第3章 三日日前半 第1話 化野村

 朝食と身支度みじたくを終えた小春たちは、出発の準備をしていた。神山村は、朝の時間帯なら夏でも、そこまで気温は上がりにくい。暑く無い時間帯に最寄りの稲荷橋駅まで行き、そこから化野ダムに行けば、十分にダム底を見る時間が確保できる。

「さぁ、そろそろ出発よ!」

「忘れ物はないな?」

 準備を終えた秋奈と夏代が、小春と冬華に訊いた。

「できました!」

「これで私も大丈夫」

 小春と冬華が、それに答える。

 これで出発の準備は、整った。

「早くしないと、気温が上がってくるかもしれないから、今のうちに駅まで行こう。そこからバスかタクシーで行けば、ダム底を見る時間は十分取れる」

「すいません。本当はおじいちゃんに車を出してもらえば、良かったのですが……」

 健一に駅まで送ってもらうのは、無理だった。今日も道の駅に惣菜やお弁当を納品しなければならないため、時間が合わなかったためだ。さらに車はミニバン一台しかなく、光代は運転免許を持っているが、車は持っていない。小春たちにとって残された手段は、自分の足で歩く以外に無かった。

「小春、気にしなくても大丈夫だ。世話になってばかりというのも、なんだか申し訳ないからな」

「そうだよ! それにたまには運動しなくちゃ!」

 夏代と秋奈は、動きやすい服装になっている。靴もスニーカーで、ウォーキングをする気でいるように見えた。

「冬華ちゃんも、大丈夫?」

「大丈夫です! ダムカレーのためですから!」

 冬華の一言に、小春は吹き出しそうになる。ダムカレーに対する執念は、この四人の中で最も強いかもしれない。

「それじゃ、行くわよー!」

 秋奈が云い、小春たちは客室から出て階段を下りていく。階段を降りた先にある正面ロビーで靴をいていると、光代が洗濯物を満載した洗濯カゴを持って現れた。

「小春、化野ダムに行くの?」

 昨夜、小春から化野ダムに行くことを聞いていた光代は、確認するように小春に尋ねる。

「うん! 写真撮ってくるから、待っててね!」

「そうかい。お昼もダムで、ダムカレーを食べてくるんだったね。気を付けてね」

「行ってきます!」

 光代に元気よく云った小春は、紅楽荘を飛び出していった。



 紅楽荘を出た小春たちは、数日前にミニバンで通った道を辿り、最寄りの稲荷橋駅に辿り着いた。後はここからバスかタクシーを使えば、化野ダムに行くことができる。

 そう信じて疑わなかった小春たちは、駅にあるバスの時刻表を見て、愕然とした。

「えーっ、バスが一時間に一本だけ!?」

 秋奈が叫んだ。時刻表には、バスが来る時間が表示されているが、一時間の中に一本しか表示されていない。そしてその貴重な一時間に一本のバスは、つい先ほど出発してしまっていた。

 都会のバスに慣れた小春たちは、一時間に一本のバスに戸惑いを隠せなかった。こんなに少ない本数のバスで、どうやって移動するのだろう。

「困ったね……」

 冬華が腕を組んだ。

「バスが無いなら、タクシーを呼ぶ?」

「そうなるけど、駅前にタクシーが停まっていないよ?」

 冬華が提案したが、秋奈は駅舎から駅前のロータリーに目を向けて、そう呟いた。駅前にはタクシーはおろか、自動車一台、人ひとり見当たらない。

 小春は、空を見上げた。先ほどまで照り付けていた太陽が、厚い雲に少しずつ覆われかけている。

 なんだか、辺りがとっても静かだ。夏になると、いつもうるさいほどの、セミの鳴き声がする。しかし、今は全くといっていいほど、セミの鳴き声が聞こえてこない。聞こえてくるのは、友達の話す声と、自分たちの足音だけ。

