勇者に恋をしたモブな子爵令嬢、家を追い出されたので勇者を探し出して添い遂げますわ。~勇者は、長くて白い髪が特徴の美少女ですが。なにか?~
第17話 オークはすこし強かったみたい。ドロップ品をひろってみた、ですわ。
第17話 オークはすこし強かったみたい。ドロップ品をひろってみた、ですわ。
オークとの交戦。多大な力で振るわれる棍棒の強力な一撃を受け流し、繰り出される剣撃に放たれる電撃の魔法。
赤の勇者グレン達の連携は見事だわ。だけど――――、
鈍足な上に大ぶりの攻撃に、素早く小回りの効くナディアの数多の斬撃によって、次々にオークが倒れていく。
だから、オーク討伐には専門の冒険者がいるのね。
納得してしまうのは、それぞれの地面に転がるオークの数。
私も負けられないのよ。
スピー。
振り上げた棍棒を私に目掛け振り下ろそうとする、オークの鼻息。
「ショックボルトォォッ……」
振り下ろす前に手から転げ落ちる棍棒。
「からのぉぉぉおおっ」
私の華麗な剣撃が、オークの首を切り落とし、そのままオークが崩れ落ちる。
私も数では負けない。私だって意地って物があるわ、【魔物図鑑】で何度もオークとも戦って経験はあるのよ。でもやはりあの【魔物図鑑】での空間とは違い、地形は変わるし疲労はある。あの場では死なずに空間から離脱されるけど、現実はそうはいかないのよ。
だから、私は現実の経験を積み、それを証明する為に冒険者ランクの上位にいく。それを何度も心に言い聞かせるのよ。だって、アイリスに近づく1番の近道だしそれしかないの。
ナディアに警戒するオーク達が、標的にするのは1人の私でなく、赤の勇者グレン達に向かっていく。
「逃げるのかぁぁっ」
背を向けるオークを追いかけるナディアの斬撃が、足の遅いオークの背中に入りそのまま倒れる。
「ちょ、ちょっと」
一瞬私の姿をみるや、直ぐに赤の勇者グレン達へ視線を変える。オークの視線はエンレイ、フレイにシエンの赤の勇者の仲間である女性3人に向けられている。
はぁ? あの3人と私、何が違うの?
それに、オーク共私を見るその顔……どうもバカにしている顔だっ!
心の中に煮えたぎる怒りが、私を奮い立たせる。
背を向けるオーク共に浴びせる鋭く尖った小石の雨に、オーク共はよろけ私に反撃の意を見せる。
しかし、振り返るオークを私の剣撃が狙う。次々と胴や首を切断し死体が転がっていく。
ふふふ、見た事か……これぞ見た目で判断するなって事が分かったか?
だが、オークの行先は変わらない。
「マリベル。オークが……」
「やつら、私――――いや私とナディアよりもぉぉっ」
「えっ?」
「見た目を選びやがったぁぁ〜なぁっ!」
「多分違うと……」
鼻筋に力が入る。
あの3人、顔が良くスタイルも良い。だからオークは鼻の下を伸ばし向こうへ襲撃する。こっちの……ナディアは見た目は姉のシエンには負けるけど、可愛らしいの、でも仕草性格が野蛮――――ガサツなのよ。オークはそれを見透かしているのだわ。
だけど、なんで私は? はっ! 衣装が砂埃やらで汚れて、きたないのも分かるわ。でも見た目……見た目――――はぁ。
「マリベル、何ため息吐いているの? オーク、オーク」
「主人公側と脇役の事で」
「はい?」
「気にしないで、それは私がよく知っているわ」
私は再度剣を握りしめ、苛立ちを吐くように叫びながらオークへ剣を振るう。ナディアもオークへ襲いかかる。
狂気に身を任せオークの首根っこを私の斬撃が入る。
「マリベルッ!!」
ナディアの怒鳴り声に私は我に返り、地に転がるオークの死体に唖然となってしまったわ。
何体倒したのだろう?
