第3話 IM
「ターゲット要件が定まったら、それに合う候補を探し始めますが、候補は待ってても会いに来てくれません。こちらから探す必要があるのです」
講師の瞳がきらりと光る。
「M&Aの場合、インフォメーションメモランダム、通称IMを作ります。これは、売り手企業による企業紹介書のことです。婚活で言うならば、自己紹介書面です」
なるほど、M&Aでも自己紹介書面から始めるのね。
私も婚活サイト「アイン」に自己紹介文を載せているから、同じ感じね。
「でも、あなた方が今アインに載せている自己紹介は全然ダメダメです。今日はみっちりと見直してもらいます」
あちゃー、やっぱり素人の自己紹介なんてダメダメなのかぁ……
「M&Aでも興味を持ってもらいたいなら、まずはしっかりアピールをする。それがIMです。婚活においても、自己紹介では自分の素敵な部分をしっかりアピールしてください」
「はーい」
「でも嘘は書いてはいけません。必ずどこかでバレます」
受講生みんな、どこかに自己紹介文に自信がなかったんだろう。
私と同じく、みんなも素直に返事している。
ところで……
「で、どのような内容を書くといいのですか?」
私の質問を受けて、なんだか講師の目がきらっと輝いた気がするよ?
「M&Aの場合は今までの自社の概要や事業内容、業績や財務状況、そして将来の事業計画」
教師は左右に歩きながら記載事項を説明している。
「婚活の場合も同様。自己紹介、経歴、現在の職業、資格、趣味、得意なこと……婚活の場合は今までの自分の恋愛経験と将来の自分の恋愛計画」
「え?恋愛経験まで書くんですか?」
思わず、声をあげてしまった。
講師がこっちを睨む。
やばい……
「当たり前です。あなた、スリーサイズは?」
「え、えっと、86、59、70です」
「……サバ読んでる?」
「読んでません」
生徒のクスクスという声が聞こえる気がする……
どういう意味よ、失礼な。
少ししかサバ読んでないわよ。
「まあいいわ。で、これまでの経験人数は?」
「え?そんなことまで?……たぶん、10人くらい」
「ふーん、経験豊富なのね」
また、みんなの笑い声が……もう、何よ、毎回セクハラ質問!
「でもまあ、赤裸々に経験10人なんて書いちゃうと相手もドン引きするから、きちんとオブラートに包んでアピールすることね」
爆笑の渦に包まれる。
……だったらなんで細かく聞いたのよ?
この後も散々ダメ出しを食らいながらも、ターゲット要件とIMの作成し終えた私たちは、それをアインのプラットフォームに再登録し、第1回講座が終了した。
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