第361話

ブチン。


何かが激しくブチ切れたような音がした気がした。


「あぁぁぁぁ!もぅ、ウダウダ考えるのもめんどくせぇ!」


ラグナからの事故によって若返ったフィリス。


その後いろいろあって学生生活を満喫する事に。


そして学園の仲間をラグナに託されたフィリスは、生徒達を陰ながら見守りつつ更に魔法師としての才能を磨き上げていった。


ラグナから託されたからと、我慢しつづけていたが……


「な、なんだお前は!!アイツを先に取り押さえろ!!」


急に叫んだフィリスを先に捕縛しろと兵士達に命令する部隊長。



兵士達もエチゴヤでないならと、先ほどの汚点とも呼べる命令違反を少しでも軽くできるならと我先にとフィリスへと向かって走り出すのだが……


「邪魔くせぇ!」


少女が自らの髪を掴むと地面へと投げ捨てる。


先ほどまで青い髪色の少女だったのだが……


今目の前にいる少女は燃えるような赤い髪色。


「あぁ?私とやろぉってのか?あぁん?」


キッとキツいつり目の少女がそんな乱暴な口調で言い放ってきた。


そしてすぐに兵士達は立ち止まる。


中には後ずさる兵士も……


それは何故か……


目の前には可視化出来るほど濃密な真っ赤な魔力が少女から滲み出ていた。


それを見た部隊長が恐怖にひきつりながら叫ぶ。


「バカな!バカな!バカなぁぁぁぁ!!貴様は!貴様は死んだはずだろう!?なんだその姿は!?何故その様な幼き姿となって生きているんだ!!」


その叫びに何人かの兵士が反応する。


燃えるような赤い髪。


性格が表れているあの強気の眼力。


そして可視化出来るほどの濃密な赤い魔力。


それを表す人物は一人だけ……


「ば……爆炎の魔女……」


兵士の一人がそう呟く。


「爆炎の魔女!?」


「う、嘘だ……死んだって聞いたぞ!?」


兵士達に混乱が広がっていく。


ボゥ、ボゥ、ボゥ


一切詠唱していないにも関わらず、フィリスの周囲には次々と火の玉が浮かび上がっていく。


フィリスのその姿に怯える兵士達。


そのフィリスが、ウィリアムを押さえ込んでいる兵士達を指さす。


「死にたいのか?」


「いやだぁぁぁ!俺はまだ死にたくねぇぇ!」


フィリスに指を指された兵士達はウィリアムを解放すると、そのまま恐怖に叫びだし走ってその場から逃走する。


「か、勝手に持ち場を離れるな!」


部隊長が兵士達にそう叫び逃げようした兵士の腕を掴むのだが……


「あんただけ戦えばいいだろぅ!爆炎の魔女が相手だなんて聞いてねぇ!」


と部隊長に掴まれている腕を振り解くと、そのまま他の兵士達同様に逃げ出してしまうのだった。


「お、おい!お前ら!逃げるなぁ!」


部隊長がそう叫ぶが、誰一人として戻ってくる者はいなかった。


そして残されたのは部隊長のみ。


フィリスがゆっくりと部隊長へと近づいて行く。


「く、来るな!」


「来るなだと?そっちから来た癖によく言うな?」


フィリスがゆっくりと一歩ずつ部隊長へと近寄る。


部隊長も一歩ずつ下がっていく。


しばらくその様な攻防が続いていると、


ガン!


部隊長の後ろにはフェンスが。


それ以上、下がることは出来ない。


「来るな……来るな……来るなぁぁぁぁ!」


怯える部隊長に対してフィリスは


「死ねやボケ!」


と周囲に纏っている火の玉を飛ばすのだった。

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