第30話

「その辺に転がっている木の枝…ぷっ!」


流石のミレイもコレには、笑いの壺に入ったようだ。

後から襲って来る、思い出し笑いってのは、こういうことを指すのだろう。

別に面白いかどうかは人それぞれだけどさ?

中には、つまらん!って感じで、渇!を即座に入れるだろうけど。


「とにかくと少しばかりと俺はその木の枝を拾いに出掛けるが、ミレイ。スライムと一緒にここに残るかい?それとも一緒に来る?」

「うーん。どうしよっかなぁ…」

ミレイは、ただ今は飛び跳ねたりと甘えたりしている、スライムを見ながら考えた。

『ぼくも行くの!』

さっきまで言葉を発することすらしなかった、スライムはぴょーんと小さな体を大きく飛び跳ねながら言った。

「おっ!付いて来るか。スライム」

『スライムじゃないもん!スライスだもん!』

「そ、そうか。じゃあ…スライス。来るか」

『うん…!』

そうスライスと名乗ったスライムは、移動しやすいように人間形態へと姿を変えたのである。

「う、うわ…凄い」

「あ、ああ…まるで別人だな…」

男である俺ですら驚愕する程の美青年へとスライスは、姿を変えたのだ。

「どうも、元・スライムのスライスです。宜しく」

「あ、ああ。こちらこそ宜しく」


な、成る程。

材料にイケメンのカツラが必要なのは、このことだったんだな。

ってつい…挨拶を返してしまったぞ。


「じゃあ…あたしも一緒に行こっかな。ここに一人だけいてもつまらないだけだし」

「分かった。ぞろぞろと歩くのは何だかな…よし。ここは車を召喚するか」


前世では俺、一応は車の免許はあるだけだったな。

身分証明代わりに持ち歩いているだけで、実際問題はペーパードライバーそのものだ。

だから…久々過ぎるんだよな。

なんかこう…自動運転が出来る車でも…。


「車の運転なら僕がしますよ。シリウス様」

「そ、そうか。ありがとう」

ここはスライスに甘えるかと思いながら、俺は好きな色合いとして、青系の車を召喚したのである。

「やっぱり…すっごいな。シリウスさんの召喚魔法」

まだ何一つと召喚することが出来ないミレイは、憧れの目を向けながら言った。

「そ、そうか?」

「だって…バシバシと魔法を使いこなしてるもん。あたしはまだまだ風魔法のウィンドを何とかって感じだけだし、他の風魔法は点で駄目だし…レベルが足りない証拠なんだろうけど」

「後で僕が魔法の特訓に付き合ってあげますよ。ミレイ殿」

「い、いいの?スライス」

「ええ。構いませんよ。僕も一応、一通りの魔法は使えますので」

「…色々とすまないな。スライス」

車の操縦からミレイの魔法の相手までとシリウスは、すまなそうにしながら言ったのである。

「別に気に遣う必要はありませんから。そのためにも僕がいるのだから」


別に豆腐を材料に遣っているからと、豆腐メンタルってことは無さそうだと俺は思いながら、スライスの運転の元、その辺に転がっている木の枝を拾いに向かったのだった。








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