会話
男は頭を動かし、脳漿を垂れ流しながら、自分に刺さる矢を見つめた。余り驚く事ではなかった。ゆっくりと頭蓋骨を削っていく音は想像よりも煩いものじゃないらしく、グレネードよりはマシだと思いながら、男は死んだ。
「鹿谷、まだ生きてるか?」
青年は瞼をピクつかせ、返事をした。クロスボウを持った少女は寝巻き姿から着替えたばかりのようで、無地の白いTシャツを雑に着ている。
「それ….下は何か履いてるのか….」
「….持ち上げてやる、体を無理に動かそうとするなよ」
腰を持って担ごうと少女はしたが、大きな図体のせいもあってなかなか動かない。
「何キロだ?」
「..およそ100キロ」
「そりゃ動かない訳だな」
「….山井は死んだ」
「知ってる」
「……最期に一言」
「….」
「……..」
「言えよ! なんか!」
「好きだ」
「う、うん」
「あ、ちょっと待て、まだ全然喋れる。取り敢えず救急車を呼んでくれ」
少女はスマートフォンをシャツの裏から取り出し、電話を掛けた。
「え、今どうやってスマホ出した?」
「ここの裏地の部分に縫い付けてあるんだよ、ポケットが」
「便利だな」
「まあ、そうだな」
そのまま、青年は動かなくなった。瓦礫だらけの部屋に響く音は消えてなくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます