なにはともあれ ※乙喜実視点

「解決策と言われてもな」

 そうです解決策です。優雅にお茶飲んでないで教えてほしいんです。

「そも、その目はメリットもあるだろう? むしろデカいだろうよ」

「ぅ〜……。まぁそうなんですけど……」

 そりゃあ過去が視えるわけですし? それで色々と……。

 秘密なんて私には無意味だからそれだけで脅したりもできるし……したことないけど。逆恨みが怖い。というかいきなり脅迫したら逆恨みですらない。

 私の使用用途なんて探し物とか安全な人かどうかの判断とか、格ゲーで相手のパターンの分析とかだし。最後に至ってはなくてもリリンさんの相手できてるくらいにはゲーム上手くなったから今となってはいらないし。

 善悪の判断も引きこもりの今なら正直なくてもあんまり困らないというか……。

 むしろ視えすぎて困ることのが多いというか……。

「消すか残すかなら……消したいくらいですよこれ。常に視えてると疲れるし、視たくないのも入りますし。そりゃあ制御できるならそれに越したことはないですが――」

「まぁなくはないが、な」

「え、あるんですか!?」

 なさそうな雰囲気だったのに!? 今までの問答って意味ありました?

「あるが、時間かかるぞ」

「え、え〜……何故でしょう……か?」

「貴様の目はマナの制御がおぼつかなくて起こっているようだからな。一人でもいずれはできるようになるだろうが……」

「どのくらいかかるかとか……わかったり?」

「フム。ちょっと手のひらで回してみろ」

「ま、回すって……どんなふうに?」

 乱回転とか言いませんよね? 私そんな器用な真似できませんよ?

「マナは見えるか?」

「苦手でしたがリリンさんならたぶん平気です」

 マナ見ようとすると過去が視えていたもので。過去が見えないリリンさんならたぶん。

「なら手本を見せてやる」

「あ、ありがとうござ――うっぷ!? ぅげぇ! げほ! ぉおえ!」

 な、な、な、なんなの今の……っ!? 肌にねっとりもったりしたのがまとわりついて蠢いて……そ、それからい、一瞬で景色が歪んで……というか三半規管ぶっ壊れながら見てるモノ全部が絵の具混ぜるみたいにぐるぐるしたような……なんとも形容しがたい

 ま、まだ気持ち悪いけど……す、すぐ見ないようにしたから咳で済んで良かった! 続けてたら絶対吐いてた! 良かったすぐやめて! ナイス判断!

「見る以前の問題か……あぁ、気にするな。盛大にむせたようだ」

 大きな咳ですびまぜん。対応ありがとうございますリリンさん……。

「すまんな。学園外だとどうにも、な。これでも抑えてはいるんだが……最近マナが増えたモノで我でも難儀しているんだ」

「はぁ……はぁ……けほ……」

 つ、つまりマナが多すぎて酔ったってこと……?

 そういえばあの無口な子とお姉さんとのを見たときも気持ち悪くなって気を失っちゃったけど……。あれは遠目でマナが馬鹿みたいにウネウネしてるわ歪めてるわでだったからだけど……。

 い、今のは純粋にマナの大きさに当てられたってこと?

「正確には密度、だな。大きさだけなら一応半径二メートル以内にはしていたぞ。ほら、周りを見ても貴様以外当てられてないだろう?」

 ……ほんとだ。私以外全然――。

「って、魔法師とかその適性がなきゃマナなんてわからないんじゃ?」

「貴様も知っているだろう? 最近人類のマナは増えて適正とやらも上がっていると」

「ま、まぁうっすらとは……」

 どの程度かまではわからないけど。

「我くらいのマナがあればわかるらしいぞ」

「…………」

 微弱なのは無理だけど大きければいけると。

 それを聞いて周りの席に誰もいなくて良かったと心底思いましたよ。いきなりこんなの食らったら吐きますよ。私はマナを見るって意識してたから耐えれただけで。

「というわけで悪いな。手本は見せられん。故、とりあえずやってみろ」

「…………はい」

 し、仕方ない……とりあえずやるだけやってみよ。

「ん、んぅ〜……」

 視るのは特異だし他の人より敏感には感じれるけど……扱うのは中々難し……。

 で、でもなんとかできた。手のひらにビー玉乗せて『の』の字を描くような感じだけど。

「ど、どうですか……? 我ながらうま――」

「八十年」

「……はい?」

「現状ソレなら早くて八十年くらいじゃないか? 当然ながら影も同じ系統故そのくらいはかかるか。マナの量と密度など質は問題ないが、扱うのは苦手らしいな」

「……………………そうですね」

 つまりダメダメぶきっちょってことですか……ハハ。絶望。

「やはり通ったほうがいいんじゃないか?」

「…………学園ではマナの扱いって教えてもらえるんですかね?」

「いんや。あまり。人域のほうなら学ぶだろうがな」

「じゃあ通っても意味ないじゃないですか……」

 むしろ余計な時間取られて練習の時間なくなるのでは?

「が、異界からの客によって扱いが上手くなることもある。我の相方がソレだな。我との繋がりによってマナを使えるようになったぞ」

「…………」

 つまりガチャじゃないっすか。そんな賭けの為に通いたくないですよ……。

「なにはともあれ、だ」

「……はい」

「試験を受けて、望んだ相手が来なければ退学すれば良いだろう。試合や授業が辛いとでも言い訳して。事実、担任によってはキツいらしいぞ」

「うげ……」

 つまりその言い訳が効かなかったら強制的に辛い毎日に放り込まれるってことじゃないですかっ。

 い、嫌だ! この目をどうにかするってだけのためにそんなの!

 だったら現状維持を選びたい!

「……試験に落ちるように頑張ろうと思います」

「なにを考えているか大体わかるが……ソッチのが望み薄だと思うぞー」

「それでも希望を持ちたいんです……」

 でないと私の心が折れるので!

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