「マリベル……まるで野盗のよう」
「人を見た目で判断したコイツらが悪いっ」
動くことの無いオークを睨みつけている私に近づくのは、赤の勇者グレンとその仲間である女性3人。
「まぁ、凄いわぁー。マリベル」
「うん。本当にスゴい」
「その剣撃、習いたいものだな。惚れ直したわ」
エンレイの言葉を耳にするフレアとシエンの鋭い目付きがエンレイに向けられるが、全く気にしてないエンレイ。
「そうだ。その実力確かに。さぁ、婚姻を結ぼうマリベル」
声を高らかに上げながら近寄ってくる赤の勇者グレンだけど、私は近寄ってくる度に離れグレンとの距離を保つ。
ミシミシ……、
まるで落ちた木の枝を踏みしめ鳴る音が、少しづつ近づいてくる。木に幹に捕まった手に見せてくる巨躯の姿。
「オーク!!」
「まさか、そんなっ」
「みんな、下がって」
エンレイの言葉に赤の勇者グレン達は、下がって行く。
「オーク、猪ぃぃぃっ!」
甲高い掛け声と共にエンレイは、盾を構える。
猪オークが振り下ろす図太い棍棒。
盾で受け流そうとするエンレイだが、猪オークの一撃は重く弾き飛ばされる。
駆け寄る赤の勇者グレンが、叫びながら猪オークに斬撃を浴びせ直ぐに距離を取ると、フレアの放つ無数のイシツブテが猪オークへ襲いかかる。
一撃を喰らい苦痛の表情のエンレイに、シエンは回復魔法をかけている。
ブッオオォォォッ!!
猪オークの咆哮が、森の中を駆け巡る。
怒りにかられたか目が真っ赤に染まり鼻息を荒く、地面を強く踏み込みながら徐々にグレン達に迫る。
グレンの剣撃に、フレアの魔法が猪オークへ止むこと無く攻撃が繰り出される。
「ちっ。猪……オークとは違うか」
呟くグレンとフレアは、攻撃の手を休めない。
豚のオークよりも猪オークの方が防御力は高いの。全身覆われた剛毛が、攻撃の力を分散してしまっているのよ。
苦戦をしいているグレン達。
怒り狂った目をしているが、口元が緩む猪オークが、棍棒を振り上げる。
「ナディアァァッ」
「とっりゃァァァっ」
猪オークの棍棒が、空を切る音を立て振り下ろされる。
ナディアはそれを剣で受け流しすと、その剣の刃が猪オークの脇腹を裂くと、その返しで太ももを切り裂く。
ブッ、ギャアァァァッ。
耳が痛くなる程の悲痛の鳴き声を上げる猪オーク。
剣を軽く振り、私は地を蹴る。
突撃する私を睨む猪オーク。その顔はゆっくりと地面二落ちる。
今まで傷や痛みを、負ったことないのかしら?
でも、これで終わりだわ。
カチン! 剣を鞘に収める良い音が響く。
猪オークの悲痛の鳴き声が、止まり首から大量の血を吹き出し地面へと崩れ落ちていく。
私の足元に転がる猪オークの死体とその傍らには、猪オークの悲痛な表情をしている頭が転がる。
「「「凄いわっ」」」
エンレイ達が驚く中、赤の勇者グレンは悔しさを隠しきれない表情をしている。それにエンレイやフレアが、何故か私に近づこうと歩み寄ってきていたが、グレンに呼び止められオークの解体を作業を渋々行っている。
ナディアも転がるオークの死体を解体していわ。
私はどうしたら……。
そう、解体した事ないし。
ソワソワしていたら踏みしめた足の裏から、『ジャリ』と金属のような何かを踏んだ音がする。
恐る恐る何を踏んだか見てみると、そこには……、
ペンダント?
ペンダントを手に取る。少し土が付いてしまった土を払うと、大きめの黒い宝石の中に揺らめく青い炎のような物。
そのペンダントを見ている私に、詰め寄ってくるエンレイとフレアにシエンが目を輝かている。
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