第八話 我が家で
俺とイアは、我が家に到着した。
「ただいまー! 母さん」
「お邪魔します」
俺は勢いよくドアを開けて家に入った。
奥からセーラがでてくる。
「おかえり、ロエル。ご飯はもうできてるわよ」
セーラは妊娠中なので薬師の仕事を休んでいる。それ故にほぼ一日中家にいるのだ。
「今日もイアを連れてきたけど、大丈夫だった?」
「あら、まあ一人分くらい足りるわよね。
イアちゃん、遠慮なく食べてってね」
「ご馳走になります」
そして、俺たちは食卓についた。
セーラが台所へ料理を取りに行った。
俺とイアも手伝うためについていく。
「あら、手伝ってくれるの? ありがとう」
俺はスープを、イアはパンを、セーラはサラダをもち、食卓に並べた。
「「「いただきます」」」
俺たちは食事を開始した。
「今日はどこに行ってきたの?」
「領主様の館です」
「えっ!? また何か事件を起こしたんじゃないでしょうね」
事件起こしてたら保護者呼ばれるだろ。
「今日は違います。実はあそこに滞在している方の弟子になりまして、訓練しに行きました」
「あら、それならよかった。イアちゃんもそうなの?」
「あい」
イアがパンをほおばりながら頷いた。
「それで、誰の弟子になったの?」
「アレクシア・ホルザーク様です」
「えっ?」
セーラが呆けた顔をした。
「アレクシア・ホルザーク様です。なんでも剣聖でラーラスの剣で四大公爵の一人なんだとか。かなりすごい人ですよね」
「えー--!? ロエルとイアちゃんそんな方の弟子になっちゃったの!?」
「ええ、やっぱり結構有名な方なんでしょうか」
「有名も何も、ラーラス南部をまとめる大公爵様よ! しかもその実力はラーラス最強。東の賢者、北の守護者、西の将軍みたいな他の四大公爵と比べてもずば抜けて戦力が高いわ。負け戦もあの方が参戦するだけでひっくり返せるの。都市を襲った龍をソロで討伐したなんて話もあるわ」
すっごい早口。
そうとうすごい方なんだろうな。
「へ~そんな方だったんですね。そりゃ勝てないわけだ」
「勝てないって、戦ったの!?」
セーラが口を大きく開け、目を丸くした。
「ええ、昨日ですが」
「ロエルすごかったよ。 剣を光らせたと思ったら氷をばあああってやって、石をどどどどってやって、それでも師匠が倒れなかったから光の線をどー-んってやったり、竜巻をおこしたり、剣を爆発させたりしてた。最後には頭を叩かれて気絶しちゃったけど」
イアが身振り手振りで説明してくれた。
「…………」
セーラは固まっている。
「……まあ怪我がなくてよかったわ」
ははは。
「でも、さすがはロエルとイアちゃんね。これはダラスに話した時の驚く顔が楽しみだわ!」
ん~~驚くだろうけど落ち込みそうだな。俺に剣を教えるの楽しみにしてるっぽかったし。
「今、領主様の屋敷にそんなすごい人が滞在してるのね。今度挨拶に行こうかしら」
「……母さんは妊娠中なんですから大人しくしててください」
そして、俺たちは食事を終えた。
「では、また外に遊びに行ってきます」
「ごちそうさまでした」
「気を付けてってね」
俺とイアは玄関から一度外に出た後、すぐに家の裏に回る。そして、隠し扉を開き、地下研究所に入った。
「今日はどんな魔法をするの?」
「ちょっと訓練の最中に試したいものが浮かんでね」
俺は、土魔法で実験場に大きな土壁を作った。
そして、懐からナイフをとりだし、風魔法をかける。
カタ……カタカタカタカタ
だんだん振動が伝わってきた。
もっと小さく、もっと速く……
カタカタカタカタ……ビー―――ン
音が変わった。なんかいけそう。
俺は、ナイフを土壁に突っ込んだ。
ナイフは抵抗なく土壁に吸い込まれていく。
成功だ。
「?」
イアが不思議そうな顔で首をかしげてこちらを見てくる。
「なにしてるの?」
「ナイフに魔法をかけて切れ味を上げたんだ。ほら」
俺は小さな石を作り出し、それをナイフで切った。石は豆腐のように真っ二つになった。
「ええ!?すごい!?どんな魔法なの?」
「風魔法に振動をおくるやつあるだろ。イアがフレイに使ってたやつだ。あれを超小さく、速くしたものをナイフにかけるんだ。とりあえずやってみな」
俺はイアにナイフを渡した。
「えい!」
イアが魔法をかける。
ガタガタガタガタ
ナイフが揺れだした。
「いいぞ、もっと小さく、速くするんだ」
カタカタカタカタ……パ―――ン
「キャ!!」
ナイフがイアの手を離れ、俺の顔の横をとおり、後ろの壁に突き刺さった。
俺の頬を冷や汗がつたる。
あっぶね!!!
「わあああ大丈夫!?ロエル!?」
「……まあぎり当たらなかった。大丈夫だ」
「本当にごめん……」
「とりあえずやるならただの薄い板で練習しなさい」
「はい……」
そしてイアは薄い石の板で練習を始めた。
その間に俺は他の魔法も試す。
まずは火炎剣。
適当に作った石の棒に火魔法を使い、火をまとわせる。これは結構簡単ですぐに成功した。
雷剣も同じ感じだ。
まあ生成場所が武器の上ってだけで基本魔法とほとんど変わらないからな。闇属性でも付与して効果時間を延ばせば簡単に成功する。
次はビームソードだ。剣の先端からビームをだして射程を延ばすのだ。
これも結構簡単だった。発射場所が棒の先端ってだけで普通のビームと変わらない。というかわざわざ剣からビーム撃つ必要ないな。
まだイアは超音波ブレードの練習をしていた。ときどき板を吹っ飛ばしている。
後は魔石で剣を作る練習してるか。
そして、時間が過ぎていき、外を見れば太陽が西の空に沈みそうだった。
この日俺は百何十本もの剣(?)を作ったが、納得のいくものは出来なかった。
イアの方も何度かアドバイスをしたが結局成功できなかった。
やっぱり、繊細な魔力操作は難しいらしい。
どちらも練習あるのみということで今日は別れた。
その日の夜、帰ってきたダラスにセーラは俺が剣聖の弟子になったことを報告した。
ダラスは馬鹿みたいな顔で驚き、その後ちょっと残念そうな顔をした。やっぱり俺に剣を教えたかったらしい。まあさすがに剣聖には勝てない。今回は諦めて生まれてくる弟か妹まで我慢するんだな。
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