婚約破棄を受け入れたいのに、強気な彼に反対されて出来ません

第22話 女子同士の会話

「そうなんですか？今の流行のドレスはマダム・リュゼの作ったドレスなんですね？」

丸いテーブル席に座って食事をしながらリリーさんとジュリアさんの３人で最近流行りのファッションの話で盛り上がっていた。

「ええ。マダム・リュゼのお店はチェーン店になっていて、既製品ドレスも扱っていますし、オーダーメイドでも仕立ててくれるんですよ？」

ジュリアさんが詳しく説明してくれる。

「それじゃお２人が着ているワンピースドレスもひょっとしてマダム・リュゼのドレスですか？」

「そうなんです。最近はマダム・リュゼのお店でばかりドレスを購入しているんです」

「価格もお手頃だし、着心地も良くて最高なんですよ」

リリーさんとジュリアさんが交互に教えてくれた。

「マダム・リュゼのお店ですか…」

確かに２人が熱心に語るだけの事はある。リリーさんとジュリアさんの着ているドレスはシンプルなデザインでありながらシルエットが美しく、スカート丈も足首まででとても動きやすそうに見える。

「素敵なドレスですよね…背の小さい私でも似合いそうなドレスがあるかしら」

「ええ、勿論ですっ！」

「エイミーさんにもピッタリのドレスがありますよ」

ジュリアさんもリリーさんも大きく頷く。

「ありがとうございます。貴重なお話を伺えて良かったです」

笑顔で２人にお礼を言うと、何故かジュリアさんもリリーさんも頬を赤らめて私を見る。

「か、可愛い…可愛すぎます、エイミーさん！」

「まるで…天使だわ…！」

キャアキャアと騒ぐジュリアさんとリリーさん。どうも私は彼女たちに小動物的な？目で見られているような気がしてならない。けれど、良い事を教えてもらった。

マダム・リュゼのお店…。

よし、今日ドレスを探す店が決定した。トビーさんにマダム・リュゼのお店でドレスを選びたいと伝えるのだ―。

＊＊＊＊

　そして、時は流れ…。

　キーンコーンカーンコーン…

　本日最後の講義が終わった。結局、今日は１日アルトから逃げ続けて一言も彼と会話をしていなかった。

急いで片付をしながら私は一番前の席に座るアルトの様子をチラチラと伺った。

アルトは親友のジャスティンと何やら会話しながら片付けをしている。

よ、よし…今のうちにさっさと帰らなくては…！

カバンに全ての荷物を詰め込んだ時に、不意にアルトが私の方を振り向き、まともに視線がぶつかってしまう。

い、いけない…っ！！

私は急いでカバンを掴むと、まるで転びそうな勢いで教室を一目散に飛び出した。

今日はアルトにどうしても捕まりたくは無かったからだ。

貴族令嬢なんてお構いなしに、私は廊下を走り抜け…トビーとの待ち合わせ場所へと向かったー。