12、咆吼
北の支配者の中は、熱かった。
先端の亀頭からペニスが熔けてしまいそうな快感に、下がりそうな腰を持ち上げ、内側に擦りつけるたびに引き締まる尻の中をよくよく捏ねてやる。
口を縦にひらいて息を喘がせる頬にしゃぶりつき、唇を噛み合った。
シャワーの湯を出したまま招かれて、湯を浴びる肌を擦りつけ合いながら、手伝いたいんだろう?と目を細めるルスランの尻の穴に指を突っ込み、開く間も惜しんで、彼の手で猛らされた勃起を押し込んだ。
二人ともコンドームなど用意しておらず、潤滑ゼリーの代わりは、洗面台に用意されていた保湿剤だった。
曇る鏡にサファイアブルーの瞳は映っていないが、タイルの壁に手をつく彼の姿は、記憶をくすぐる。
どこに隠していたのか、どこから出してきたのかというような、
ペニスを咥えた尻を捩って弄び、腰から上を螺旋に振り返って、舌をしゃぶられる。不安定な身を支えるように頭を掴んだ指が頭皮を掻き回すたび、頭まで敏感になるようで、息がうわずった。
だが、指で開いた時から思っていたが、尻の穴は固い。
「ァっ、ぁグ、」
時折苦しげに呻く声が甘くなるのを辛抱強く待って、馴染まぬ腹の中を長いストロークで焦らしてやり。
ハ、と、声の混じる息をこぼすのが聞こえて、身体を離させ、両手を壁につかせ。
大人しく尻だけ突き出す腰を掴んで、掻き回すように穴を拡げ直してやる。
「久し振りですか? 最後はいつ?」
くぐもる声で何か罵倒しているのが聞こえて、苦笑いしながら、真っ直ぐ突く動きに変え。
「……いつ、……お前が、出ていったのは、」
喘ぎに紛れて途切れてしまう声に、少し、言葉を失う。
そうじゃない、元々そっちじゃなかったからだ。と、自分自身で自分をなだめ。
首を屈め、手ではなく腕を壁について額を擦りつけているのに、その背に唇を押し当てた。
「総執政長に就任した時ですよ。そんなに?」
舐め上げる背が揺れて、ルスランが笑ったのが分かる。
「来年50だぞ」
もどかしく互いを探るような呼吸が、ようやく合いはじめ。長く腰を引いて深く突き入れ、中を貫いてやれば、再び顎が上がり、上気した肌が震える。
「ハア…。自分が、あなたと同じ年になって、衰えてる自信がないな、」
息を弾ませ、犬のように腰を使って。
足りなくなる言葉を埋めるよう、二人して忙しなく漕いで競い、ルスランが先に果てる。
「――っ、」
あア!と、短く吼え、痛いほど締めつけてくる尻が、とろりと緩んで痙攣するのを待ち、自分の方を仕上げるために、身体が勝手に刻みたがるリズムに任せた。
敏感になった身体を弄られるのを嫌がり、時折身悶えながら、けれど彼はこちらを待つ。
遠慮なく深いところに射精して、額の裏が白くなるような短い目眩に耐え。
息を切らして波打つ胸を、相変わらず筋張った背に預けた。
手を伸ばして、壁についた彼の手を覆うように握り。巻き込むように指を絡めて返され、濡れた金髪に頬を擦りつける。
持ち直すのが早い。背中で押され、起こす身体から退く。
腰を引いて抜かれてしまい、名残惜しむようについ、手を伸ばして彼の腰を撫で。
振り返る彼の煙ったような笑みは、今まで見たことのないものだった。
「私に、こんなことの何が面白いのかを教えたのがお前なのは、確かだな」
思わず。背けた顔を片手で覆って隠す。
驚くほど、自分がどんな顔をしているか想像もつかず。けれど、耳が熱いのは、まずいと焦る。
シャワーを止める音を聞きながら、大きく息を吸って吐いて、笑っているらしい息の揺れを聞いて。
「ベッドに行こう。準備を手伝わせてやると言っただけなのに、しょうがないやつだ」
もちろん、返事を待つ気配はなく浴室から出て行く足音に、熱をそぎ落とすよう耳を擦った。
「……反則だっつう……」
うって変わって唸るような声に、歯噛みの音すら混じりそうだ。
