第7話
「フィルカ、やるわよ」
「ええ。フォルナ」
フォルナとフィルカの双子の姉妹は、アネットが時間を稼いでいる間に詠唱を始めたのである。
「「我は願う。世界に絶対なる平穏を…パーフェクト・オブ・ピースト・ワールド」」
フォルナとフィルカは、平穏の時代を生み出すために魔王の始祖が残したという魔法を同時に唱えたのである。
「ううぅ…な、何だ…コレは…?何だというのだ…?こ、心が…洗われていくようだ……………」
例え、異世界であろうとも、集団いじめで受けた苦痛は並大抵ではないことから、あんなにも人間を始めとする種族を滅することしか頭になかった、アリシア・リノベイションは、心のどこかが洗われていくような感覚に陥りながら、虹色の光に包まれるようにしながら、光の中へと消えていったのである。
「ふぅ…終わったわね」
「ええ。ただ、勇者様だけが…」
「別にいいんじゃないの?元からやる気ない勇者だったんだし…」
きっと来世では余りろくな人生を歩むことはないだろうしとアネットは、剣を鞘へと仕舞いながら言った。
「それもそうだね。さてと…私たちは後世に残す本を書くわ」
「ええ。後世には私たちが使うような魔法はもう必要ないですものね。発音も変えなきゃね」
そうフォルナとフィルカは、新たなる目標を見付け、アネットも故郷を再建するためにジャパニーズ・キャッスルを後にしたのである。
そして、魔法使いフォルナと僧侶フィルカによって、何万年にも渡る魔王との戦いの終止符が討たれてから、実に5万年という長い年月が流れた。
世界は、ソルディア・カオスティック・マジフィニクッスからソルディア・カオスティック・マジフィニクッス・ピーストという剣と魔法と平和による世界が流れ、いつしか、勇者と魔王の存在はすっかりと忘れ去られ、人々の中で欲という感情が持ち始めたのである。
聖龍暦100000年6月5日、平穏な時代が続くこの世界に絶滅危惧種と化してしまった魔族として、大魔王シリウス・リノベイションが誕生した。
「あー…!ここは…?」
俺、山田爽太郎は、状況確認を始めた。
そういえば、俺はあの抽選BOXで、大魔王シリウス・リノベイションとして新たに転生したんだっけ?で、種族は魔族って聞いたような気がするけど…?
「って…何だ!?俺、スッゲーイケメンさんになっていませんかね!?声もイケメンボイスになっているし!?」
前世と全然違う容姿じゃないか!
目の前にある姿見をチラッと見ただけの感想だけど。
確かに色々と転生特典で、やたらと多く聞いた気がするけど、盛り過ぎだろ。
まあ、後でゆっくりと自分の容姿をみるかな。
とりあえず、無事に異世界へと転生したみたいなので、コレから何しようか考え始めたのである。
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