第34話

「…コレは馬車の跡か。しかも、速の魔石を使っている…」

レイオスは、森から東へと向かうが、ふと土の跡を見ながら呟いた。

なぜに東なのかというと、良く集落にいる時もフリックは東の方へと行く癖があることをレイオスは見ていたからである。

それ故にスーレシア王国は南西にある国だということは、まだ幼いフリックの頭の中から消えていたようである。

「どうだ?レイオス…」

「…!ネイサス兄貴にエリオスかよ」

気配も無く2番目の兄、ネイサスが現れたことから、咄嗟にレイオスは身を構えるものの、相手を見て溜め息を吐いたのだった。

「かよじゃないだろ。ったく…こうなった責任はちゃんと取るんだろうな?レイオス」

「…ああ。で、エリオスはなんで一緒に来たんだよ。ちゃんと兄貴たちに伝えろって言っただろ」

「伝えたから来たに決まっているだろ。レイオス兄さんだけでは、万一とフリックの治療は出来ないからね」

「まだ、フリックが怪我とかしていると決まった訳では…」

「それでもだ。それにお前のことだ。魔法連発し過ぎて魔力が切れた時は使い物にならん」

そのためにも剣の使い手である、ネイサスは、ルシウスに言われてフリック捜索に来たのだということであった。普段は冷静沈着だが、大事なフリックのことになると、それだけになってしまうのである。

「…兄貴だってフリックのことになると、周りが見えなくなるじゃないか」

「大事な妹なのだから仕方ないだろ。レイオス」

言い合いしそうになる中、エリオスはふぅと溜め息を吐いた。

「レイオス兄さん、ネイサス兄さん。早くフリックを探しに行かないともっと大変なことになるよ」

「…あ、ああ。そうだな」

「…エリオスの言う通りだな」

まずは、麓の村を当たるしか無いようだと思いながら、フードを被ると共に人間の村へと彼らは向かったのである。







「ふぅ…やっぱりスライムの方がおちつくのー」

何とかリーベルタース城へと戻るなり、スライスは人間形態からスライムの姿へと戻るなり言った。

「人間形態時とスライム時は口振りが全然違うんだな…スライス」

未だドッと精神的な疲れからなのか、なかなか起きそうにないミレイをシリウスは抱き上げながら、余りのギャップに戸惑いつつ言ったのである。

「そうかなぁ?どっちもホントのぼくなのー」

「ああ。それは知っている。ただ、余りにも違うから戸惑っただけだ…気にするな」

「うん。分かったのー。じゃあ、ぼくね?そーこで木の枝をせんべつしておくのー」

そうスライスは、また、人間形態になると、人面樹に適した木の枝を選別するために、城の西側にある倉庫へと向かったのである。


何だかスライム形態時のスライスをぷにゅぷにゅというか、もにゅもにゅというかというような衝動にシリウスは襲われながら、ミレイを部屋まで運んだのである。






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