第2話 剣の言葉



彼はその方向に鋭い眼を向け

彼の国の独特の格闘技の構えをして

大きな声で叫ぶ


「私がネルーダ王国の親衛隊隊長ロルカと知っての無礼か、姿を現し名を名乗れ」


「私なら目の前に居る」


彼は眼前の大木に眼をやるが、

その周りには何者も見当たらない。

そして更に声は続く。


「私なら目の前に居る」


ロルカは、構えを崩さず声のする方へ耳を傾け、ゆっくりと、そちらへと黒い瞳だけを動かす。


「動くな、動けば我が拳が命を奪うであろう!」


「私は動いてはいない、動いているのはお前の方だ」


と声は語る。


ロルカは、その方向を耳で悟り、素早く眼を向けた。

が、そこには一本の剣があるだけであった。


「そうだ、ここだ」


と声は言う。


意表を突かれたように、ロルカの瞳が曇るが、すぐに鋭い目に変わり、


「おのれ、妖刀の類か!」


と叫んだかと思うと受け身の構えが静かに攻撃体制の構えに変わっていく。

急には構えを変えない、その瞬間に隙が出ることを知っている。


「妖刀と思うなら思えば良い。が、私は動かないと言った。構えを解いてこちらに来い」


ロルカはゆっくりと前進するが、構えは攻撃から受け身に変わっただけで解いてはいない。


「私の名はパステルナークだ、周りには誰もいない。騎士を待っていた」

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