妹が約束を破ったので、もう借金の肩代わりはやめます

なかの豹吏

第1話

 


「こっ、これは……!」


「へっへーん、すごいでしょ? お父様っ」


 自慢げに仰け反ってみせるのは、わたしの双子の妹ステラリア。


「まさか、お前……」


「そうっ! わたし『加護』を手に入れたのっ!」


 目の前の黄金を見て、お父様は怖いくらい目を大きくしていた。 それはそうだろう、だってそれは、元々ただの『石』だったんだから。


「す……――――すごいぞステラリアッ!!」


「えへへ、姉さんもできるよっ!」


「――なんだと!? や、やって見せてくれダリアッ!!」


「う、うん」


 お父様の迫力に気圧されながら、わたしは石を一つ机に置き、それに両手をかざした。


「おお……おおおおッ! 素晴らしいッ! これでノームホルン家は安泰だッ! あーっはっはっは!」


 わたしが作り出した金を手に取って、お父様は高らかに笑う。


 世界に10人と居ない加護を持つ人間、その能力は一つとして同じ物が無いらしい。 そして、わたし達姉妹が授かったのは『錬金の加護』、この時12歳だった。


「これで巻き返せる……。 見ていろよダラビット家、いや―――アインツマンよッ!」


 わたしが作り出した金は、ステラリアの物より光り輝いていた。


 でも、わたしが錬金の加護を使ったのは、神様が授けてくれた今日、この日だけだった―――。



 その夜、並んだ二つのベッドに入ったわたし達は、運命の日に興奮して中々寝付けなかった。


「ねえ、姉さんリオネルのこと好きでしょ?」


「えっ」


 リオネルは、昔からわたし達がこっそり会って遊んでいる幼なじみだ。 なぜこっそりなのかは、お父様が言っていたダラビット家の子供だから。


「わたしも好きだけど……いいよ、姉さんに譲ってあげる」


「ほっ、ホントに? いいの?」


「ほらっ、好きなんだ!」


「う……」


 よくわからないけど、お父様はリオネルのお父さんが嫌いみたい。 同じ公爵家だから、競走でもしてるのかな?


「いいよ。 だってわたし達は加護を持ったんだから、わたしはもっと上の王子様と結婚するっ!」


「そ、そっか」


 嬉しかった。 わたしは王子様なんか興味が無い。 ずっと好きだった、リオネルと結ばれたいから……。



 それから4年後、妹はあっさりとその約束を破った――――

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