った旅人の話に耳を傾ければ蔓でしばかれ、そよぐ風に気持ち良いなぁなんて気を緩めたらまた蔓でしばかれた。
「必要なのは集中!魔力を感じ、魔力を回し、最後に外に押し出してくださいまし!!」
「はいっ!!」
「なかなか難しいなこれ。周りの音とかも気になるし。」
「ですからこの修業に最適なのですわ。」
ゲーム内時間で午後にはルゼダはクリンと遊ぶ約束をしているらしい。だからこそ午前中いっぱいはこの座禅で修行を行った。残念ながら2人共目標のスキルは覚えられなかったがな。半日で覚えられたら苦労はしないさ。
「それでは私はこれで失礼いたします。」
「ありがとな。また今度頼むわ。」
「ありがとうございました!!」
「いえ、ですが次はリダさんも連れてくる事になりそうですわね・・・。」
「ん?リダがどうした?」
「なんでもありませんわ。それでは。」シューンッ
「ばいばいるぜだおねぇちゃん!!」
ルゼダが転移ポータルから消えていき、残された俺達は一旦休憩をとる事にした。
「さてと、王都に何が在るかなんて俺は知らないんだが。テッタは解るか?」
「任せて下さい!!ここは僕のホームですから!!」
どんと胸を腕で叩くテッタ。そこそこあるお胸がそれで弾む。うむ、紳士として凝視するのは止めよう。
「ぱぱ?」
「何でもないぞシア。」
「それじゃあこっちに行きましょう!!おすすめのカフェがあるんです!!」
「あっちょっと待て!!」
そういって先を進むテッタ。慌てて俺もその後ろを追いかけていく。しかし王都は人が多く、なかなか進めない。もたもたしている俺達を置いてテッタはするすると人混みの中に消えていった。
「これが都会人と田舎者の格差か・・・。」
「ぱぱ、てったいなくなったよ?」
「マップで追い駆けられるから大丈夫だ。それじゃあ行くぞ。」
人混みにもまれながら俺はテッタの反応を追いかけて行った。
テッタの印が止まっている所は何とも可愛らしいカフェだった。落ち着いた白い外装と、日除けだろうか?植物の蔓を使ってグリーンカーテンを作っている。店の前にも鉢植えが置かれていて、季節の花が咲いていた。
「テッタは中かな?」
「はいろうぱぱ!!」
「そうだな。」
カランコロンッ♪
ドアにぶら下がったベルを鳴らしながら店に入る。店の中も日の光と植物の緑でかなり落ち着いた雰囲気を出している。
しかし、店の雰囲気とは違い店内の空気は最悪だった。
「もう一度言ってあげましょうか?いつまで王都にいるのかしらこの役立たずが!!さっさと出て行きなさい。」
「っ!?」
先に入店していたテッタの前で何やら一方的に騒ぎ立てている女が居る。もしかして元のギルドのメンバーか?まぁなんだっていいか、さすがに店の中で騒ぐのは見過ごせないからな。
「テッタお待たせ、いやぁ人が多いなここは。追いつくのが大変だったよ。」
「やっとおいついた~。」
「ルドさん・・・シアちゃん・・・・。」
「あら、新しいお仲間さん?こんな役立たずを仲間にするなんて可哀そうな人達ね。」
うんこいつ嫌いだわ。なんか取り巻きもずっとニヤニヤしてみてるだけだし、スイッチ入れちゃってもいいよな?
「この場をわきまえない馬鹿は誰だ?テッタの知り合い?」
「えっと・・・・元のギルドの幹部で、ネリエッタさんです・・・。」
「ふ~ん、こんな落ち着いたカフェで人に対して嫌味をまき散らして営業妨害をするような奴が幹部ね。そのギルドも知れてるな。弱い奴が吠えてるんだろ?テッタもあんまり気にすんなよな。こいつ等は情報をきちんと集める事も出来ない“弱小ギルド”何だから。」
「なんですって!!」
おーおーおー、顔を真っ赤にしちゃって。人に罵詈雑言ぶつけるのは良いけど自分がされるのは嫌だってか?馬鹿じゃねぇの?
「ほれテッタ。弱小に構ってる暇ないぞ?このカフェのおすすめ頼んで休憩したらさっさと修行行くぞ。」
「えっと、そのぉ?」
「貴方もう一度言ってみなさい。誰が弱小ですって?」
「お前だよ。あとお前の所属しているギルドな。テッタから話は聞いたぞ?盾職が強いと聞いてスカウトしたんだってな?なら何だこのテッタのステータスの振り方は、DEFはあげさせない職業優位なMGKも使わせない。おまけに攻撃ばかりさせるとか馬鹿じゃねぇのか?盾職の使い方が解ってないって宣伝している様な物じゃないか。それに、レベルさえ上げれば強いなんて阿保な理論ぶち上げてる時点で弱小決定だろうがよ。そんな単純なゲームじゃねぇよ『ALO』(ここ)はよ。」
森での訓練中に色々テッタから話は聞いている。なんかセミプロが率いているチームで前線組を名乗っているらしいが、本当の前線組からは全く相手にされない弱小ギルドだというのは裏が取れてるんだよな。なんせその前線組にフレンドが居ますし?
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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