第17話


 イスカ達は長いこと風呂に入ってなかったのでなかなかに汚い。他の客の迷惑にならないよう公衆浴場で金を多めに払い個室の風呂を用意してもらう。


 心情はさておき、こういう時やはりマナー大事だ。服屋に行く前に体は綺麗にしとかないしな。


 俺、イスカ、ラッツの三人と、アリアメル、フィオ、ニナ、ステラの四人に別れて風呂に入る。


「ラッツ、頭を洗ってやるから座れ。イスカはラッツを洗った後だ」


 クク…一度やってみたかったんだよ、こうして親子で風呂に入って洗いっこするの。


 素直に座るラッツに恥ずかしがるイスカ。しかし何だかんだで洗わせてくれるイスカは良い子だ。


 因みにアリアメル達の風呂はかなり長かった。女の子だし仕方ないよな。


 アリアメル達が風呂から出てきた後でアリアメルとフィオが二人して謝ってきた。別に気にする必要はないんだが…ニナとステラのことも洗ってくれてたんだろうし。



 服屋で俺を見て怯える店員に子供達の服を何着か見繕ってもらおうとすると、子供達に俺も一緒に選んでくれと言われた。


 自慢じゃないが俺にファッションセンスはないぞ。可愛い服とか言われてもよくわからないし。


「おとーしゃん! ふりふりおひめしゃまみたい!」


「ああ、うん」


 フリルのついた服を着て嬉しそうに俺に見せにくるニナ。うん、可愛い。


 …困ったことに何を着ても可愛いという感想しか出せない。


 さっきまで怯えていた筈の店員が生暖かい視線を向けてくる。

 くそ、何か恥ずかしい。



 新しい家に着いて中に入るとイスカ達は驚いていた。まあそうだろう、昨日まで住んでた小屋とは違うからな。


「凄い…」


「ここが私達の新しいお家…」


「パパ、探検してくるね。ニナ、ラッツ行こ」


「おとーしゃんいってくるね!」


「気をつけてな」


 二階へ上がっていくステラ達。一階から探検すればいいのに…。


「個人部屋は二階だ、早い者勝ちだぞ?」


「私は…最後でいいです」


「遠慮する必要はないんだぞ。……家族なんだからな」


「ええと、そういう訳じゃ…」


 歯切れの悪いアリアメル。

 少し寂しいが…我儘を言ってくれるようになるには時間が必要だな。


 結局部屋割はフィオ、イスカ、俺、アリアメルの並びで決定した。ニナ、ステラ、ラッツはまだ小さいので寝る時は俺かアリアメルの部屋で一緒に寝ることに。

 こんなこともあろうかとベッドは大きめにしておいた、抜かりはない。


 部屋はまだあるし、三人が一人部屋が欲しいというまではこれでいいか。


 あとは…この世界にも12歳から通える学園がある。ただ将来的に役に立つかと言われるとかなり微妙だ。

 貴族の子供同士が交遊を深めるのには使えるだろうが……つまりそういう場所だ。

 試験では一般枠と貴族枠は分けられているそうだが、入学してしまえば同じ教室だ。


 何が心配って。


 アリアメルやフィオが貴族のガキに無理矢理関係を迫られたり、イスカが嫌がらせをされたりしたら間違いなくその貴族を殺しに行ってしまう。

 別に心は一切痛まないし、どんな手段をもってしてもその家は潰す。でも態々その可能性があるのに学園に通わせる必要はないか…。


 あと、貴族は横の繋がりがあるから一つの家と敵対すると芋づる式に敵が増える。

 そうなれば流石に他国へ亡命するしかなくなるな。


 そこまでのことを踏まえても俺は殺る、間違いなく。


 そういえばイスカ達には将来の夢とかあるんだろうか? あるなら当然応援するが…それも何時か教えてくれるだろう。



 その日の夜、俺の部屋には何故かニナ、ステラ、ラッツだけではなくイスカ、フィオ、そしてアリアメルが集合していた。

 何でも今までずっと皆で寝ていたから、一人だと逆に寝れないらしい。しかし幾ら大きなベッドとはいえ全員で寝るのは厳しい、なので結局部屋の床で寝ることにした。


 ……これじゃあんまり小屋の時と変わってないな。



 おやすみ、皆。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る