 少し、嫌な予感がします……。

「タクシーを呼ぶ電話とか、無いの?」

「……あったぞ!」

 夏代が、タクシーを呼ぶための専用の電話機を見つけた。

「じゃあ、タクシーを呼ぼうよ!」

「よし、分かった!」

 秋奈の言葉にうなずいた夏代が、受話器を取って耳に当てる。

 しかし三十秒ほどしてから、夏代は受話器をそっと、元の位置に戻した。

「ダメだ、繋がらない」

「回線が混み合っているのかな?」

 冬華の問いに、夏代は首を振った。

「いや、違う。ずっと、呼び出し音が鳴り続けているんだ。いつになったら繋がるのかなんて、想像もできない」

 変だと、小春は思った。タクシーを呼ぶ電話は、コールセンターに繋がるはずだ。真夜中でもない限り、電話が繋がらないなんてことは、あり得ない。過去にも一度、タクシーを呼んだことがあったが、すぐにコールセンターに繋がった。

 一体、どうしたというのでしょう?

「そうだ!」

 小春は、スマートフォンを取り出した。

「おじいちゃんに、連絡してみます!」

「でも、小春ちゃんのおじいさんは、今は道の駅じゃないの?」

 冬華が問う。

「おじいちゃんは、業務連絡のために、いつも携帯電話を持っています。きっと、私からの電話でしたら、出てくれるはずです!」

 スマートフォンを操作し、健一の電話番号を押した。

 電話の呼び出し音が、鳴り始める。

「小春ちゃん……」

「きっと、出てくれます……!」

 小春はそう信じて、呼び出し音に耳を澄ませる。

 しかし、どういうわけか電話が突然切れてしまった。

「そんな……!」

 信じられない、といった顔で小春はスマートフォンの画面を見つめる。

 電波は立っているのに、なぜ繋がらないのか、理解できなかった。

「繋がらないなんて……!」

「おかしいな。電波障害でも起きているのか?」

「でも、朝のニュースでもそんなことはやっていなかったよ?」

 不審がる夏代に、秋奈が答える。

 確かに、皆さんで朝食を食べながら見ていた朝のニュースでは、電波障害のことは報道されていませんでした。それならば、リアルタイムで起きているのかもしれません。

 小春はスマートフォンを操作し、SNSを開こうとした。しかし、どういうわけか通信中のままで、SNSを開くことができなかった。

 一体、どうしたというのでしょうか?

 こんなこと、これまで生きてきて初めてです。



 その時、遠くから汽笛が聞こえてきた。どうやら、列車が来るらしい。

 列車の汽笛に反応するように、小春たちは駅のホームへと出て、汽笛が聞こえてきた方角を見つめる。遠くから、列車がこちらへ近づいてくるのが見えた。

『まもなく、列車が参ります。危険ですから、黄色い線の内側まで、お下がりください。まもなく、列車が参ります。ご注意ください』

 自動アナウンスが、列車の接近を告げる。

 列車はホームに入ってくると、スピードを落としていき、小春たちの目の前まで来て停車した。列車の行き先表示には『化野』と書かれていた。

「ねぇ! 化野に行く列車だって!」

 秋奈が行き先表示を見て、叫んだ。化野ダムに行こうと思っていたのに、足となる手段に困っていた小春たちにとっては、まさに渡りに船だった。

「もしかしたら、臨時列車かも!」

 冬華が云う。

 ドアが開き、乗り降りが可能となる。

「他に移動手段も無いし、これに乗って化野ダムに行こう」

「さんせーい! 早く乗り込もう!」

 夏代の言葉に、秋奈が賛成した。秋奈が最初に列車に乗り込み、それに夏代、冬華が続いた。しかし小春は、突然やってきた列車に、少し戸惑っていた。明らかに、神山村を訪れるために乗った列車と、見た目が違っていたからだ。

 どこからどう見ても、列車そのものが古いものだった。全体が茶色に塗られていて、乗り降りするドアは中心にしかない。戦争を描いたドラマに出てきたものと、そっくりだった。それに、先頭の一両しかない。こんな列車を見たのは、初めてだった。