「下衆め、」
ベッドの上で四つ足に這わせて、形の良い尻を両手でぱっくりと開かせ、穴を舐め、わざと音を立てて啜ってやる。
自分が出したところをよくも、尻の穴だぞ、などとぶつぶつ言っているのが聞こえて、急に喋るなあと笑いを堪える腹が少し震え。
「遊んでくれるんでしょ、」
ヒクつく穴を舌先で小刻みにくすぐってやり、垂れるほどになる唾液を音を立てて啜ると、向こうの方で上半身が崩れたのが知れた。
「アッ、――っ、ク、」
指で拡げて舌を押し込むと尻が揺れ、押さえつけながら抜き差ししてやれば、小さな悲鳴が耳に甘い。
押したり引いたりして逃げたがる尻を、喘ぎがすすり泣きの色を帯びるまで、そこばかり
ぐったりした身体を裏返して眺め下ろしながら、両方の足首を掴み、ほとんど吊り上げるように大きく開かせながら、再び押し入った。
ァゥ、と、細い声を上げたきり、投げ出されたままの身体を蹂躙する。
単調な、獣の律動で身勝手に彼を犯し、下がる眉に舌舐めずりしてしまう。
宙に浮いた碧い目は濡れて溺れ。
飽かず噴き出す種付けに、彼の身が小さく震えた。
放っておかれた
黒服だかSPだか使い魔だか知らないが、拉致しに来た男にまた連れ出される時には、既にネイハウスの姿はなかった。
女のような悦がり泣きが入って、もうやめてくれと繰り返すまで責め立てても、思い返せば、腰を使うのをやめはしなかった。
ほんとに遊ばれただけかもしれないと、頭を掻き掻きに自分の部屋に戻って。ついつけたテレビから、タイミングよく映し出されたニュースが飛び込んできて目を剥いた。
国際会議のために各国の首脳が訪れている、と、報じるアナウンサーを隅に切り抜き、次々に切り替わる、いわく各国の首脳達の姿の中。
飛行機のタラップを下りてくる、スッキリと背の伸びたネイハウスの無表情。
カルドゥワのネイハウス行政総長も今朝、と、続けるアナウンサーの声に、短い間言葉を失って。
「――嘘つきめ!」
何も信じられないような心地になって、笑ってしまった。
それで終わりだったのだと諦めがつくには何年もかかり。
それでも、出会った時の彼の年齢に自分の年が追い着く頃には、またすっかりテレビの中の人になったネイハウスにも慣れていた。
彼ほどではなくとも、変わったやつもいたし、短い恋もあった。
太ったんじゃないかとか、老けたなあとか、ネイハウスを見かけ、その姿に感想を呟く画面も、テレビからインターネットに移り変わり、定着しようという頃。
習慣を変えられない中年らしく、ネットを見ながらもつけっぱなしだった、テレビが報じるニュースが、耳を突いた。
カルドゥワが、隣国に軍を進め、首都を制圧しつつあるという。
「ハ…?」
テレビの真ん前に立って座ることも忘れ、ニュースに聞き入る。
対立する二極の政党が主導権を争う選挙が行われた隣国で、不正の疑惑を巡って起こったのは、当国によれば市民によるデモだが、カルドゥワ政府からは、軍事クーデターだったと発表された。
突然の事変に恐々とする周辺国や、咄嗟の統制を失う他の大国の反応を待たず、ネイハウスの命令で隣国は丸ごと押さえ込まれ、治安の回復のためとの建前で、瞬く間に軍と行政を封じられた。
「冗談だろ……中世じゃないんだぞ……」
歴史上、その顔ぶれが変わっても独裁政権が続くカルドゥワは、元より敵が多い。
各国でやり尽くした侵略の落ち着きと、発達しすぎた軍事力でかえって身動きが取れず、続いた長い平和の中でも、カルドゥワは常に自国周辺の動向に神経質だった。分かってはいたが。
規模の大小にかかわらず、各々の意図でたえず動く勢力図に、だがまさか、カルドゥワほどの力のある国が暴力で介入するなど、信じがたいことだった。
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