第16話 本気を出せるクエスト
鉱山都市クルタリはいつもと同じように栄えていた。
この町は山中に作られた大きな空洞の中にある。
山の外の町と繋がるための大通りが東西に山脈を貫き、その道を中心にして円状に町は作られている。
そして町からは無数に坑道が山中に延びていて、その先にはダンジョンがある。
ダンジョンに出現する魔物はほぼ全てが鉱石の体を持つ魔物で、これを倒して得られる鉱石の販売加工でクルタリは潤っていた。
また鉱石を得られるので冒険者にとっても実入りが良く、多くの冒険者がクルタリに集まっていた。
そんな冒険者のうちの一組がダンジョンを攻略して出てきた。
「いやーいっぱい手に入ったな」
二人組の冒険者は鉱石をたくさん入れた袋を肩に担いで上機嫌に町への帰路を歩く。
そんな時だった。
「こんな道あったか?」
一人が立ち止まった。
彼の視線の先にはとても細い道があった。
いや、道というよりは亀裂といった方がいいような細い細い隙間だった。
奥から何か音が聞こえた気がして男は覗き込んだ。
「なっ!!?」
男は驚愕した。
奥にはダンジョンの入口があった。
さらに次の瞬間、何かが飛び出してきた。
それは覗いていた男に噛みついた。
「ウワアアアアアッッ!!!」
男は悲鳴を上げながら食われた。
もう一人の男は悲鳴を上げて逃げた。
まもなくして大量の魔物が町への道に溢れた。
◇◇◇◇
ゼノたちはいくつかの町でいくつかのクエストを受けた。
そうして毎日訓練しながら、自分たちの名を売っていたある日のこと。
ギルドに向かうとゼノが気付いた。
「ムスキルも本気出せるクエストがあるよ」
「ちょうどいいですね。縄にはうんざりしていたところです」
とムスキル。
ゼノが見つけたのは掲示板に貼ってある、緊急と書かれた依頼書だった。
内容はクルタリという町でダンジョンブレイクが起きたので早急に魔物を退治してほしいという依頼だ。
ダンジョンブレイクというのは、一定期間ダンジョンのボスを倒せずにいると、ダンジョンから魔物が出てきてしまう現象のことだ。
町まで魔物が出てくるので、放っておくと被害が甚大になる。
つまり一刻の猶予もないということだ。
「今すぐ向かおう!」
「はい!」
「了解しました」
三人はすぐにクエストを受けた。
そして馬車を借りてゼノとアウレは乗り込んだ。
ムスキルは本来馬がいるはずの位置に着いた。
「あの、これは?」
アウレは困惑する。
「これが一番早いからね。アウレも俺の格好を真似て」
ゼノは馬車の角に手足で踏ん張りながら言う。
「は、はい……」
戸惑いながらも言う通りにするアウレ。
「では行きますね」
言うとムスキルは全力で大地を蹴った。
馬車は鷲のように速く進んだ。
「ギャアアアアアアアア!!!」
アウレは悲鳴を上げた。
大地の凹凸に当たる度に馬車は上下左右に激しく跳ね、中にいるアウレはその度に体を打った。
彼女の悲鳴は、馬車がスピードに乗って宙に浮くまで続いた。
けれどその甲斐あって、徒歩で3日かかるところを1時間で着いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます