第69話
楽しい夕飯の後、シルヴァンエルフ兄妹は同じ部屋へと向かった頃、シリウスは一人で『魔物生成書~誰もが突っ込みたくなるかも知れないキャンペーン実施中!?因みに素材は召喚魔法及び自給自足で~』に幻獣辞書で調べながら、魔物構想を練っていた。
「うむ…。人面樹の果物系は何とかなりそうだ。人面樹の次は肉系としてコカトリス、ベビーモス、ボルドー、アルミラージ、ユニコーンになりそうだな」
ただ、言いたい。
材料だけが異様に可笑しいっての!
いや、生成方法も物凄く可笑しいか。
ふと思ったんだが、歴代の魔王さんが使用していた、生成書ってのはどうだったんだろうか。
同じってことはないだろうし、うーん。
気にしても無駄か。
それにさ?この本のサブタイトル、確かに突っ込みたくなるかも知れないって間違ってはいないし。
翌朝、朝からフリックは、どうしたことなのかずっと泣き崩れていた。
「ん?どうした?おチビちゃん」
俺はみんなの分の朝食を作るため、卵を使ったモノにしようとしている中、まだ、朝は早いというのに、泣きながらフリックが一人で台所に来たのである。
「ヒック……ヒック……シリウシュにーさま。にーさまたちをとめてほしーの…」
「ルシウスたちを?」
どうしたんだろうと俺はフリックを肩車にしながら、700階の700室へと向かったのだった。
「何度も言わせるな。フリックに魔法は俺が教える」
ルシウスは、まずはゆっくりと極々簡単な治療魔法から教えていきたいと言い放っていた。
「それなら僕の色魔法の方も簡単だよ。ルシウス兄さん!」
「いやいや。僕の生活魔法も!」
クレイスやマイラスも続いて言い始めた。
「俺の精霊魔法も捨て難いと思うんだけどなぁ…」
「精霊魔法なんか教えたら、また、あの時の二の舞になるだけだろ。レイオス」
「…確かにそうだね」
何やらフリックには言えない隠し事を彼らはしていた。
それに気付かずにシリウスは、漸くと700階の700室へと着いたのである。
「シリウシュにーさま…おねがいなの…ヒック……ヒック……」
「あ、ああ。分かった」
未だ泣き崩れているフリックに召喚魔法で、イチゴ味のキャンディーをあげながら、シリウスはドア前でノックしたのである。
「シリウスだ。中に入っていいか?」
入る前に礼儀ってのは大事だからなと俺は話で夢中だろうが、ノックしたのだ。
だが、彼らは話に夢中でノックに気付かなかったのだ。
「それにフリックの魔力の暴走が原因で、父さんと母さんが…死んだんだぞ」
「ひっ…!い…いや…あああああああああ!!!!!!!!」
ネイサスの発言をフリックは聞いてしまい、悲鳴を上げてしまったのである。
「ふ、フリック…」
「さっきの話を…?」
「すまない。一応、ノックはしたんだが………」
悲鳴を上げて思わずと魔力暴走し掛けたフリックを、シリウスは咄嗟に気絶させたのだった。
「そうか…。それは悪いことをしたな」
「お前たちの両親は…流行病じゃ無かったんだな」
「あ、ああ…。自分のせいで両親を…とフリックに言いたく無かったんだ」
ルシウスは、フリックを抱き上げながらベッドへと寝かし付けつつ言った。
「…それもそうだな。魔力暴走を抑える魔導具なんかを作れたら良いんだがな」
「それならば、中央大陸にある、魔導具専門の国クアルト共和国・マジックストーキョーに行けば分かるかも知れない」
何しろ、伝説の魔法使いフォルナと僧侶フィルカが生まれ育った国だからと生活に関する知識を得るために昔行ったことがあると、マイラスは言ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます