井戸の子
俺が小学五年の時の夏休みの話だ。
俺と仲のいい友人の間でちょっとしたホラーブームがあった。いろんな怖い話とか、怖いものとか、心霊写真とかにハマっていた。
それで俺たちはそういうのに飽きた頃に友人が、
夏休みに学校の後ろの山に肝試しに行こう
って言ってきた。
今思うと本当に危ないと思うが、当時幼かった俺たちは怖いもの見たさで行った。
夜に家をこっそり抜け出して、友達と合流して、朝には帰る。こんな計画を立てていざ
山に入った。
山の森は思ったよりもずっと暗く、沢山の木を飲み込んでいる暗闇のど真ん中にいた俺たちは手持ちの懐中電灯だけが頼りだった。
かなり怯えた俺に対して、友人は平気そうだった。元々そういうのには驚かなかったやつだった。だからこんなことを提案してきた。
噂の古井戸まで行ってみようよ
噂の古井戸と山にある一部の子供しか知らない古井戸だ。俺もその日行くまでは、話には聞いていたものの見たことはなかった。
少し歩いて古井戸の近くについた。懐中電灯で照らしたその井戸は木製の部分は壊れ、井戸の石の部分だけが残り、ツルが巻き付いており、子供が見ても明らかに異様な雰囲気を纏っていた。
俺は怖くなって帰ろうと友人に言った。友人も同じだったのか、俺たちはもといた道をたどって帰ることにした。
井戸から目を離した瞬間だった。
井戸の方向から小さい男の子の悲鳴が聞こえた。それに驚き、俺たちが振り返ったのと同時くらいに、何かが落ちた音がした。
物が落ちた音じゃなかった。そんな乾いた音じゃなく、もっと鈍い音が井戸の底から響いた。
幽霊だ
友人がそう言って、俺たちはパニックになり、一目散に自分の家に帰っていった。
数日後、登校日で学校に行き友人ともう一度あの時の子供について話した。本当に幽霊だったのかと。
俺たちはパニックになってわからなかったが、姿は見ていなかった。もしかしたら幽霊じゃなかったんじゃないか。その考えも、その日の全校集会で確信になった。
2年生の男の子が行方不明になったらしい。
行方不明になったのは3日前、俺たちが肝試しに行った次の日からである。
教室に戻って、友人と考えた。先生に言ったら、俺たちが夜家から抜け出したことや、夜の山に子供だけで入ったことがバレてしまう。
結局俺たちはただ、何も見なかったことにした。あれは他の何かだとして、当時は無理矢理自分を納得された。
あの出来事が起きてから早20年。社会人になっても俺は今まで誰にもあのことを言っていない。墓場までの秘密にしている。
ということは
もし友人も俺と同じで、誰にもこのことを暴露してないのなら
あの子は今でも井戸の底にいることになる
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