第13話

 


 リオネルに遅れてわたしは大広間に戻った。 中央階段にはお父様と二人の姿。 アインツマン様はその場には行かず、周りの祝福に応えている。


 ……そうだ、コリーン様が来てない、息子の婚約発表なのに。


「わたしのせい……か」


 常識のある人達だから、わたしの家族と違って。 まだ自分がまともに成長出来たのは、ダラビット家の人達とロベルトのおかげかな。


「悪魔……」


 そう、それはしっかりと受け止めなくてはいけない。 大き過ぎる加護の力は、使い方を間違えば悪魔の力になりうるんだ。



「それでは例の物をここへ!」


「――っ!」



 ぼ、ぼうっとしてる場合じゃない、宴は進んでいるんだから!


「おお、これは……」


 わたしが提案した余興、妹へのプレゼントを使用人達が運んできた。


 台座に乗った大きな石。 神殿の柱にも使われそうな程立派な物だ。 これを街の石材屋で買って、この日の為に用意した。


「まさかこれを……」


 ざわめく来客達にステラリアは両手を広げ、


「お集まりいただいた皆様の為、祝福のお返しにお見せ致します、『加護の力』をっ!」


 まるで自分が神の代行者のように言い放つ。


「見ててね、リオネルっ」


 あざとく微笑み首を傾げる妹に、リオネルは「ああ」と応えた。


 一段、二段と階段を下りるステラリア。 お父様はその姿ではなく、これから錬金される石をもう金のように、浅ましい目付きで凝視している。


「こんなに大きな……」


 お母様に至っては、自分が声を漏らしている事さえ気づいていない。



 目を覚ましてあげる、本当の加護持ちが。



 ―――神はわたし、ダリア・ノームホルンに加護を授けた、錬金の加護を。



「それでは皆様、よくご覧くださいっ」



 でもそれは、双子という神すら気づかなかった偶然により、一つの力に、二つの出口を作ってしまった。


 それを今夜……



 ――――塞いでやるッ!



 わたしは初めて、うるさく戸を叩く借金取りを追い払った。


 自分で払え。


 妹に、ステラリアから取ってこいと――――


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