第55話
「な、何も…気絶させなくてもいいんじゃ?」
シリウスは、そんなフリックにそっと頭を撫でながら言った。
「正直にぬいぐるみが燃えてしまったことを伝えるべきだったと思うか?」
「うーん。確かにこの子を見ると、無意識に魔力を暴走しそうだ」
「そういうことだ。さっきの悲鳴も下手したら、暴走していたかも知れないんだ」
クレイスは、愛おしそうにフリックを見ながら返したのである。
「でもさ?そんなにこの子が大事にしていたモノならば、逃げる前に持って行かなかったのか?」
「それはそうだけど、住人を火が回っていない奥へと非難させることが精一杯だったんだ。夜中だったから余計だし」
「…それはすまない。確かに避難が一番大事だよな…」
「それにあいつらは、俺の魔法を無効化にする水の魔石に何か手を加えていたからな…」
ルシウスは、何とか話を終え、移住することを決意したハイエルフのみを集めて来たことから言った。
「水の魔石に何か…?」
「ああ。多分、何らかの力をダークエルフにさせていたんだと思う。ダークエルフは闇魔法を得意としているエルフだから。それと人間の国で、路銀を稼ぐために娼婦しているからな…」
「…そうなんだ。ルシウスって意外と物知りなんだな」
「まあな。昔は色々と見聞を広げるために人間の国に行っていたからな…。とりあえず、いつまでもここにいると危険だ。シリウス、お前のそのいるという…北方大陸へと案内してくれないか?」
「あ、ああ。分かった。その前に空間酔いとか大丈夫だろうか?必要ならば、乗り物酔い止め薬で効くかどうか分からないけど、事前に飲んでから行った方がいいと思ってさ」
瞬間移動魔法で行くからこそ、その際に生じる空間に酔ってしまったことがある、ネイサスやエリオスがいたから、念のためにとシリウスは聞いたのである。
「それもそうだな…。誰か不安なヤツ、いるか?」
ルシウスはそう言うと、ピンク髪のハイエルフが手を挙げたのである。
「ラビアンだけか」
「は、はい。初めての魔法なんで不安ですから」
ラビアンは、フリックの世話しているハイエルフの一人であることから、手を挙げたのだった。
「じゃあ…事前にどうぞ」
「は、はい。ありがとうございます」
乗り物酔い同様、事前に飲んでおくことで、少しは酔いは抑えられるかも知れないと思いながら、シリウスは、そのまま飲むタイプの乗り物酔い止めの薬を召喚魔法で出すと、渡したのである。
「意図も簡単に召喚魔法を使うとは…」
「さすがは大魔王ということは、間違いないということですね」
ルシウスとマイラスは、驚きを隠せずに言ったのだった。
「何だ?この文字は…」
ラグーン王国の地下内でデイルスは、フリックが寝起きしていた牢の中で見付けたのである。
「読めないな…。何て書いてあるのだろうか」
デイルスは、日本語で書かれた『平和ボケの国へ。フリックは頂いていく』のみ書かれた文字が読めず、カイシェイドにバレない内に次のエルフを狩りにいそいそとカーツたちと共に今度は南の大陸へと船で向かったのである。
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