「小春ちゃん、早くしないと出発しちゃうよ!」

「はっ、はいっ!」

 秋奈から急かせられ、小春は反射的に列車に飛び乗った。小春が乗り込むとほぼ同時に列車のドアが閉まり、列車はゆっくりと動き出した。

 列車は少しずつ速度を上げていき、化野ダムがある方角へと向かって、走り出した。



 ガタン……ゴトン……。


 小春たちが乗り込んだ列車は、神山村の中を走っていた。

「ちょうどいいタイミングで、電車が来て良かったよね~!」

 秋奈が云い、夏代や冬華が頷く。

 座席でくつろぐ三人をよそに、小春は車内を見回していた。列車の座席は、背もたれが木でできている。床も壁も、同じように全て木製だ。網棚はあるが、金属製ではない。天井には車内灯があるが、これもデザインが最近のものとは思えなかった。このような古い列車には、これまで一度も乗ったことが無い。列車で神山村に来たことは何度かあったが、こんな古い列車なんて無かった。

 この列車は、いったい何なのだろう。

 まるで、映画の中にでも迷い込んでしまったみたいだ。

 小春がそんなことを考えていると、車内放送が流れてきた。

『お待たせいたしました。次は、神山。神山です』

 秋奈の声が聞こえてきた。

「わっ! 駅が見えてきた!」

 前方に駅が見えてくる。すると列車全体にブレーキが掛かり、列車はスピードを落とし始めた。駅が近づいてくると、さらにスピードが落ちていった。そのままホームに入っていくと、やがて列車は停車した。

 小春がホームを見て駅名を確認すると、駅の名前は『神山』だった。列車のドアが開いたが、乗る人もいなければ、当然降りる人もいなかった。

 不思議なほど、その時間は静かだった。

 すぐに列車のドアが閉まり、列車は再び動き出す。神山駅が後ろへと遠ざかっていき、列車は再び、神山村の中に敷かれた線路を走っていく。

『お待たせいたしました。次は、橋渡。橋渡です』

「それにしても、私たち以外には誰も乗っていないですね」

 冬華が、列車の中を見回して云った。

 列車の中には、都会の電車のようにロングシートの座席がある。しかし、人が座っているのは、小春たちが使っている座席だけだ。

「車掌さんか誰か、乗っているんじゃない?」

 夏代が、列車の後方に目を向けてそう云う。後ろの車掌室の様子は、見えなかった。本来なら見えるはずの貫通ドアの向こう側は、ススか墨を塗ったように、真っ黒だった。

「見に行く?」

「いや、いいです……」

 秋奈の問いに、冬華はそう答えて遠慮した。

 そんなやり取りをする三人をよそに、小春は窓の外の景色を見ていた。外の景色は、小さい頃から何度も見てきた、神山村の景色だ。どれほど時間が流れていったとしても、この景色は昔から変わらない。

 すると、列車の外に広がる田園風景が、少しずつ下へ下へと移動し始めた。驚いた小春だったが、すぐにその理由が分かった。風景が下に移動したのではなく、列車が高台へと移動しただけだった。そのまま列車は森の中に敷かれた線路を走りだし、やがてトンネルへと入っていった。

 トンネルの中を走っていると、再び車内アナウンスが流れてきた。

『まもなく、橋渡はしわたし。橋渡です。お降りの方は、お忘れ物のございませんよう、お気を付けください』

 列車がスピードを落とし始めると同時に、トンネルを出た。トンネルを出た先には橋があり、橋を渡り切った所に無人駅があった。駅名看板には『橋渡』と書かれている。

 なるほど、橋を渡った後にあるから、橋渡駅なんだ。小春がそう思っていると、列車がゆっくりと停車して、ドアが開いた。ドアが開いても、乗り降りする乗客はいない。すぐにドアが閉まって、列車は再び動き出した。

『次は比良坂ひらさか。比良坂、です』

 抑揚のない車内アナウンスが、再び次の駅名を告げた。

 この列車は、本当に化野ダムに連れていってくれる臨時列車なのだろうか。小春はまだ不安だった。

 最寄り駅に到着したら、何か車内アナウンスで案内があるのだろうか? 皆さんは化野ダムに向かっていると信じているみたいだけど、私はまだそうだと思うことに迷いがある。私の中で、何かが違うと否定している。

 すると、列車が大きく揺れた。列車の先頭が少し傾き、外の景色が少しずつ沈んでいく。進む方向に向かって、地面が少しずつ上がっていることが分かった。

「ねっ、前を見て!」

 突然、秋奈が前方を指さして叫んだ。指さす先には、駅があった。坂の途中に駅があるなんて、小春も知らなかった。

『まもなく、比良坂。比良坂です。お降りの方は、お忘れ物のございませんよう、お気を付けください』

 車内アナウンスが流れ、列車がブレーキをかけてスピードを落としていく。ホームに列車が入ると、そこで列車は止まった。

 そこまで来て分かったが、駅がある場所だけは、地面が平たくなっているようだった。列車の先には、先ほどまでとは違って下りの線路が見える。ここから先は、下り坂になっているみたいだ。

 ドアが開いたが、乗り降りする乗客はいない。再びすぐにドアが閉まって、列車は動き出した。そして途中で、同じように堂入どういり駅という駅でも停車したが、全く誰も乗り降りすることなく、列車は走り出した。

 列車はどこまで進んでいくのかと、小春たちが思い始めた時だった。

『次は終点、化野あだしの。化野です。ご乗車、誠にありがとうございました』

 車内アナウンスを聞いた夏代が、口を開いた。

「おっ、やっと終点か」

「しかも駅名が『化野』だなんて、やっぱりこれは化野ダムに行く列車だったんだね!」

 秋奈の言葉に、冬華も頷いた。

「そうだね。きっと、もうすぐダムカレーが食べられるよ!」

 三人は、もうすぐ到着するであろう化野ダムのことで、いっぱいになっている。そんな最中、小春は先ほどの車内アナウンスで、これまで感じてきた違和感に気づいた。

「あ……ああ……!」

 思い出してしまいました。神山村の中を走っている列車の終点は、化野ではありません。本当の終点は、ずいぶん前に通り過ぎました、神山駅です。決してこの先に待っている、化野駅ではありません。そもそも化野駅なんて名前の駅は、これまで一度も聞いたことがありません。

 化野駅だけではなく、他の駅も同じです。神山駅から先の駅名は、どれも聞いたことがありません。

 この列車は、私の知らないところに向かって、進み続けているのです。行き先は、化野ダムなどではないと、私は思いました。

 皆さんは、まだ気づいていないみたいです。

 ならば、気づいた私が皆さんに伝えなくてはなりません!

「あ、あの……!」

 小春は三人に向かって、口を開いた。

「小春?」

「小春ちゃん、どうかしたの?」

 夏代と秋奈が、小春に顔を向ける。冬華は未だに、ダムカレーのことで頭の中がいっぱいになっているようだ。宙を見つめながら、目をキラキラさせている。

「私、気づいちゃったんです」

「気づいたって、何に?」

 夏代が訊いた。

「……この列車の終点は、神山駅なんです!」

 一瞬、小春以外の三人が目を丸くしたが、すぐに元の顔に戻った。

「小春ちゃん、嘘云わないでよ~」

 冗談だと思っているらしく、秋奈が笑った。

「神山駅なら、もうずっと前に通り過ぎたじゃない。なら、途中にあった駅は?」

「これを、見てください」

 小春はスマートフォンを操作して、画面を三人に見せた。画面には、小春たちが乗っている列車の路線図が乗っている。アプリではなく、小春が稲荷橋駅で撮影した、写真だった。紅楽荘に毎年のように来ていた小春は、路線図を写真としてスマートフォンの中に保存していた。

