第6話

 そこに剣、腹部めがけて突き刺してくる。オルスは剣の上に乗り、さらに飛んだ。


 目の前に斧を両手で持った重装兵がいた。オルスの顔を叩き割ろうとする。空中で体を捻り、斧をかわした。地面に着地。


 次の瞬間、割れんばかりの拍手と、歓声が起こった。


 今度はオルスが駆け出す。すぐに聴衆は静かになる。初めは斧。斧は横に振ってきた。


 オルスは兜に向かって一気に突き刺した。体勢が崩れる。


 次にロングソードが縦に斬る。紙一重で横に避ける。鎧のわずかな隙間に向かって突き刺した。その場にうずくまる。


 最後に槍。オルスの顔に向かって突き刺す。


 オルスは軽く跳んだ。足元に、シールドが現れた。勢いよく跳んだ。市民達が、オルスの事を見上げているのが、はっきりとわかる。


 剣を両手でしっかりと持ち、槍の兜めがけて振り下ろした。槍は大の字になって倒れた。


 オルスは木剣を鞘に収めた。再び、歓声と拍手が起こった。勇ましい姿で、しばらく直立していた。


 その後、領主とともに観光案内をし、夕食はその都市一番の、レストランへと連れて行かれた。


 他愛の無い会話を続け、月が真上に来る頃に、ようやく解放された。


「それでは」


 領主に見送られる。ウラシュは、オルスと共に宿屋へと向かった。


「今日の出来はなかなかだった。毎回、あれぐらいの事をしてくれれば、心配ない。明日は移動だけだ。ゆっくりしなさい。では、おやすみ」


「ありがとうございます」


 オルスは自分の部屋には行かず、酒瓶を持って、仲間達のいる部屋へと向かった。ドアをノックする。


「どうぞ」


「今日は、お疲れ」 


 オルスが差し出した酒に、みんなは喜んだ。


「上等な酒じゃねえか」


「今日は、ありがとうな」


 テーブルに置かれたコップに、酒を注ぐ。乾杯し、飲んでいった。


「今日ぐらいの戦い方をしてくれと、ウラシュ様から言われた」


「まあ、この先も、上手くいけば良いけどな」


「でも、良かったよ。オルスが手加減してくれるか心配だったぜ。練習の時、何回気絶したか」


 みんなは笑っているが、オルス一人が、浮かない顔をしていた。


「どうした?」


「お前が口上しただろ。どう考えたって、俺一人じゃ倒せるわけねえよ」


 グラスの中に入っている酒を見ながら、オルスはつぶやいた。


「みんなで魔王を倒したんだよ。平和になると信じてさ。その途中で死んでいった仲間もいるんだよ。みんなで倒したんだよ」


 周りの者は、黙ってしまった。


「お前がそう思ってくれるだけで、嬉しいぜ。上が何を考えているかわかんないけど、とっと終わらせて帰ろうや」


「ありがとうな」


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