第28話

あの後、カマーンさんの尋問(拷問?)によって簡単に赤落ちは口を割った。赤落ち達はグループを組んでいて名前は「赤蛇」って言うらしい。そのトップはどうやらプレイヤーで、元々居た住民の赤落ち達を一つにまとめ上げて組織化したんだと。


今回の集団暴走の際に開拓村を中心に襲撃を行って荒稼ぎ。噂を聞いた赤落ち達を次々吸収して組織がさらに巨大化したらしい。


で、今回の集団暴走の中で生き残った村に運ばれる報奨金の話を聞いてそれを強奪。ついでに村の1つでも落として巨大化してしまった赤蛇の拠点にしちまおうって事で品定めしてたんだと。


「つまりこの村が狙われるって事ですか・・・。集団暴走の次は集団暴徒とはいやはや・・・。」

「そこまで気負う事はねぇと思うがな?」

「それはどうしてだ親父?」

「この前の集団暴走で村民は皆レベルが上がった。クイーンレイシアから得られた力はそこらの赤落ちに負ける程やわじゃねぇよ。」


まぁ確かに、どこの戦闘民族ですか?ってくらいに皆動き回ってるもんなぁ。


俺が目線を向けた先では先ほどの話を聞いて、今度は俺達も最初から村を守るんだって住民の皆が戦闘訓練をしている。


うん、人はそんな簡単に数メートル飛ばないからね?農家のお爺ちゃんなんて唯の棒で地面割っているし。暴走戦に参加していなかった人達まで空を駆け始めたからね?あっ木工所の親方が地面を戻してる。腰の曲がってたおばあちゃんが徒手空拳で丸太へし折ってるんだけど何かの達人だった?


そんな村民の状態を見た赤落ち住民は青い顔をしてブルブル震えてる。たぶん今更やばい村に手を出してしまったって後悔してるんだと思う。俺も同じ立場だったら漏らしてるかもしれない。


「問題は捕まっている人達ですねぇ。」

「他の村の連中が捕まってるんだろ?」

「えぇそうよぉ~。結構な数が捕まってるみたいだわ。問題はあまり時間が無い事ねぇ~。」


アジトの位置は判明してる。赤落ちさんがペラペラ喋ってくれたからね。でも問題はそこに他の開拓村の住民が捕まってるって事。そんでもって明日にもその人達は隣国に奴隷として出荷されちゃうらしい。


「アジトが村の近くだったのは幸いだったな。」

「えぇ、今から向かえば間に合います。」

「でもぉ~。さっき逃げた連中が報告してる可能性が高いのよねぇ。」

「村の防衛も考えないといけないからのぉ~。」


こっちの戦力としては村人総勢30名、えっ違う?あっ発展度が上がって50名に増えてるのね。いつの間に。たしかに見た事ない若い人が増えてると思った。


敵の戦力は総勢200名。うん、これ無理じゃないかなぁ?


「敵の強さは吐いたのか?」

「敵のリーダーさんはかなりの強さみたいよぉ?レベルと言ったかしら?あれが100在るって自慢してたんですって。」


うん、それって現状のレベルキャップじゃないですかーやだぁー。と言ってもそれはプレイヤーの話、ここにはレベル300超えの化け物が最低でも2人居ます。その人達が恐れたクイーンレイシアって一体・・・。良く生きてたな俺。


「ルドは何か知ってるか?」

「あー、多分親父とカマーンさんだったら完封出来るんじゃないかな?旅人はまだ強さに限界があるからそれ以上強くならないだろうし。」

「おうそうか。なら2人で行って来るか。」

「えぇそうしましょうか。」


いやそんな近所を散歩するみたいな軽いノリで。


「ではお2人に任せますね。捕虜の移送に人が必要ですか?」

「念のため馬車と10人ほど後で送ってくれや。」

「1時間後くらいでいいわよぉーん。さぁ早速行きましょ。」


ドォンッ!!


爆発音と共に2人が消えました。地面には足跡がクッキリ!!これで型作れそうだな。


「はい!!それじゃあ皆さん片付けと村の防衛を行いますよ。あっルドさんはそのまま門を守って貰っても?」

「大丈夫だよ村長。」

「ではお願いしますね。後でギルドを通してクエストにしておきますので。馬車と後詰の人達は武装して門の前に集合してください。」


一緒に行けば良かったかなぁ。いや攻撃できない俺が行っても足手まといか。あの速さにも付いて行けないしなぁ。しばらくは門番をして過ごしますかね。俺は生きた壁だ!!なんちゃって。


―・-・-・-・-・-・-


そのプレイヤーは海賊や山賊に憧れていた。自分の欲望のままに襲い、奪う。暴力という絶対的な力に酔いしれた。そしていつかは自分もそうなりたいと思った。


だが世間から言えば唯の犯罪者。小さな子供ならいざ知らず、15歳を超えても憧れを捨てられなかったプレイヤーに対して両親はプレイヤーの事を強く叱責した。だが諦められなかった。それは自身の境遇から来る反発であったのか、いくら両親に叱られたとしてもさらにアウトローへの憧れは強くなった。


だが現実で実行してしまえば警察に捕まる、それでも良いと思うが他に方法は無いのか?テロ組織に加入するか?ヤクザや暴力団に入るのか?そんな事を考えていた時、『もう一つの人生』を謳い文句としたゲームが発売された。『Another Life Online』その世界ではそのプレイヤーは自由だった。だからこそかつての夢を叶えた。そう山賊になったのだ。


力をつけ、奪い、また力を蓄えた。同じ志を持つ仲間を集め、住民も引き入れた。赤落ちの組織で最大となった赤蛇は今日も暴力と言う力を振るい欲望を叶える為に動き続ける。


赤蛇の拠点、辺境にあるそれは洞窟を改造して作られた天然の要塞だった。洞窟の入り口は崖の上にあり発見し辛く、がけ下には川が流れている。赤落ち達は崖上から入り口に合図を送り、梯子を使って行き来をしていた。


そして一番の利点、それはこの場所には神器が埋まっているという事。その神器は王都にて盗まれた13番目の神器。本来であれば20作られるはずだった開拓村、そのうちの1つがこの場所にあった。


そんな拠点の中に光が立ち昇り、自害したプレイヤーが戻って来た。そしてこの集団のリーダーに報告を行う。


「リーダー、村見つけたぜ。」

「おう、どんな塩梅だ?」

「壁は対した事ねぇ。広場に反応があったから御神木が植わってるな。村民は50程、プレイヤーは一人だ。」


その報告を聞いてニヤリと笑うリーダー。その風貌は山賊の様な出で立ちで、黒いもじゃもじゃの髪と口髭、筋肉質な巨体、そして背中には両刃の斧が二つ背負われていた。


「獲物だな。」

「私達も人数増えましたからね。この拠点じゃ狭すぎます。」


リーダーの後ろから現れたのは細身の男、しかしその顔は蛇に近く狡猾な印象を周りに与える。この男こそが赤蛇のナンバー2であり参謀だった。


「これは副長、いらしたので?」

「えぇ、今度出荷する商品を見て来ました。」

「それは味見を?」

「そんなもったいない事をするわけ無いでしょう。あれは大事な商品です。大事に扱わないと・・ね。」


ここに囚われているのは開拓村の村民たち。すべての開拓村を襲撃出来なかったがそれでも赤蛇達の所為で壊滅した村も少なくない。ほとんどが女性と子供で総勢60名程がこの拠点に囚われていた。なおこのゲーム、20歳以上であれば解禁できる作りだが複雑な手続きが必要で行っている者も少ない。つまり先ほどの会話は唯のロールプレイだ。


「しっかしいつの間に隣国と渡りをつけたんだ?」

「ふふふ、それはリーダーと私だけの秘密です。詮索しない事ですね。」

「へいへいそうしますよ。それでリーダー?どうしやす?」


少し考えるそぶりを見せた後、何かに気が付いたようにリーダーは背負っていた斧を両手に持つ。


「襲撃だ。」


どごぉぉぉぉぉんっ!!


爆発音と振動が洞窟内に響く。そしておそらく部下であろう赤落ちの悲鳴が聞こえて来た。


「敵襲!!敵襲!!敵は2人!でもべらぼうにつえぇ!!」

「敵は一目散に捕虜の居る場所に向かっています!何とか止めようとしてるが・・・。畜生止まらねぇ!!化け物が!!」


次々とリーダーの元に報告にくる赤落ちプレイヤー。彼等も敵にやられたのか初期装備にその姿が変わっている。


「敵さんも頭が回る。人質にされない様に先に確保しようという魂胆でしょう。」

「守ってるのは?」

「鉄壁と鋼鉄ですね。」


リーダーと副長以外の赤蛇に所属するプレイヤーにはコードネームが割り振られていた。格闘家でありその体を鋼の様にして敵の攻撃を守る鉄壁。同じく格闘家であり腕を硬質化して敵を殴り飛ばす鋼鉄。この二人は赤蛇の戦闘隊長も務める程の実力者。レベルも80とかなり高かった。


「なら問題無い。俺達も迎撃に動くぞ。」

「裏から行きましょう。こういう時いつの間にか現れて人質を取り言う事を聞かす。実に良い悪役プレイです。」


副長は物語で暗躍する悪役に憧れた。裏で糸を引き、人を陥れる。彼も又闇を抱えているのかも知れない。しかしこの世界では彼こそが闇である。


「鼠、伝達は任せるぞ。」

「へいリーダー。」


そんな2人は襲撃者2人に屈辱を、自身の力の証明を与える為に裏道を使って捕虜を閉じ込めている牢屋に移動した。


「いらっしゃ~い♡2名様ご案なーい♪」


しかし、そこに居たのは全身ピンクの化け物だった。



毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る