 そしてその路線図に載っている終点の駅の名前は、神山駅だった。

 それを見て初めて、三人は小春が嘘を云っているのではないと悟った。幹線の通っている駅から分岐して伸びたローカル線の駅名は、神山駅が最後で、それ以降は無い。何度確認しても、神山駅が終点で間違いなかった。

「じゃあ……今、私たちが乗っているこの列車は……?」

「……おい、よしてくれ。怪談話は、紅楽荘に来た最初の日に、やったじゃないか」

 冬華の言葉に、夏代がそう云った。冷房が強いわけでもないのに、夏代はガタガタと震えていた。そういえば、この列車には冷房はおろか、扇風機さえついていない。それなのに、夏のうだるような暑さは、全くといっていいほど感じられなかった。

 やっぱり、この列車はおかしい。存在しないはずの駅で度々停車し、存在しないはずの終点に向かって走り続けている。

「橋渡、比良坂、堂入……全て存在しない駅名です。詳しいことは分かりません。しかし、私たちの乗っている列車が、どこか分からない場所を走っていることは事実です!」

「じゃあ、終点は――」

 秋奈が云いかけた時、列車の速度が落ち始めた。

 そして同時に、車内アナウンスが流れ始める。

『ご乗車、誠にありがとうございました。まもなく終点。化野、化野です。お降りの際は、お忘れ物のございませんよう、お気を付けください。なお、この列車は到着後、車庫に入ります。ご乗車できませんので、お気を付けください。ご利用くださいまして、誠にありがとうございました』

 車内アナウンスが終わり、さらに列車の速度が落ちてくる。終点がすぐ間近に迫ってきていることが、よく分かった。

「ちょっと、外を見て!」

 秋奈が叫び、窓の外を指し示す。

 列車の外には、見たことのない村の景色が広がっていた。そしてその景色は、小春たちにとって見たことが無いようなものだった。

 目に映る全ての家が、古臭かった。どの家も、昔話で見るようなかやぶき屋根であり、辺りには田んぼと畑ばかりがあった。そしてどこを見ても、人の姿は見えない。まるでタイムスリップして、過去の世界に来てしまったようであった。

 前方に、これまでよりも大きな駅が見えていた。列車は速度を落としながら駅のホームへと入っていき、そして停まった。全てのドアが開いて、外から風と暑い空気が吹き込んできた。

『化野、化野でございます。お忘れ物のございませんよう、お降りください。なおこの列車は、これより車庫へと入ります。ご乗車できませんので、お気を付けください』

 車内アナウンスが流れ、小春たちはドアの外のホームを見た。

「……どうする?」

 冬華の問いに、秋奈と夏代が顔を見合わせる。

「どうするって……」

「お、降りるしか、ないんじゃない!?」

 秋奈はそう云うと、座席から立ち上がってドアからホームへと飛び降りた。

 そしてそれに続くように、冬華と夏代が続き、最後に小春が列車を降りていった。

「ここが……」

 小春はそっと、駅名表示板を見た。

「……化野?」

 駅名表示板には、確かに『化野』と書かれていた。しかし、よく見る駅名表示板とは違っていた。左から右に向かって書かれているはずの駅名が、何故か右から左に向かって書かれている。このような書き方は、まず見たことが無い。

 そのとき、背後でドアが閉まる音がした。小春が振り返ると、先ほどまで乗っていた列車のドアが閉まった。ドアが閉まった列車はすぐに動き出し、煙突から黒煙を吐き出して、ホームを離れていく。そのまま消えるように、近くの山すそに作られたトンネルへと入っていった。

「……これから、どうする?」

 秋奈の言葉に、夏代が答えた。

「とにかく、ダムに行く道を探そう。この村にも、誰かいるはずだ。地元の人に訊けば、ダムへの行き方くらいは分かるかもしれない」

「そうだね。とりあえずダムカレーは後にして、まずは誰か探そうよ」

 ダムカレーのことばかり考えていた冬華も、さすがに今はダムカレーどころではないようだ。

「そうですね。皆さん、行きましょう!」

 小春の言葉に、三人が頷いた。

 小春を先頭にして、四人は駅を出た。

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