殺したがりの天才少女は 自身を殺人鬼の生まれ変わりだとのたまっている

井上 竜

序章

序-0

「これが、次の事件です」


 担当の刑事が、分厚い紙束を、プレジデント・デスクに置いた。


「同じものを、メールでも送ってあります」


 スプーンを刺したバロットを脇に置き、引き寄せた束をめくる私に、刑事が続ける。


「今回のは、かつてないまでに、『難解な殺し』です。さすがのあなたでも、無理かもしれません」


「ご、ご冗談を」


 かすかな頬のほてりを感じながら、鎮痙剤ちんけいざいの瓶に手を伸ばしつつ、刑事に応える。


「この私を、だ、誰だと思っているのですか?」

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