第13話 クロージングに向けて②

 あれから数か月がたった。


 講師が言っていた、

『クロージング(=結婚式・婚姻届け)まで気が抜けない』

 は、本当だった。


 まず、私の両親が大騒ぎを始めた。


 これまで、早く結婚しろ、結婚しろとせかしてきたくせに。

 いざ結婚しますと報告しただけで、もう取り乱しちゃって。

 相手は誰だとか、どこで出会ったとか、どのくらい付き合ってるのかとか。


 まあ、今まで何も報告しなかった私も悪いんですけどね。


 彼は、私の実家にあいさつに来た時、本当にガチンコチンに緊張してたわね。

 わるいとおもいつつ、少しおかしかったわ。


 私が彼の実家に挨拶に行ったときは、私がガチンコチンだったわね。

 でも、ご両親ともに温かく迎えてくれて、歓迎してくれて本当にうれしかった。


 彼とも相談して、結納とかは省略。


 結婚式と新婚旅行の計画で盛り上がり始めたころ……ちょっとした異変に気付き始めた。


 ま、いいか。それもまた人生。


「ねえ、せっかくだから、婚活講座の先生に結婚式の割引チケットもらいに行ってこようと思うんだけど」


 そういうと、彼も快諾してくれた。


 ……


 こうして、私は数か月ぶりに講座に戻ってきた。


 この日は第2クールの初回講座だそうだ。


 教室の前で講座が終わるのを待っていると、私に気付いた講師が講座が終わってもいないのに部屋へ私を呼び込んだ。


「お久しぶりね。OGとして紹介させて」


 講師はニコニコの笑顔で、第2クールの受講生に私を紹介した。


「この人は、第1クールを首席で卒業した人です。すごい活躍だったわ」


 そんな活躍したっけ?でも、ま、ちょっとうれしいかも。


「セックスは毎日とかいうし、速攻で実地監査(セックス)クリアしちゃうし……」


 どっと受講生から爆笑が起きる。


 えー?第1クールだけでなく第2クールでもいじられるとは思わなかったわ……恥ずかしくて帰りたいよぉ


「でも、それだけ努力をしたということね。しっかりと婚約を獲得できてよかったわね」

「はい、おかげさまで」

「で、結婚まで行けそうなの?」

「はい。それで、結婚式の割引チケットをもらいにきました」

「まあ、それはおめでたいわね。みなさん、ぜひ彼女のようにしっかりとがんばって婚活を成功させてくださいね」


 第2クールの受講生はこれからの講座に不安と期待を抱えている。

 そんな彼女たちから祝福と羨望のまなざしを浴びて、なんか照れるなあ。


「ところで……ちょうど、今、クロージング前に統合作業をするとこをガンジャンピングと言うんですよ、ダメですよ、って話をしてたんだけど……あなた、ひょっとして」


 あ、講師が私のお腹を見ている。

 やばい。やっぱり、ばれましたか。


「あの、まあ、その、彼のガンがジャンピングしちゃったようで……」


 講師のあきれた表情……


「……ほら。いわんこっちゃないでしょ……みなさん、この方のようにはならないように、十分に気をつけるように」


 えー、いいんだもん。ちょっとだけ、早めにできちゃっただけだもん。ほぼ予定通りだもん。

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