第18話 羅城門(改訂版)

 逢神直高おうがみなおたかは、平安京の貴族に仕える武士として働いていたが、鬼を退治したことで、仕えにいた秋ノ葉を妻にめとっている。

 直高は鬼退治で貴族の間では有名人であり、当然、鬼退治の命令が時よりくる。

 しかし、退治に行くと鬼ではなく盗賊のたぐいであることが多い。

 今回も鬼退治の命令が来る。

 羅城門に鬼が住み着いたので退治して欲しいというのだ。


 羅城門には、行く当ての無い人が住み着いていたが、段々人の数が減っていく、あるものは鬼が人をさらうところを見たという者もいる。

 直高は羅城門に行き気配を探る、2階部分に人の気配がするので2階へと上がる、2階にはやせこけた若い男がいる。

 男は直直高を見ると驚き後ずさる

 「何を驚いている。」

 「武士様かい。」

 「そうだ武士だ。」

 「良かった、鬼かと思ったよ。」

 「どうしてそう思う。」

 「噂になっているんだよ、ここに居ると

  鬼にさらわれるそうだ。」

 「なのにいるのか。」

 「行くところがない。」

 「そうか。」

直高は下に降りようとする

 「もう行ってしまうのか。」

 「鬼はいなそうだからな。」

 「もう少しいてくれないか、鬼が怖いん

  だ。」

 「言ったろ、鬼はいないって。」

 「ああ、そうだな。」

男は黙り込み、直高は下に降りる。

 直高は夜に出直すことにする。

 直高が立ち去ると男がいる2階部分にもやがかかる。

 そして長い手が天井から垂れ下がって来る。

 そして、男を掴むと一気に天井に引き上げる

 「ぎゃあぁぁ」

男が叫ぶが聞くものは誰もいない。

 天井には鬼がぶら下がっている、そして手足が異様に長い。

 鬼は足で天井にぶら下がり、男の臓物から生きたまま食べ始める

 「痛い、いてーよ」

男はうめくが鬼は構わずかぶりつく、男のうめき声は段々小さくなり聞こえなくなる。

 天井からは血がしたたり落ち、ガリガリと咀嚼音が聞こえてくる。


 夜、直高は再び羅城門に足を運ぶ、気配を探るが何もいない。

 男がいる2階に上がることにする。

 2階に男はいなかったが、血の匂いがする。

 直高の血が騒ぐ、鬼がいるぞ、早く刀を手に取り、刀に鬼の血を与えろと・・・

 彼は呪われた刀の名を口にする

 「来い、羽左衛門ノ贄ノ夜叉」

虚空から護符に包まれた鞘に収まった刀が虚空から浮かびあがる。

 直高がが刀を手に取り、抜き祓うと、心の中が鬼への憎しみで満たされる。

 長い手が直高を掴み一気に天井へ引き上げる。

 彼は鬼の両足を刀で切り落とす。

 彼と鬼は一緒に床まで落ちる。

 鬼は切られた足が回復するどころか体液を吸われるように傷口が干からびていく、さらに激痛が走る

 「うおぉぉー」

鬼は叫ぶ、直高は怒りの形相で鬼に迫る。

 鬼は長い手を槍のように突いて来る。

 直高は易々やすやすと避けると鬼の腕を切り落とす、そして首をはねる。

 彼は鬼の頭を命令を遂行した証に持ち帰ることにする。

 そして、妻の秋ノ葉が待つ家路を急ぐ。

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