第20話 王女救出
「おのれえ、勇者どもがぁ。邪魔をするかあ!!!!!!!!!」
青筋を立てた男たちが怒声を上げる。
「当然です!」
毅然として勇者は言った。後ろに少女をかばうようにしながら。
「いたいけな少女を傷つけるようなまねは許しません!」
堂々と、まっすぐに男たちを見ながら。
「ぬかせ! 勇者だからといっていい気になるんじゃねえぞ!」
「後悔させてやるぞ!」
きっ、と勇者は相手をにらみつける。そして、
ざっ……!
「……」
勇者はいつの間にか移動していた。襲いかかってきた男たちがいた場所に。
逆に男たちは今まで勇者が立っていた場所にいる。
男たちには勇者たちが突然消えたように見えた。
「ちっ、逃げるのだけは早いみたいだな」
「今度は逃さねえからな」
そう言って振り返り、勇者のほうへと歩きだす。
そして、音もなく二人は地面に伏せるように体を横たえていた。
悲鳴も何もあげることなく、ただいつの間にか体が動かなくなって、地面に倒れ伏したのである。
もちろん、二度と起き上がってくることはない。
「他愛なし」
勇者はそう言って、剣を鞘へおさめる。
「おっかねー女だぜ」
「ひきますなあ」
「いやーん、勇者ったらこっわーい」
なお、他の勇者パーティーメンバーのリスと学者とツインテールは怯えていた。
「も、もう、皆さんったら!」
勇者は抗議する。
「そんなことより、ほら、この少女を」
言い終える前に少女が勇者の手を握った。
「勇者……様……やっと……会えた……」
がくりと気絶する。
勇者は受け止めながら、
「ちょ、ちょっと、大丈夫!?」
そう驚きの声を上げるのであった。
「なるほどねえ、家出少女ってわけかい」
半眼でバネッサは言った。もちろん、カノユキの言っていた通りになって、何だかなあ、という目である。何だか手のひらの上のようで気に入らない。
「す、すみません、突然押しかけてしまって! でも、急なことだったものですから、つい近くのバネッサさんの家に」
と、不機嫌な理由が突然押しかけたからだと勘違いした勇者が慌てて謝った。
やれやれとバネッサは憮然とする。面倒なので訂正などはしない。
「まったく、あたいらは仲良しこよしのお友達かいってんだ」
「違うの?」
イブキが素で返事をした。
もう一度バネッサは憮然とした。
「いいや、違わないさね」
そう言って、少女の前にかしずいた。
「こうやって家出少女を連れて来てくれたんだからね」
まーったく、何が家出少女だよ。王女殿下じゃあないかい! あとで絶対とっちめてやる!
「カノユキの奴め……」
「カノユキ様をご存知なのですか?」
王女は驚いた表情で言った。
「まあね。まったくあいつは、どういうつもりなんだろうねえ。事情もなにも全部お見通しってわけだったのかね。だけど、それならなんで自分でやらないのかねえ。こんな持って回った方法をとる理由がよくわからないねえ」
あいつは家出少女を探せと言いやがった。
んで、実際にうろうろと探索をしていたら勇者たちとばったり。近くのあたしたちの家にかくまうっていう流れになったってわけだ。
「やっぱり、なんだか手のひらのようで悔しいねえ」
どしんどしんと地団駄を踏んだ。
「まあまあ、そのおかげでこんなに早く王女様を匿うことができたんですから良かったですよ。ええと、カノユキさん、という方のおかげ、なんですよね? 感謝しないと」
勇者は困ったような表情をしながら言った。
「……えーと、ちょっと聞くけどあんたカノユッキーって知ってるかい?」
「えっ、もちろんですよ。漆黒の旅団のリーダーですよね。とってもかっこいい」
顔を赤らめながら言った。
(気づいてないのかい! 同一人物ってことに!?)
それがなにか?
い、いや別に。
(まあ、今はそれどころじゃないさね……)
バネッサは少し呆れながら口を開いた。ぼやぼやしている場合ではない。
「そんなことより、これからどうするつもりだい?」
その声に、勇者は、
「あっ、そうですね」
居住まいをただして、
「王女殿下」
そう言って、かしずいた。勇者のほかのメンバーもかしずく。なお、肩の上のリスはかしずかない。
「私は勇者『――――』。魔王を倒さんと立ち上がった者。この国に一体なにが起こっているのか教えてください」
「勇者様……」
王女は不安なような、泣きそうなような、それでいて未来に光を見たような様々な感情のいりまじった表情を浮かべながら問うた。
「言ったら」
「はい」
「言ったら、あなたは私を助けてくれるのか? この国の民草たちを救ってくださるのでしょうか?」
「はい」
にこり、と笑った。
「もちろんです」
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