第233話 魔導高射砲の水平射撃。
「ははは!見ろ!あいつら竜機の結界に手も足もでないぞ!このまま蹴散らしてやろうぜ!!」
辺境伯ルクレツィアが作り上げた陣地を、悠然と四足歩行状態のノーム・ニクス号は重々しい音を立てながら踏みにじっていく。
当然二足歩行状態にもなれるのだが、兵士たちの運搬もかね、さらに砲撃からの前面投影面積も下げて当たりにくくするために四足歩行で陣地を進んでいるのである。
砲兵からの通常砲弾や魔術弾の砲撃も、百発百中というわけではない。
使い魔の着弾観測を上空から行っても、当たらないときはある。
そして、当たったとしても、結界を傘のように展開し、砲撃を防いでいるニクス号にとっては問題はなかった。
「油断するな……というか振り落とされるなよ。俺たちは無理矢理ニクス号にしがみついてるだけなんだからな。優雅な座席とかないんだぞ。」
砲撃が炸裂している中を平然と歩んでいる(結界には砲弾の音で耳が潰れないための防音機能も存在する)非現実的な状況に興奮しているのか、肩に乗っている兵士は興奮ぎみに言葉を放つ。
「大丈夫大丈夫!あいつらこっちの結界を突破できないんだろ!
だったら問題ないっ……。」
その瞬間、肩部に乗っていた兵士の一人が文字通り血煙となって吹き飛んだ。
粉微塵どころの騒ぎではない。
肉片すら残さず消滅してしまったのである。
「……は?」
その予想外の出来事に、背中に乗っていた兵士も呆然とする。
そんなバカな。今まであれほど激しい砲撃でも結界で守られていたはずだ。
それがこんなに簡単に突破されるはずがない。
その彼の思考は、ノーム・ニクス号に直撃した高速の魔術弾が命中した余波と装甲の破片によって中断させられることになった。
「よし!命中ですわ~!!続いてあのクソッたれどもに連射ですわ!!」
そう言いながら、剣の切っ先をニクス号に突き付けているのは辺境伯ルクレツィアその人だった。
そして、彼女の傍には、本来セレスティーナが航空竜機迎撃用に開発された魔導高射砲がその銃口をニクス号へと向けていた。
そう、ルクレツィアは本来対空用に使う予定の高射砲を水平発射して、こちらに迫りくるノーム・ニクス号に向けて発射したのである。
大口径魔術砲であり、同時に高速で動く航空機に対抗するため高速の弾速を求められたこの砲台は、当然のごとく威力も増大している。
そのため、普通の砲弾で弾き返せる結界も、その高速の弾速の魔術弾を防ぎきることができずニクス号の結界を貫通してしまったのだ。
首部にまともに結界を貫通した魔術弾を受けたニクス号の装甲は激しく破壊され、そこからの猛烈な破片は上に載っていた歩兵、竜機随伴兵たちに大きなダメージを与えていた。
ぎぎぎ、と被弾したニクス号の一機は何とか動こうとするが続けての魔術弾の二射目によって木端微塵に砕け散ることになった。
「ざまぁみやがれですわ!!続けていきますわよ~!!」
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