第18話 無言電話

 公衆電話から電話をかけた。


 私からだとバレたくなくて。


 十円玉が電話機の中に落ちると、「もしもし」彼の声が聞こえてきた。


 懐かしい。


 受話器を耳に押し当てたまま、私は何も喋らなかった。


 それなのに少し間をおいてから、彼は「頑張れよ」と呟く。


 そのまま自然に切れるまで、無言電話は繋がり続けた。

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