第278話 プロパガンダ演説
『ふむ、では、簡易量産型は十分使い物になるということか。』
レギオンを水攻めにして倒した後、水晶玉を通して兵士たちは竜都の王宮で玉座に座っている小型化したリュフトヒェンに戦果の報告を行っていた。
単に水に流されただけでは、溺れることのないレギオンは流された後で再生する可能性もあったが、堰は大量の木々で構成されていたため、そこから流れた大量の木材がレギオンの肉体に次々と突き刺さっていったのだ。
まるでハリセンボンのように無数の木材が突き刺さったレギオンは再生は不可能だったらしい。
ともあれ、魔導高射砲が廉価版であってもレギオンたちに有効であることは十分に確認された。
戦争間近であるからこそ、有効な武器が一門でも多く生産しなければならない。
『よし、許可する。金の問題は心配しなくていいからバンバン量産してくれ。
あと、この事実を竜都や国内に広めてくれ。その後、我が皆の前で演説を始める。』
戦争のプロパガンダ10の法則というものがある。
簡単にいえば「我々は戦いたくないが、敵が卑劣で強大であるからこそ、自衛のために戦う」という論調にもっていくことだ。
現代社会では陳腐な論調だが、陳腐でも有効的だからこそ多様されるのである。
ならば、自分もそれを行うしかない。
リュフトヒェンは、竜都に存在する大広場にいつものような小型化した姿ではなく、通常の竜の姿に戻って天に向かって咆哮する。
その純白の神竜の威容に、人々は注目の目を向ける。
『聞くがいい!我が国の人々よ!我らが愛する竜皇国に、神聖帝国の作り出した怪物どもが侵攻を開始した!我らは戦いは望まぬが、敵はこちらに構わず怪物たちの大群を率いてこの地を蹂躙しようとしている!これを諸君らは許すのか!否!断じて否である!!』
『この地を守護せし竜として、この地を怪物どもの住処にするわけにはいかない!!
立ち上がれ国民よ!この地を、愛する人々を!大事なものを怪物どもに蹂躙させる訳にはいかない!武器を持って戦え!大事なものを守るために!!
我は、最後の最後まで諸君らとともに戦うことをここに誓う!!
諸君らの力を我に貸してくれ!!』
そのリュフトヒェンの言葉に、民衆たちは大歓声を上げる。
愛国心をくすぐり、邪悪な敵から身を守るために戦う。それは彼ら国民にとってこの上ない大義名分だった。
確かにそれは事実ではあるが、それは国民や兵士たちを死地に追いやり、大量の死者を出す結果にもなるだろう。
だがそれでもやらなければならない。ここまで築き上げてきた自分の国を、あいつらに蹂躙させるわけにはいかないのだ。
リュフトヒェンは再度戦う事を固く決意した。
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