第94話、学園祭の打ち合わせ

「まず、学園祭の実行委員を決めたいと思います。希望する方は手を上げてください」


 午後になり、ホスホル先生が教壇の前で眠そうな声を出す。

 学園祭。つまり、このクロスガルド王立学園のイベントの一つだ。

 チーム『アークライト』の解散、学園生徒の『ギガントマキア』関与による不祥事で開催を見送るなんて話もあったようだが、反対意見が多かったため開催するようだ。

 すると、アキューレが振り向く。


「がくえんさい、ってなに?」

「えーと……なんて言うか、学園が開催するお祭りみたいなモンか」

「お祭り……楽しそう! はい! わたしとリュウキ、実行委員やる!」

「え」

「はい。ではアキューレさん、リュウキくんが実行委員ですね。ではお二人は前へ」

「え、ちょ」

「リュウキ、行こ」

「…………」


 強制的に実行委員になってしまった……もう拒否できないじゃん。

 サリオは「あはは」と苦笑し、レノは「ヒューヒュー!」と楽しそうに笑う。レノ……あとで覚えておけよ。

 教壇の前に立つと、アキューレは言う。


「ね、何言えばいいの?」

「…………」


 ああ……もう、この時点で俺が苦労するの確定じゃん。


 ◇◇◇◇◇


 とりあえず自己紹介。そして、教壇にあった資料を読んでみる。

 学園祭。

 各クラスによる出し物。まず、教室内に限定した出し物と、闘技場内でやるクラス代表による出し物の二種類あるのか。教室内の出し物はともかく、闘技場の出し物って……めちゃくちゃ注目されそうだな。

 とりあえず、まずは教室内の出し物かな。


「えー、教室内の出し物と、闘技場内でやる出し物の二種類を決める。まずは教室内の出し物だけど、何かやりたい出し物あるか?」


 すると、レノが挙手。


「はいはい!! 『休憩所』なんてどうだ?」

「……休憩所?」

「ああ。学園祭当日は大勢のお客さん来るんだろ? 歩き疲れて休むスペースもたくさん必要になるはずだ。そんなとき、この教室が休憩所だったらどうよ? 店で買ったメシ広げて食うのもよし、他のクラスの出し物で遊んで、その内容を語るもよし、ただ疲れたからのんびりするのもよし……うんうん、休憩所があれば嬉しいことだらけだぜ」

「…………それ、出し物か?」

「ああ。休憩所っつー出し物だぜ」


 こいつ、サボりたいだけじゃないだろうな……でも、意外と的を射ているからタチ悪い。

 他に意見を聞くと、出てこない。

 レノの意見、筋が通っているせいかみんな納得してる。

 アキューレも、黒板に『休憩所』って書いてるし。ホスホル先生を見ると……なんと、寝ていた。

 え、本当にいいのか?


「え、えー……じゃあ、Dクラスの出し物は『休憩所』で」

「うっしゃぁ!!」


 マジか。Dクラス休憩所って、他のクラスに馬鹿にされそうだぞ。

 まぁ……決まったもんは仕方ない。

 

「じゃあ次。次は、闘技場内でやる出し物だ。これは代表者四名による出し物だって」

「じゃあ、チーム《エンシェント》でいいんじゃね?」


 と、クラスの誰かが言った。

 チーム《エンシェント》って……お、俺らかよ?


「そうよね、新入生最強チームが四人もいるし」

「ほかに適任いないよな」

「そうよね」「うんうん、決まりだな」

「頼むぞ、チーム《エンシェント》!!」

「お、おい待てって。まずは」

「おいリュウキ、ご指名だぜ!! オレたちの出番だってよ!!」

「…………」


 レノがすでにやる気だった。

 こいつ、休憩所とか言ったくせに、なんで闘技場の出し物はやる気になってるんだよ。

 一応、確認してみた。


「あー……じゃあ、闘技場内の出し物はチーム《エンシェント》でいいのか? 賛成なら拍手」


 パチパチパチパチ───……と、教室内に拍手の雨が降った。

 マジかよ……これ。また決まりじゃん。


「よっしゃ!! へへ、チーム《エンシェント》で出し物とか面白そうだな」

「……ぼくは微妙だけど」

「リュウキ、がんばろうね」

「……おお」


 こうして、Dクラスの出し物は『休憩所』で、闘技場内でやる出し物はチーム《エンシェント》に決まった……全く、マジでどうなってんだよ。

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