第24話
ぐるるるぅ。
流石にお腹すいたなぁ。
そろそろ動けそうだから起きようかな。
ゆっくりと目をあける。
部屋の中は真っ暗だった。
水を飲んで再び寝てから結構な時間が経過していたらしい。
部屋が真っ暗だ。
普通の田舎の村であれば夜になると安価で使用できる照明が無いので、お腹が空いたまま諦めて寝るしかないけど。
でもここは辺境の村。
村の外には魔物が多い。
つまり魔物を討伐すれば魔石が簡単に手には入る。
まぁその討伐がなかなか厳しいんだけどね。
領主も魔石を安価に手に入れたいが為だけに、こんな辺境の場所に村を作った。
辺境の村には似つかわしくないほど立派な防壁は全て魔石の為。
魔石は生活を快適にしてくれるエネルギー源。
部屋に設置してある照明は魔石交換タイプ。
いちいち蝋燭に火をつける必要もない。
照明のスイッチを押すだけで簡単に点灯するし。
都会やうちの村では水も魔石の力で井戸から汲み上げる。
暖かいシャワーも魔石。
料理をするコンロも魔石。
前世に比べると生活水準は落ちるかも知れないけど、魔石さえ使えるならばある程度の快適な生活環境は用意することが出来るからまだ良かった。
まぁこれが普通の村だと……
考えるだけ元現代っ子からしたらそんな環境、地獄でしかないけど。
その点に関してはこの辺境の村で良かったんだと思う。
さて部屋の照明でもつけてキッチンでスープでも温めるかな。
ちなみに我が家。前世で言う所の家の間取りは2DKになっております。
両親の寝室と俺の部屋。
あとはキッチンと食事を食べるダイニング。
風呂は湯船は無いけど魔石を使った温かいシャワー完備。
トイレは汲み取り式かと思いきや……
なんとトイレの底にはスライムさんが。
人が出した糞尿や生ゴミなどの処理をしてくれるみたいです。
但し……間違って落ちてしまった場合は最悪そのまま処理される可能性もあるとか。
特に子供は危険だからと母さんに口酸っぱく注意されたっけ……
あとはスライムのご飯は上記の通りなんだけど、長期間家をあける場合はスライムを処分しないといけない決まりになっている。
ご飯が無く飢餓状態が続くと頑張ってトイレから這い出てくる個体がたまにいるらしい。
トイレを脱出した後は家の中にある吸収出来る物をどんどん吸収してしまうらしい。
そして食べ物が無くなると家から出て外へ。
そのまま手当たり次第村人を襲い始めるなんてことも……
何事もノーリスクで安全にとは行かないものなんだね。
ちなみにスライムさん。
うちの村の周辺に簡単に居るので捕まえては行商人に卸して周辺の村で販売しているみたいです。
まぁ魔物が全く居ない村も結構あるみたいだからね。
とりあえずお腹すいたな。
ラグナはキッチンの照明をつけてスープの鍋を温める。
鍋が暖まるに連れて茸のいい香りが。
茸や山菜は前世の物よりも味が濃くて旨味が凄い。
初めて茸を食べたときにあまりの美味さに年甲斐もなくハシャいでしまうくらい美味しかった。
まぁ外見上は5歳だけど……
ハシャいだ姿を見て以来、母さんが茸を使った料理を作ってくれる機会が増えた。
そろそろ温まったかな?
茸のスープをお皿にすくう。
透き通るキレイなスープに茸のいい匂い。
では一口。
「美味しい。美味しいんだけど……」
もう少し塩味と香辛料が欲しい。
これにスパイス入れたら……
ごくり。
何となく両親の部屋の扉を確認。
部屋の電気は消えてるな……
改めて唾を飲む。
いいか。いいよね……?
スープの上に手をかざす。
「スパイス召喚。」
パラパラと掌からスパイスらしき謎物質がスープの中へ。
すぐに止める。
そしてかき混ぜた後一口。
「う、美味い。程良い塩味の中に感じる醤油。それにニンニクの香り。これはヤバいでしょ……美味すぎる……」
この世界に来てからは調味料と呼べる物は塩しか食べたことがない。
胡椒のような香辛料なら見たことあるんだけど。
「ふぅ、美味かった。」
まさかスープのお代わりしてしまうなんて。
この世界に転生してから初めての塩以外の香辛料。
これはヤバいな。美味すぎるよ。
絶対にバレるわけにはいかないよ、この能力。
これは創造神様が言っていたスキルってやつ?
スパイス召喚出来るスキルと収納スキルが俺のスキルってことかな。
やっぱりバレたら終わるな。監禁されて、スパイスを容器に出し続けて一杯になると収納で保管。
ある程度貯まると出荷。
うん。ラグナ工場の出来上がりだな。
絶対にバレたらアウトなスキルだよ。
でも。もしもだけど。
誕生日の祝いの時に食べた魔物の肉にこのスパイスをかけていたら……
よし。大人になったら冒険者になろう。
お金も稼げるし一石二鳥だ。
バンバンお金稼いで両親に恩返しもしたいしね。
それにしても。
「うーん……倒れた原因は何だったんだろう……」
「魔力欠乏症じゃないか?」
「魔力欠乏症?……って……父さん。」
スープを食べるのに夢中になって気がつかなかった。
声がした方に顔を向けると真剣な顔をした両親の2人の姿。
「なぁ、ラグナ。誕生日の日に何があった?何かあったんじゃないのか?」
「別に怒ってる訳じゃないのよ?ただ本気で心配なの。何か危ないことをしてないかって。」
「それは……」
「それにこの匂い。食欲をそそるこの香り。久々に香辛料の匂いを嗅いだ気がするわ。」
バレないように隠さないとって覚悟したばかりなのに……
どうやら早くもバレて覚悟は崩壊したようです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます