第107話
「ようやく手に入れることができたわい。これが例の石か……確かに物凄い魔力じゃのう」
そんなマーグリスのことを全く気にすることもなく、手に持った紅い石を眺めながらそう話すギルバート。
「おい、テメェ何のつもりだ。いったい何が目的だ?」
その状況についていけなかったグレイがギルバートへと剣を向けながら声をかける。因みに先ほどのマーグリスの身体が崩壊している間にスタミナポーションを飲んで体力はある程度回復させている。
「おう、お前さん油断はいかんぞ。それに儂の目的が知りたいなら――」
ギルバートがそこまで喋った瞬間
「質問に答えないならすぐに死ね」
グレイはギルバートへと踏み込んで剣を振るう。
「うおおっと!」
それを手に持った紅い石を落としそうになりながら回避して距離をとるギルバート。
「ええいせっかちな奴め、会話中にいきなり斬り掛かってくるとは……危ないであろうが! お前さんが石を一つ破壊してくれたおかげでもうこれしか残っとらんのだぞ!」
そう言いながら大事そうに紅い石を自身のマジックバッグへと仕舞うギルバート。
「はん、その紅い石自体がテメェの目的か」
「カカカ……まぁそれだけ、というでもないがの。のうお前さん、『賢者の石』というものを聞いたことはあるか?」
「『賢者の石』だぁ?」
マーグリスを睨みながらそう返すグレイ。
「大昔の、それこそまだ魔王と呼ばれる存在と人が戦争していた時代に作られた『生きている石』とも呼ばれる兵器の一つじゃ。お主も気付いたであろう? あの石が心臓のように脈打っていたことを。周囲の魔力を糧に様々な奇跡を生み出すことができると言われておる。魔王との戦争が終わった後に『賢者の石』の取り扱いについて幾つかの国で小競り合いもあったそうじゃ。戦争を終わらせる為に作った兵器を巡って戦争を起こす……人間とは愚かな生き物じゃのう」
「……そんな大層なもんがなんで
「さあの。それについて奴は他の信者にも語らなんだし、どういった経緯で身体に埋め込んだかについては儂は全く興味がないからのう。本来、他者のスキルの宿った部位を移植するというのはかなり無理のある行為じゃ。奴はいくつものスキルを自身に取り込んだ代償に身体にとんでもない負荷が掛かっていた様での、この『賢者の石』で常に崩壊する身体を再生し続けていたみたいじゃの」
聞いてもいない情報までべらべらと話すギルバートに訝し気な視線を向けるグレイ。いつもならば話している最中にでも斬り掛かるのだが
(……もしかして
そう考えて少し語らせることにした。本音をいえばすぐにでも殺したいとは思っている。さっさと終わらせて子供たちの待つ家に帰りたかったし、コダール孤児院組の子たちとうまくやれてるかどうかも気になっていた。
(まぁ、うちの子たちは当たり前として、アレスもいるし、ミアもルルエコも他の子も良い子たちだから大丈夫か)
「のうお前さん、儂と一緒に来ぬか? 正直、お前さんはここで殺すには惜しい……お前さんならあ奴等も文句は言うまい。ああ、あの女冒険者も連れて行って良いぞ。一緒に居た聖騎士どもは生かしてはおけぬが……あの二人は少々厄介な相手じゃが儂とお前さんが組めば……」
「……あ?」
突然のギルバートの申し出に眉間に皺を寄せて不快感をあらわにするグレイ。そして
「行くわけねぇだろうが。突然寝言を言いだしやがって……そんなに眠いなら今すぐ永眠させてやる」
その申し出を言い終わる前に蹴ってから剣を構える。そんなグレイを見てギルバートはため息をついて心底失望したような表情になった。
「やれやれ……あの少女の父親といいなんでこうも聞き分けがない奴等ばかりなんじゃ」
――――――――――
今話題の(敵を)殺し尽くし系お父さん
「くっくわわー♪ くわっくわー♪」
カモノハシスーツを着たステラは、イスカとフィオお手製の買い物かごを片手にご機嫌な歌? を口ずさみながら頼まれたじゃがいもを買いに出かけていた。皆からはかなり心配されて止められたが、どうしてもとステラに言われて一人でお使いに行くのを見守るしかなかった。……まあその少し後ろからグレイがハラハラしながらコッソリついてきていたのだが。
グルルルル……
ステラの前を塞ぐようにこの近所では狂暴で有名な野良犬(雄)が立ちふさがる。
「く……くわー! くわー!」
そんな野良犬(雄3才)相手に必死に買い物籠をぶんぶん振って威嚇するステラ
自分より弱そうな獲物からなにか食べ物を奪ってやろうと考えていた野良犬(雄3才雑種)だったが、そんなステラの後ろで殺気を放つ鬼(お父さん34歳)が居ることに気付いた。
死ぬ。殺される。
くーん
野良犬(雄3才雑種死にたくない)は次の瞬間にはお腹を見せて降伏のポーズをとった。
「……くわ?」
命乞いを始めた野良犬(降伏済み)を見たステラは自分に恐れをなしたと勘違いしてニンマリと笑い、わしわしと思う存分野良犬をもふってからお使いへと戻るのであった。
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