第99話、学園祭

 ついに、学園祭が始まった。

 俺は教室で、休憩所のレイアウトをチェック。

 向かい合わせにしたテーブルにクロスを引き、ゴミが出てもいいようにゴミ箱を用意しただけの教室だ。クラスメイトが交代で見回りするだけなので、クラスの仲間はみんな学園祭を楽しんでいた。

 俺は、アキューレと一緒に学園内を見て回る。


「リュウキ、いっぱい食べようね。ふふ、デート嬉しい」

「デートね。まぁいいか」


 アキューレは、俺の腕を取ってニコニコ笑っている。

 まず最初に向かったのは、レイたちのいるAクラスの商店だ。

 

「お、やってるやってる」

「わぁ……すごい」


 教室内には大型のガラスケースが陳列してあり、生徒が持ち寄ったアイテムや武器防具などが展示されている。値段は『交渉次第』となっていた。

 さて、レイとアピアは……お、いた。


「金貨三十枚でどうだ?」

「話にならないわね。出直してらっしゃい」

「くっ……な、なら四十枚」

「八十枚」

「な、ぼ、ぼったくりだろ!!」

「悪いわね。このシルヴァリザードの鱗なら、金貨百枚出すってお客もいるの。学園祭価格ってことで金貨八十枚にしてるのよ? これ以上まけられないわ」

「う、むむむ……」


 レイは、商人ぽいおじさん相手に一歩も引いていない。

 後ろでアピアが苦笑いしていた。ああ、アピアが持って来た商品の交渉にレイが出てるのか。アピア、こういうの苦手そうだもんな。

 邪魔しちゃ悪いので、俺とアキューレは店内を見て回る。


「リュウキくん、アキューレさん」

「お、アピア。レイはいいのか?」

「はい。まだまだかかりそうなので……」


 レイを見ると、別の商人相手に啖呵を切っていた。

 よく見ると、ルイさんも加わってるし……あの兄妹は放っておくか。

 

「私、まだ教室を離れられないので。ところで、レノくんたちは?」

「あいつら、上級生の出し物見に行ったよ。露店で喰いまくるんだとさ」

「ふふ、レノくんらしいです。サリオくん、大変ですね」

「あっちはサリオに任せた」

「リュウキ、わたしもおなかへった」

「ああ、わかった。じゃあアピア、また後で」

「はい。あ、アキューレさん。あんまり一人で楽しんじゃダメですからね?」

「ん。善処する」

「……?」


 俺とアキューレは、隣の教室に向かった。

 隣は喫茶店をやってるようだ。小腹も空いたし、寄っていくか。


 ◇◇◇◇◇◇


 アキューレと、学園祭を満喫してお昼になった。

 中庭のベンチで食休みをしていた俺は、立ち上がる。


「……行くの?」

「ああ、時間が近い」


 腕を伸ばし、首をコキコキ鳴らし、背伸びをする。

 そう……俺はこれから、学園長ヴァルカンと戦う。

 俺と学園長ヴァルカンの模擬戦は、学園祭初日の午後一番で行われるのだ。

 午前中は、アキューレと目いっぱい学園祭を楽しんだ。おかげで、リラックスできた。


「アキューレ。レイたちと一緒に見に来てくれ」

「うん。リュウキ、がんばって」

「ああ、任せて」


 アキューレと別れ、俺は闘技場へ向かう。

 闘技場に到着すると、待ち構えていたかのように、上級生が控室に案内してくれた。

 広い控室で、俺は動きやすい冒険者の服に着替えておく。

 すると、ドアをノックしてリンドブルムが入ってきた。


「リュウキ」

「リンドブルム。来たのか」

「うん。ヴァルカンとリュウキ、わたし……どっちも応援できない。どっちも勝ってほしい」

「あはは、ありがとな」

「……リュウキ、がんばってね」

「ああ、任せておけ」


 きっと、ヴァルカン学園長にも同じように挨拶したんだろうな。

 そして、数十分後……係員が、控室へ入ってきた。


「リュウキ選手。これより、スペシャルバトルが始まります。準備はよろしいですか?」

「ああ、大丈夫」

「では、ご案内します」


 俺は拳をパシッと打ち付け、戦いへ向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る