第32話

「ふぅ…木の枝はこれ位でいいかなぁ」

シリウスは、人面樹を生成する際に必要となる木の枝をまとめながら言った。

「いえいえ。まだまだ数は要りますよ。シリウス様」

「そ、そうか?ってスライス。何万本、集めているんだよ?」

「ザッと今の所1000万本…ですかね。ミレイ殿はどうです?」

「うーん。持っただけですぐに『バカ』とか『間抜け』って枝に言われて…もう…嫌」


どうやらさっきの木の枝のように、ミレイが持つだけですぐに暴言を吐いた挙げ句に消滅してしまったらしい。

相当、前世では容姿に恵まれなかったんだろうなぁ…と俺は思った。

それ故になかなか容姿が整っている、ミレイが妬ましいと思ったんだろうな…。

だからといって…嫌味を言って良いってことはない。

人に言って良い事と悪い事はある。

自分が言われて嫌なことは、相手に絶対に言ってはいけないし、自分は良くても相手が嫌ならそれもまた、言ってはいけないのだから。

そんな当たり前のことが分からないまま、前世で人を…ってしたのではないか?とふと思ったのである。


「どったの…?シリウスさん」

「い、いや。何でもないさ。ミレイ、無理しなくても先に車の中に戻ったらどうだ?」

「う、うん。そうだね。ここにいると、足手まといだね…あたし」

「そんなことはないですよ。人には向き不向きってあるでしょうし、ミレイ殿も素敵な所がありますから」

真顔でスライスは言うものの、それを聞いたミレイは頬を赤らめながら、何も言わずに先に車へと戻ってしまったのである。

「お前、良く…そんなクサい台詞を言えるな…」

「そうですか?それにしても、人面樹っていいですよね。コレで野菜と果物は何とかなるんじゃないですか?」

「そうなのか?スライス」

「ええ。人面樹は、今では野菜や果物を生み出してくれる魔物ですから」

「へぇー…そうなんだ。意外と物知りだな…スライス」

「普通ですよ。僕だって知らないことはいっぱいあります」


そんなこんなで、スライスと一緒に木の枝は、ザッと1億は超える数を生活魔法である≪ストー≫で収納すると、リーベルタース城へと名付けている城へと戻ることにしたのである。






「ひっく…ひっく…ボク…ボク…もう…にーさまたちのいりゅ…おうちにかえりちゃいの!」

今は霧の中で覆われている、ラグーン王国の一番下の地下にある牢へと連れ出された、唯一のシルヴァンエルフのフリックは、もう泣き出す寸前になっていた。

6人いる大好きな兄の一人、レイオスの話に惹かれるまま、好奇心から勝手に一人で森を飛び出した結果がコレなのである。

「大丈夫。コレからたっぷりと兄さんたちと遊んであげるからね…」

「ううぅ…」

そうデイルスに言われるまま、上から吊るされている枷で、フリックは両腕を上げられてしまったのである。





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